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2015/04/27

福知山線事故10年に想う【1】

 あれからもう10年になるのか、と、テレビのニュースを見ながら思った。


 2005年4月25日9時18分、宝塚発同志社前行き快速5418Mが、福知山線塚口-尼崎間で脱線、線路左脇に建つマンションに突っ込んだ。7両編成の電車は、1両目と2両目が大破、3両目も衝撃で逆向きになって損傷した。
 この事故で、乗客106名と運転士1名、計107名が亡くなり、562名が負傷した。亡くなられた乗客の大半は1号車と2号車に集中していた。



 私は当時、岩見沢に勤務しており、このニュースの映像を職場のテレビで見た。ステンレス製の頑丈な電車が無残に折れ曲がった姿に強い衝撃を受けた。映像で見る限り車両は6両しか見えなかったが、後に2号車1両がマンションの壁に巻き付くようにして潰れていたことを知る。鉄道史上に残る大惨事であることは疑いようもなかった。


 日本の鉄道史上最悪の事故は、189名の死者を出した1940年に西成線(現在の桜島線)で起きた列車脱線火災事故とされている。福知山線事故を除くと、死者100名以上を出す列車事故はこれまで8件発生しているが、その大半は戦中から戦後復興期、信号やシステムなどの安全設備が不完全な中で起こってきた。1963年に東海道本線で起きた鶴見事故(死者161名)以来、100名以上の死者を出す事故は発生していなかった。


 これらの事故は不幸な出来事であったが、その後の安全設備の導入・整備の契機ともなった。福知山線事故でもクローズアップされたATS(自動列車停止装置)は、1962年の三河島事故(死者160名)をきっかけに国鉄全路線への導入が決まった。


 しかし、安全設備の導入が進んだ後も、鉄道事故は続いた。国鉄がJRに変わり、近代化が進んだ平成以降になっても、信楽高原鐵道正面衝突事故(1991年、42名)、関東鉄道常総線列車衝突事故(1992年、1名)、日比谷線中目黒駅脱線衝突事故(2000年、5名)と、乗客に死亡者を出した事故は3件発生していた。運転士のみが死亡した事故や、死者は出なかったものの多くの負傷者を出した事故も数多い。


 鉄道に「完全な安全」があり得ないことは、こうした事実が物語っているが、それでも私は鉄道は他の交通機関に比べて安全であると信じていた。鉄道ファンだからという身びいきもあった。けれどもこの福知山線事故は、漠然としたその希望を簡単に打ち砕いた。


 事故の原因は、簡単に言えば制限速度を大幅に超過してカーブに進入したことによる脱線である。この速度超過が引き起こされた背景として、システムの問題や会社の勤務管理に関する問題などがあるのだが、これについては後に譲る。そうした問題を孕みながらも、第一義的には運転士のヒューマンエラーにより発生した事故であると言ってよいと思う。
 ちなみに、JR西日本は、事故発生数時間後の記者会見で「線路上に進入した自動車との衝突」、同日午後の会見で「置き石による脱線の可能性」に言及し、いずれも警察や国土交通省から即座に否定されて撤回している。こうしたことも含め、JR西日本の責任逃れ的な姿勢にも批判が集まった。


 実はこの事故は、状況によっては二次災害を引き起こし、さらに被害が拡大する可能性があった。


 事故発生の数分後、現場の下り線を城崎温泉行き特急「北近畿3号」が通過する予定になっていたが、事故を目撃した近隣住民により踏切非常ボタンが押され、「北近畿3号」は現場の100mほど手前で緊急停止した。住民の機転がなければ「北近畿3号」は現場に到達して下り線の線路を支障している5418Mと接触、最悪の場合こちらも脱線・転覆していた可能性がある。


 この事故が鉄道の安全に与えた教訓は、他に比較するものがないほど大きなものであったはずである。しかし残念なことに、その後も乗客の死傷こそなかったものの、脱線、転覆などの事故は何件も発生した。そして事故から6年目の2011年、JR北海道の石勝線特急脱線炎上事故に始まる一連の事故へとつながっていく。その底流に流れているものは、実は同じなのではないか、と、私は思っている。

続く。

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コメント

悲しいですね。
会社を守ることと安全を重視することは相反することなんでしょうか?
確か運転士が「遅れを取り戻さなくては」とスピードを落とさずカーブに進入したと言われていた気がします。
仕事での結果が大事と普段は思ってしまいがちですが、人の命に関わる部分は安全が最優先であってほしいと思います。

投稿: ミナゾウ | 2015/04/27 23:07

>ミナゾウさん
いつもありがとうございます。
ミナゾウさんがコメントされている件については、後日あらためて触れる予定ですが、報道にもあったとおり、運転士がこういった精神状態になってしまったことについては複雑な背景があります。紐解いていくと、現在につながる重要な問題も潜んでいることに気付かされます。実に根深い問題です。

投稿: いかさま | 2015/04/30 01:32

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