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2012/05/07

本棚:「幻夜」東野圭吾

Img_0088珍しくこの手の小説を読んでみた。
以下、ネタばれも一部あるので、知りたくない方はタブを閉じること

東野圭吾の小説を読むのは4冊目である。過去に読んだのは、「容疑者Xの献身」「手紙」そして「白夜行」。いずれもドラマ、あるいは映画から小説へと入っていったパターンである。
今回読んだ「幻夜」は、たまたま図書館を眺めているときに目について手に取った。ちょうどタイ出張前で、なるべく厚めの本を探していた、という理由であって、特に他意はない。したがってなんらの予備知識を持たず、成田からバンコクへの機内で読み始めた。

読み進むに従って、ストーリーや登場人物の設定に、既視感を感じた。自らがかかわった犯罪を背景に、暗く淀んだ世界に入り込んでいく男、それを踏み台にして昇華していく女。心は常に近くにあるとうそぶきながら、第三者的視点にはだんだん離れていくふたりの距離感。

「白夜行」の世界に妙に似ているのである。

出張に同行した読書家のN君にその疑問をぶつけてみると、
「ファンの間ではこれは『白夜行』の続編であるといわれています。」
との返答。途中からそういう視点で読み進めてみると、確かにそういうイメージになる。

私は帰国してから、再度「白夜行」を斜め読みしてみた。主人公の女性の底なしの上昇欲は、「白夜行」=「幻夜」を思わせるに十分だ。
ただ、主人公が同一人物であると確定するためには、解決すべき矛盾点もある。登場人物の名前や年齢の問題、発言内容の相違、時系列のブレ、周囲を取り巻く環境への対処。小説の世界なのだから、いくらでも辻褄を合わせることは可能だが、無理に合わせようとするとリアリティが薄らいでいく危険性もある。現実世界を描きながら非現実的な世界を同居させる手法はあまり好みではない。ちょうど境のあたりをゆらゆらするのが私の好きな小説のタイプである。

うまい作家というのは、結論を読者に委ね、要はどちらともとれるようなストーリーを展開させていく。私は考えた結果、東野圭吾は自らの読者に対して、「幻夜」=「白夜行」の続編、あるいは「幻夜」=「白夜行」のスピンオフ、と、どちらにも解釈できるようにこの作品をあえて書いたのだと結論付けた。続編か、別物か、ファンの間での議論が渦巻く中、おそらく東野圭吾のことだから、われわれの思考のさらに上を行くような「続編」を、遅からず繰り出してくるような気がしている。

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