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2013/05/30

いかさまトラブラー【5】忘れ物・失くし物編(3)

もうあとふたつほど忘れ物の話を。

マフラーを危うく失くしかけた1995年の日本一周旅行では、もうひとつ忘れ物についての苦い記憶がある。

Aidu_2出発からわずか2日目のことである。
前日、小樽港から新日本海フェリー「フェリーしらかば」に乗り、早朝5時に新潟港に到着。そこから磐越西線の普通列車を津川で乗り継ぎ、喜多方で下車した。

喜多方と言えばラーメンである。朝10時過ぎという早い時間だが、せっかくだから食べておきたい。私は、立ち寄った郵便局で、駅から遠くなく、それなりにおいしいラーメン屋はないか、と尋ねてみた。

局員が教えてくれた、駅から徒歩2分ほどの店で喜多方ラーメンを堪能し、食べ終わって時計を見ると11時少し前。喜多方から乗る予定の郡山行き快速「ばんだい8号」の発車は11時03分。私は慌てて立ち上がり、お金を払って店を飛び出した。
せっかく食べたばかりのラーメンをもどしそうな気分になりながら私は駅への道を全力疾走した。

「ばんだい8号」に飛び乗って一息つき、列車内の写真でも撮っておこうかとバッグを漁ったところで、私はカメラを先刻のラーメン屋に忘れてきたことに気がついた。

カメラ自体は3年ほど前に買った安物のコンパクトカメラであるが、すでにこの2日間で何枚かの写真を収めている。そのカメラがなくなるのは痛い。おまけにこの先28日間、1枚も写真を撮れないという事態が生じる。今ならばスマホや携帯電話のカメラで事足りるが、世はデジカメどころかフィルムカメラ時代である。カメラの要らない「写ルンです」がすでにヒット商品となっていたが、単品のフィルムに比べれば価格も高いし、画質もいまひとつの印象があった。

私は喜多方までカメラを取りに戻ることに決めた。問題は列車の時刻である。
「ばんだい8号」は、喜多方~会津若松間唯一の停車駅、塩川を過ぎており、予定どおり11時19分着の会津若松までいくほかはない。予定ではこの先、会津若松12時47分発の只見線列車で新潟県の小出へ抜け、長岡から急行「きたぐに」に乗車する予定になっている。只見線の列車本数は非常に少なく、この列車を逃すと、小出方面へ直通できる列車は16時20分までない。この列車でも「きたぐに」には乗り継げるが、できれば明るいうちに只見線には乗っておきたい。

時刻表を繰ると、喜多方11時56分発の列車に乗れれば、只見線の発車までに会津若松へ戻ってくることはできる。けれども会津若松から喜多方へ向かう列車がない

私は、会津若松駅前の公衆電話からラーメン屋に電話をし、カメラが無事保護されていることを確認すると、駅前に停まっているタクシーに乗り込んだ。運転手に事情を話すと、
「ふうん、けっこう料金かかるけどいいのかい? それに56分に間に合う保証もない。もし駄目だったら、帰りもタクシーしかないね。」
と言ってメーターを倒した。喜多方までは約20km、与えられた時間は約25分である。万一私が喜多方からの列車に乗り損ねると、私は帰路もタクシーを使わざるを得ない。彼はそれを狙っているのかもしれない。そう思うと私は急に不安な気持ちになり、財布の中身をしっかりと確かめた。

しかし彼は善意の人だった。道が空いていたせいもあり、片側1車線の道路を、乗っているこちらが不安になるほど飛ばす。タクシーは11時52分、件のラーメン屋の前に無事横付けされた。運賃は4,960円。これははっきり覚えている。
ラーメン屋でカメラを引き取り、つい30分ほど前に走った駅前通を再び全力疾走した私は、ドアが閉まる寸前の普通列車に転がり込んだ。

忘れ物で予定を狂わせる失態をたった2日目で犯し、当時の私にとっては大金だった5千円近くの金を浪費した。浮かれているとか気が緩んでいると言われても仕方がない状況である。虚しさと、真冬にもかかわらず全身から汗を噴出させながら、私は深く反省し、この先、同じ轍を踏まないことを固く誓ったのである。

にもかかわらず私はこのたった20日後、今度はカメラよりもっと大切なものを忘れることになるのである。この忘れ物癖、何とかならないものかと、私は都度反省しながらも、改善されることのないまま、今日に至っている。

このシリーズ、あと1回だけ、続く。

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コメント

JR東日本のHP見ると、只見線の復旧が難しそうな資料が添付されていました。残念ですねー!

投稿: キハ58 | 2013/05/30 23:36

ある意味天才的な忘れ物王でごじゃるぅ
「時間」も忘れてないかと心配になるよん
もっとも、近頃「何か忘れてるなぁ」が多い母ちゃんなので、誰のことも非難できましぇん~(´∀`*)

投稿: と~まの夢 | 2013/05/31 19:25

>キハ58さん
いつもありがとうございます。
只見線の会津川口-只見間は、もう1年以上も災害不通になっていますね。復旧には85億円の巨費が必要だとか。公共交通機関としての使命も必要でしょうが、投じた費用に対する需要を考えると、復旧への道のりは遠そうですね。

投稿: いかさま | 2013/06/02 00:40

>と~まの夢さん
いつもありがとうございます。
「天才的」とは過分な褒め言葉として受け取らせていただきます(笑)。
時間の感覚だけはそれなりに持ち合わせているつもりですが、仮に「時間」を忘れたら歳を取らずに済むというのなら、それもまた有りかとも思います。

「歳をとると忘れっぽくなる」とよく言われますが、この調子だとあと10年後には何も覚えてないのではないかと心配です(笑)

投稿: いかさま | 2013/06/02 00:44

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