« 遅くなりましたが、帰ってまいりました。 | トップページ | 5つのケーブルカー乗り比べ 【その1】 »

2012/04/19

和歌山のふたつのローカル私鉄 光と影

4月14日の午前中、和歌山県にあるふたつのローカル鉄道の雰囲気を味わった。

Dscn0011そのうちのひとつ、紀州鉄道は、ずいぶん壮大な名前に反して、御坊と西御坊の間、わずか2.7kmを結ぶ鉄道である。「鉄道」と名は付くが、本業は不動産業で、鉄道は片手間のようである。

御坊駅前のホテルから歩くこと30分で、終点の西御坊駅に到着。ここから始発の列車に乗る。一応駅舎らしきものはあるが、どこにも駅を示す看板がなく、列車が停まっていなければ物置かほこらのようである
「レールバス」と呼ばれる小型のたった1両の列車に、早朝のせいか乗客はわずかに3人。座席モケットはくたびれている。手書きの路線案内図もレトロムード満点だが、昨今流行りの演出ではなく、素でレトロなのである。
御坊まではわずか4駅、8分。最初の市役所前駅でひとり乗車してきたほかに、客は増えない。乗客がいなければドアも開けない。そもそも歩いても30分の距離に、果たして本当に鉄道が必要なのかすら疑わしい。脱力感というか、無力感の漂う路線である。

御坊からJR紀勢本線の、運転士も車掌も女性という普通列車で和歌山へ。もうひとつのローカル私鉄、和歌山電鐵は、和歌山と貴志を結ぶ14.3kmの路線。もともとは大手の南海電気鉄道の路線で、南海が路線廃止を表明したことから、岡山県の交通事業者、両備グループが経営に参画し、新たなスタートを切った路線である。

Dscn0027この鉄道は、終点の貴志駅に、猫の駅長(「たま駅長」)を就任させたことで話題になった。
駅舎に同居している商店の飼い猫であるところの「たま」の出勤時刻は朝9時ということで、残念ながら私はお会いすることはできなかったが、「たま」を前面に押し出したPRが功を奏したのか、和歌山電鐵の利用者数は微増傾向にあるらしい。終点の貴志駅も、たまにちなんだ新駅舎に建て替えられている。

Dscn0032「たま」は電車にも進出しており、たまをモチーフにした外装に改められた「たま電車」は、乗客の人気の的。木をふんだんに使ったデザインは、九州新幹線など九州の列車のデザインを手がけた水戸岡鋭治氏によるもの。車齢40年を超える電車が、見事に温かみと遊び心に溢れた空間に昇華している。ふだんから通勤で利用している乗客がどう感じているかはわからないが、歓声を上げながら乗り込んできた小学生の集団と、これまた「カワイイ~!」と声を上げながら乗り込んできた引率の女性たちの笑顔が印象的だった。

Dscn0019和歌山電鐵には、他にも、沿線の名産であるいちごにちなんだ「いちご電車」(右)、子供部屋のようにおもちゃが並ぶ「おもちゃ電車」(左)と、個性豊かな電車が、私たちの目を楽しませる。鉄道に単なる移動手段以上の付加価値を持たせ、赤字に苦しむ地域の足を確保しようという試みがうまくいけば、全国に点在するローカル鉄道の生き残りに向けたひとつの方向性が見えてくるかもしれない。

それにしても、かたや県庁所在地の和歌山を起点とする路線、かたや人口2万5千人あまりの小さな町の路線と違いがあるとはいえ、鉄道のあり方にここまで差があるとは驚きである。










|

« 遅くなりましたが、帰ってまいりました。 | トップページ | 5つのケーブルカー乗り比べ 【その1】 »

鉄道の旅人」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 和歌山のふたつのローカル私鉄 光と影:

« 遅くなりましたが、帰ってまいりました。 | トップページ | 5つのケーブルカー乗り比べ 【その1】 »