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2013/10/03

山崎豊子氏を悼む

作家の山崎豊子氏が、9月29日亡くなった。

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山崎氏の本については、以前に当ブログでも取り上げているが、私が好んで読む作家のひとりである。
 ⇒本棚:「運命の人」山崎豊子

私は本来、近現代の歴史物を中心としたノンフィクション小説が大好物である。山崎氏の描く小説の多くは「フィクションである」と断られてはいるが、その実態は「事実を取材し、再構築したフィクション」だと言える。
先に挙げた「運命の人」や、山陽特殊製鋼倒産事件を題材にした「華麗なる一族」、小説の主要な柱のひとつに日航ジャンボ機墜落事故を据えた「沈まぬ太陽」などがその典型である。そのほかの作品も、モデルとなる人物や企業が容易に特定できるようなものが多い。

こうした小説の書き方は、よほど綿密な取材を重ねていないとできない。どうかするとノンフィクションよりも難しいかもしれない。「フィクションである」と銘打っていても、モデルとなった人物や企業の描き方を一歩間違えると大変なことになる。「運命の人」の時にも、主人公の人物像の描き方において、モデルであるN氏との間に認識のずれがあったと聞いている。

だから、というわけでもないだろうが、モデルの立場に忠実であろうとする故、思想的な公平性を欠く場面もなくはない。「沈まぬ太陽」では、のちに日航破綻の遠因のひとつとなった組合問題について、もっぱら主人公の属する従来の組合サイドからの視点で描いたことが物議を醸してもいる。

ただ、こうした部分をさておいても、事件、事故、あるいは歴史や業界の闇の部分を知るための入門書としては役に立ったと思うし、その後、あまたのノンフィクション本で、事実にアプローチしていくための礎になった。
また、私にとっては、何より小説として、すこぶる面白かった。このことは、「仮装集団」を除くすべての長編小説がドラマもしくは映画化されているという事実が証明している。

週刊新潮で8月から連載中の「約束の海」は、すでに20回分の原稿が書きあげられているという。88歳にしてこの旺盛な執筆意欲が衰えていなかったというのも驚きである。
結果的にこれが遺作となり、しかも未完に終わることになる。完成形を目にすることができないのは何とも残念である。
なんだったら私がその跡を継いで完成させましょうか、などと言ってみたいものだが、鼻で笑って誰も相手にしてくれないか、熱心な読者によって当ブログが炎上させられるかのいずれかにしかならなさそうなので、あくまで冗談ということにしておく。

ご冥福をお祈りします。楽しい本をありがとうございました。


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本の旅人」カテゴリの記事

コメント

私は「大地の子」が、印象に残っています。
原作は、読んでいませんがTVで観ました。
日中関係がうまくいってないこの時期に
あらためて取り上げてほしいものです。

投稿: 姉さん | 2013/10/04 05:51

(^^)おはようございます
山崎豊子さんの小説はよく読みました
人気作家になられても、浮かれること無くしっかりとした仕事をされていましたね
最近は、いろんな系統の本が溢れていますが、やっぱり、
自分の立位置がブレない骨太の作品を読みたいと思います
最後まで連載をされていたとは、なんとも精神力の強い方だったのですね
お年とは云え、せめて完結まで書いて欲しかったです

合掌

投稿: tutatyan | 2013/10/04 08:30

私は、原作本とドラマ化されたときの微妙な違いを
楽しみながらドラマをみたものです。
女系家族や、華麗なる一族などです。
他の作家本にも言えることですが、原作を超えるほどの
映画、テレビはなかなかお目にかかりませんね。

投稿: ターコイズ | 2013/10/04 08:34

いかさまさんこんばんは。
初コメです。いつもありがとうございます。
山崎豊子さんの小説は実は読んだことがないのです。
もっぱらテレビドラマ、映画で楽しんでいました。
最初は白い巨塔(田宮二郎の)でした。
見応えのある骨太の社会派作品は本当に面白かったです。
時に考えさせられもして学ぶものも多かった…
とても残念です。。

投稿: ミミ | 2013/10/04 19:54

>姉さんさん
いつもありがとうございます。

私は、最初に読んだ山崎氏の小説が「大地の子」でした。
非常に強い印象を受けました。何度も読みたい小説ですが、その一方で、あまりに重く、また悲惨な内容なだけに、その後なかなか開けずにいます。

歴史の解釈に正解はありませんが、いろんな角度から公平な感覚で接していくことによって、解決できる問題はまだまだたくさんあるように思えますね。

投稿: いかさま | 2013/10/05 22:15

>tutatyanさん
いつもありがとうございます。

送り出された作品の数はそれほど多くはありませんでしたが、1作1作に綿密な取材としっかりとした書き込みが感じられた作家さんでしたね。
読み手の側としても、一度読み始めると一気に最後まで行きたくなる作品ばかりでした。
最後の作品、まずは行けるところまで読んでみたいですね。

投稿: いかさま | 2013/10/05 22:21

>ターコイズさん
いつもありがとうございます。
ドラマ化された作品が多く、しかもかなり話題になりましたから、そういった楽しみ方もありですね。
「白い巨塔」などは、原作、田宮版、唐沢版と、それぞれに少しずつ異なった設定や展開があり、どれもそれぞれに楽しみました。
私はどちらかと言うと、ドラマを見た後で原作、というパターンが多かったですが、確かに、原作の方が楽しめたものが多かったように思います。文字の力は偉大ですね。

投稿: いかさま | 2013/10/05 22:24

>ミミさん
ようこそお越しくださいました(笑)。
こちらこそいつもありがとうございます。

田宮版の「白い巨塔」は、私はリアルタイムではないのですが、ドラマの最終回放映の直前に田宮氏が猟銃自殺したのが話題になりましたね。そのことはおぼろげに覚えています。
唐沢版が終わった直後にDVDを借りてきて一気に見ました。唐沢版とはまた違った雰囲気があって、こちらも好きでした。

またどこかでドラマ化されるのでしょうか。それもまた楽しみにしたいと思います。

投稿: いかさま | 2013/10/05 22:28

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