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2012/04/21

5つのケーブルカー乗り比べ 【その1】

「ケーブルカーまで鉄道に含むんですか?」と、いろいろな人から聞かれる。
山の頂上に置かれた巻上機で車両を引っ張って動かすケーブルカーは、理屈的にはロープウェイやスキー場のゴンドラ・リフトに近いが、地べたに敷かれたレールに沿って走る以上はれっきとした鉄道である。鉄道事業法上も「鋼索鉄道」と分類されている。

したがって、たとえそのケーブルカーの敷設目的が遊園地来園者や寺社仏閣参拝者の輸送であっても、私は乗りに行かねばならない

日本にはこの「鋼索鉄道」が全部で23路線あるが、その半数以上の12路線が近畿地方に点在する。意外な気がするが、遠い昔に仏教を核とした政治の中心地であったことと、12路線のうち10路線までが信仰登山を目的に建設されたことを考え合わせると、なんとなく合点がいく。

過去に私が乗っているのは、近鉄生駒ケーブルの2路線のみ。今回は残る10路線のうち、半分の5路線に足を記した。

4月14日、和歌山電鐵の乗り歩きを終えて南海電車で天下茶屋を経由し、橋本で極楽橋行きの電車に乗り継ぐ。ここまで大阪近郊の住宅街の中を抜けてきた南海高野線はガラリとムードを変え、一気に山岳路線に変わる。列車の速度は落ち、電車といえども急勾配・急カーブの道のりを、喘ぐようにして走る。

Dscn0059終点の極楽橋駅で、この旅最初のケーブルカーに乗り換え。高野山真言宗の総本山である高野山へ、50人ほどの相客とともに登る。全長864mにして高低差は329m。最大勾配は563‰に達する。列車から見上げると、スキーのジャンプ台の下に立っているような感覚になる。



Dscn0061終点の高野山駅は、いかにも霊場への玄関口といった風情の、風格ある建物で、国の登録有形文化財に指定されている。駅の周辺には土産物屋が1軒、後はバスの停留所が3本ほど並んでいる。
普通の客はここからバスで奥の院へと向かい、は今来たケーブルカーで再びふもとの極楽橋へと引き返す

Dscn0074大阪経由で阪急六甲駅へ。神戸市営バスで10分ほどの摩耶ケーブル駅から、摩耶山へ登る。
高野山ケーブルとは異なり、純然たる観光輸送用のケーブルカーだが、車両は小ぶりで乗客は少なめ。延長964m、高低差319mと、こちらもなかなかの急勾配だが、なにぶん夜間のため、その迫力は伝わってこない。5分ほどで終点の虹駅に到着。普通の人々はここからロープウェイでさらに上の「星の駅」へ向かい、鉄道にしか興味のない人は折り返しのケーブルカーで下界へ降りる。

しかし私はロープウェイで星の駅へ向かう。星の駅のすぐ横には掬星台展望広場があり、ここからの眺めは、函館(函館山)・長崎(稲佐山)と並ぶ「日本三大夜景」のひとつに数えられている。私がいかに変人であっても、日本のベスト3に数えられる夜景には少なからず興味がある。

Dscn0080果たして、掬星台からの夜景は圧巻だった。夜景見物に街の灯り、海は欠かすべからざる風景であるが、その光景の広がりという点では、遥か大阪・和歌山の灯りまで一望できる神戸はピカイチである。私は声も出せずにしばらく展望台に立ち尽くした。

ところで、夜景見物といえばもうひとつ付きものの風景がある。それはカップルの姿である。私は夜景の美しさを見せつけられた掬星台で、同時に無数の熱い抱擁を見せつけられた。敵は帰りのロープウェイやケーブルカーの中にも出没し、タコの吸盤のようにぴったりと寄り添い、ひとり寂しい私の姿などまったく眼中にない様子であった。

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コメント

十数年前に、高野山ケーブル乗りましたが、ホント急でしたね。南海電鉄の橋本-極楽橋感も山岳鉄道の趣きで好きです!しかし、空海の時代は行くのが大変だったんでしょうね

投稿: キハ58 | 2012/04/21 08:58

キハ58さん、ありがとうございます。
高野下駅あたりのひなびた風情も魅力的でした。
昔の人はどうやって高野山まで辿り着いたのかと思いますが、それ以前にどうしてあのような山上にお寺ができたのか、それをひも解いてみるのも楽しそうです。

投稿: いかさま | 2012/04/21 21:25

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