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2014/04/29

いかさまトラブラー【9】珍トラブル編(3)

生まれつき十分な方向感覚が備わっているらしく、私はこれまでに旅先で道に迷う、という経験が非常に少ない。地図を持っていればもちろんだが、何となく自分が歩いている方向を理解し、数十分にわたって徘徊した後も駅へしっかり戻ることができる。これは旅人としては非常にありがたい感覚である。

ところがこんな私でも道に迷ってパニックになることがあった。

5年前、フランスは花の都、私が大切な手帳をなくしたパリである。

パリの市街地図を見ると気付くことだが、パリの市内には「ロータリー」と呼ばれる変形交差点が多い。代表的なものは凱旋門を囲むロータリーだが、公園、あるいは小さな広場を囲んで円状の一方通行道路があり、そこから放射状に何本もの道路が広がっていく。一般的な交差点も、単純な十字路でなく、たくさんの道路が複雑に交わっているものが多い。これらの道路がロータリーあるいは交差点同士を結んでいて、さながら蜘蛛の巣のような複雑な道路模様を呈する。

それぞれの道路は、微妙な角度で外へ向かっているから、歩むべき道を1本間違えると、角度でいえば30度ないし60度、間違った方向へ進んでいくことになる。それが数回繰り返されると、あらぬ場所にたどり着いてしまったりするから具合が悪い。

パリ最後の夜、私はルーヴル美術館に近いホテルを出て、北西へ向かって20分ほど歩き、オペラ座に近い大型百貨店へ土産物の物色に出掛けた。その帰り道、私は迷子になった
景色も行きとはどうも違うような気がするが、何しろ異国の風景のこと、私の脳内では十把ひとからげで、自信を持って間違っていると言える域には達していない。

30分歩いても見覚えのあるホテルが見えてこないことで、私は迷ったという事実をようやく確信した。けれどもそれがどこなのか皆目見当がつかない。人通りも少ない。今ここで後ろから肩を叩かれたら、そのままショック死しそうなほど、私は心細くなってきた。

「M」と書かれたメトロの入口が見えてきた。少しだけほっとする。けれども、日本の地下鉄と違って、入口に駅名を書いた看板が出ていないから、ここが何線の何駅なのかまったくわからない。
とにかく地下に降りると、地元の人らしきおばさんがちょうど改札を出てくるところだった。とりあえず英語で「ここはどこですか?」と話しかけてみるが、何?というような反応である。フランスの人は英語を解さない人が多いと聞いていたが、そういうひとりなのかもしれない。けれども私は必死である。今自分がいる場所を理解しないことには、ホテルに帰ることもできない。

必死の身振りも交えて、自分のいる場所がわからないということを猛烈にアピールする。ほどなくおばさんは、
「Poisonniere.」とボソッと呟くと、逃げるようにして地上への階段を駆け上がっていった。

Photoあらためて地図で確認すると、ポワソニエール駅はメトロ7号線上の駅で、私が先ほどいたオペラ座周辺からは地下鉄でおよそ3駅北東に位置している。すぐ隣はパリ東駅で、ずいぶんと間違った方向へ頑張って歩いてしまったものである。これも、出発点のロータリーで目指すべき道を1本、間違えてしまったことが原因らしい。私はポワソニエール駅からメトロに乗り、パリ東駅・シャトレ駅へと戻った。ちょうど三角形の3辺を時計回りにぐるりと一周する形になった。

恥ずかしい話だが、この後私は、シャトレ駅近くにある大型地下ショッピングモールにあるスターバックスでコーヒーを買った後再び迷子になり、最短で5分ほどで帰れるホテルまで、約20分周辺を徘徊することになった。舌を火傷するほど熱いコーヒーは、へとへとになってホテルの部屋に帰り着く頃にはぬるま湯状態になっていた。



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いかさまトラブラー」カテゴリの記事

コメント

こんばんはっ

土地勘もないし言葉も不自由でも
ショック死することもなく
時間が掛かっても無事ホテルにたどり着いたなんて
やっぱり強運の持ち主ですね、いかさまさんは。

投稿: きなこ団子 | 2014/04/30 00:20

私はフランスでは運転しませんでしたが、
イギリスではレンタカーで移動しました。
だから道路のロータリが良く分かります。
このロータリー、とても便利です。
行く方向の道路には小さな標識が・・・。
見えなかったらロータリの内側を見えるまでぐるぐる走って
いれば良いのですから。ほかの車の迷惑にもならず。
異国の地での迷子は心細いですね。
中には危険地帯もありますから、無事で良かったですね。

投稿: マーチャン | 2014/04/30 05:44

いかさまおはようございます。
いかさまの迷子はすごいですね。パリの地下鉄なんかで迷子になったら死にそうになります。(。>0<。)
釜山で迷子になったときはヘロヘロでした。
ニューヨークでも迷子になりますから、方向感覚ないのかも。(*^m^)

投稿: | 2014/04/30 06:51

すいません(゚ー゚;mitakeyaでした。

投稿: mitakeya | 2014/04/30 06:53

ヨーロッパ
(行ったことはありませんが)
ロータリーって結構便利らしいですね(ベトナムにもありました)一方通行で信号も無し節約になるらしいです。
(時間も、道路も)
でも見知らぬ土地で言葉も、通じないところではオォー怖!

投稿: 姉さん | 2014/04/30 07:50

こんにちは~。
私もパリで道に迷い1時間も地下鉄駅を
探しあるきました。
ツアーの自由時間を終え 駅前からホテルへの
送迎バスが出てると聞いたので。
道ゆく人に 片言の英語で聞いても 頭をかしげられ
駅の売店のおじさんに聞いても通じない。
出稼ぎに来ているみたいで英語でもフランス語でもないし。
ポケットに差した金色のボールペンをちょうだいってジェスチャーされ。もちろん無視無視
迷路に入り込んでしまった感じでしたね。
結局時間がなくなったのでタクシーでホテルへ。
なんと、5分程で着きました
いい?思い出になりますね(^-^;
なんとややこしい道なんだろう

投稿: kasukasu chan | 2014/04/30 10:26

パリでの迷子、なんとなく迷子でもおされ~♬
…なんてのんきなこと言ってるバヤイではありませんね。
英語も通じない…何て心細い状態!
でも、冷静に何とか帰れて本当に良かったです。(*^ー゚)

あ、私ははっきりいって方向音痴ですので、
自宅の近くで迷子になったことも…
でも、暗くなってくる住宅街で迷子になる心細さは
パリに匹敵するかも!?
…しないか。日本語通じるし。(;´д`)


投稿: ひまわりっこ | 2014/04/30 10:58

海外で迷子なんて聞いてるだけで恐ろしい…。
ご無事でなによりでしたね!
私は結構近場でもぼーっとしてて曲がり忘れ、
気づくと知らない道を走ってたりしますが、
いつかは知ってる道に出る…と能天気に走ったりします。
海外では通用しないですよね(^-^;

投稿: きゃんぴ | 2014/04/30 22:08

>きなこ団子さん
コメントありがとうございます。
そうですね、確かに言葉は不自由でした(笑)。ある部分では開き直りに近いものがあるかもしれません。ともかく行き倒れになることものたれ死ぬこともなく無事に戻ってこられたということは、きっと強運なのでしょうね。

投稿: いかさま | 2014/05/03 03:49

>マーチャンさん
いつもありがとうございます。
身近なところで言いますと、旭川市の中心部近くにもロータリーがあります。時計回りの一方通行で、出入りのタイミングが初心者にはなかなか難しく、初めて通ったときに2周ほどしてしまったことを覚えています(笑)
街灯も少なく、人通りも少ないとおりに迷い込んだときにはどうなるかと思いました。アメリカなどもそうですが、通り1本で危険地帯になることもあるそうですから、国内のようなわけにはいきませんね。

投稿: いかさま | 2014/05/03 03:56

>mitakeyaさん
いつもありがとうございます。
国内ですとこんな体験はめったにないのですが、右も左も分からない国での迷子は、さすがに肝が冷えます。
ニューヨークは道が碁盤の目になっていて、同じような札幌での生活に慣れた私には歩きやすい町でしたが、これも人によってはかえって迷いやすいと言う方もいて、ままならないものです。

投稿: いかさま | 2014/05/03 04:01

>姉さんさん
いつもありがとうございます。
国内ですとめったに見かけないロータリーですが、海外へ行くとフランスに限らずいたるところで見かけますね。ただ、上にも書いたとおり、交通量の多いところでは出入りが非常に難しいです。
ただ、そのせいかみんな運転が慎重になるため、交通事故は比較的少ないという話を聞いたことがあります。

投稿: いかさま | 2014/05/03 04:04

>kasukasu chanさん
いつもありがとうございます。
私の風貌が怪しかったかどうかはともかく、フランスの方は自国の言葉に強いこだわりがあるのでしょうか、英語で話しかけても反応してくれる方が少ないと聞きます。地下鉄の駅まで来て駅の名前すらわからないなどという事態に追い込まれるとは思いもしませんでした。
タクシーに乗ってしまえばおそらく安心だったのでしょうが、それでも地下鉄にこだわったあたり、鉄道ファンの面目躍如とも言えそうです(笑)

投稿: いかさま | 2014/05/03 04:08

>ひまわりっこさん
いつもありがとうございます。
そのときは必死でありましたが、今になって考えてみると、パリの街で道に迷って歩く姿はなんとなくオシャレかもしれませんね(笑)。
昼間だったら、それはそれで楽しめたような気もします。
その後、ショッピングモールの近くで迷っているとき、11月の寒い夜に足元に電気暖房機を置いて外のテラスでお酒を飲んでいた人々の姿を見ました。これまたオシャレでしたね。

投稿: いかさま | 2014/05/03 04:16

>きゃんぴさん
いつもありがとうございます。
見ず知らずの道では緊張し、慣れた道ではつい気が緩むということはよくあることですね。
道に迷う心配はないですが、あまりぼーっとしていて車をぶつけたりしないように気をつけてくださいね(笑)

投稿: いかさま | 2014/05/03 04:22

こんばんは!
昔、「越前屋俵太 ◯◯で転ぶ」という番組がありまして…
なんとなくいかさまさんの勝手なイメージが重なって。
「いかさまさん、世界で迷う」
さすがですね、ピンポイントでツボにはまります!

投稿: ミナゾウ | 2014/05/04 22:49

>ミナゾウさん
いつもありがとうございます。
その番組のことは全く知りませんで、今ほどgoogleで調べてみましたら、自費制作のDVDらしいですね。非常に面白い!!とみなさんおっしゃっていますが、文章だけでは伝わってきません(笑)
これはぜひ一度見てみなければなりませんね。

投稿: いかさま | 2014/05/05 00:54

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