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2015/04/30

福知山線事故10年に想う【2】

 福知山線列車脱線転覆事故について書かれた書物は数多いが、もっとも事故原因を端的に伝えているのは、航空・鉄道事故調査委員会による事故報告書である。


 前回も書いたが、調査委員会が認定した事故の直接的な原因は、速度超過である。
 福知山線は塚口駅から南へ向かい、比較的半径の小さいS字カーブを描いて、東西方向に走る東海道本線と合流して尼崎駅に至る。事故現場となった右カーブは、半径およそ300m、最高速度は70kmに制限されていた。


 中学校理科の世界の話になるが、高速で走行する電車がカーブに入るとき、慣性による遠心力が働いて外側に傾こうとする。これを緩和するために、カーブ区間には速度制限を設けて過剰な遠心力を抑えるようになっている。その一方で線路についても、内側のレールに対して外側のレールを高くする、「カント」と呼ばれる傾きを設け、遠心力を抑制するようになっている。


 事故を起こした5418Mはこのカーブに時速およそ116kmノーブレーキで進入した。制限速度を40km以上も上回っている。これにより、自動車事故でいうところの「カーブを曲がりきれず」という状況が発生した。普段と比較してかなり速いスピードでカーブに進入していったように感じたという複数の乗客による証言もある。
 運転士がブレーキをかけた記録は残っているが、それは速度制限区間へ進入した直後であり、タイミングを逸している。その結果、強い遠心力によって内側の車輪が浮き上がり、外側の車輪がレールから外れる。脱線した時点での速度はおよそ105kmだったとみられる。(報告書本文2.2.7)


 列車はそのまま左に傾いて線路から逸れ、線路左側のマンションの機械式駐車場に突っ込んだ。
 最も損壊が激しかったのは2両目で、衝突の衝撃で停止した先頭車と、走り続けようとする後方車両からの圧迫に挟まれ、マンション外壁に張り付くようにして押し潰された。先頭車以上に2両目での犠牲者が多かった理由はこのためである。(報告書付図5)


 直接的な原因としては以上のとおりであるが、間接的にこの事故をもたらしたものとして、大きく2つの遠因があると考えられている。


 そのうちのひとつは、事故を未然に防ぐための安全設備・装置に関することである。
 日本のJRすべての路線には、赤信号の区間に進入しようとすると警報が発せられ、所定の動作をおこなわないと自動的にブレーキが作動するATS」(自動列車停止装置)が備えられている。また、列車の運行が過密な路線では、通過時の速度を測定(速度照査)して速度超過を防止する機能を備えているものもある。
 事故後、この地点に速度照査機能のついた地上子がなかったことが問題視された。装置の新旧も含めて、明らかに内容の間違ったものも含めて、この件についてはかなりいろいろな報道があった。


 私はATS云々のことについてはそれほど詳しくないので、その正否を軽々に指摘できる立場にはない。事故現場に速度照査可能なATSの地上子があれば、あるいはもう少し精度の高い新型ATSなどが設置されていれば、事故は防げた可能性がある。
 けれども、運転士が制限速度をはるかに上回ってカーブに進入し、この大事故を起こすということが果たして予見できたかどうか、というと、そこは疑問に感じるのである。


 この事故は先にも述べたとおり「ヒューマンエラー」である。それをシステム上回避する方法を考えることは大切である。けれどももっと大切なことは、そのヒューマンエラーがなぜ起こったのか、そこを検証しなければ、問題の解決には至らない。
 それがふたつ目の遠因にあたる部分である。

続く。


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コメント

おはようございます。私もこの事件については忘れられないですね。2週間位したら急速にTVや新聞でも扱いが小さくなっていった気がしますけど。あの顔写真入りの当時の新聞記事を私はすぐには捨てられなかったですね。あのように107人もの人が亡くなり、500人以上の方が負傷された悲惨な鉄道事故はちょと記憶にありません。GWを迎える事が出来ずに亡くなられた多くの有望な方の事を思うと、無事生きている者は、亡くななられた方々ができなかった事をしようとおもったら出来る訳ですよね。今を大事にしようと思わされた衝撃的なニュースでしたね。

投稿: poem | 2015/05/01 09:12

>poemさん
お返事が遅くなりまして大変申し訳ありません。
この件に関する書籍をたくさん読み、事故調査報告書にも触れましたが、あらためて大変な事故であったことが思い出されます。4月下旬の平日午前、というタイミングで、社会人、主婦、学生と幅広い乗客の方が乗られており、不幸にも命を落とされたわけですね。亡くなられた方の無念、遺族の方のお気持ちを察すると涙が出ます。
鉄道のみならず運輸業界におられる方々には、人命を預かっていることの重みを、いま一度深く考えて欲しいと思います。今年は福知山線事故から10年、日航機墜落事故から30年の節目の年でもあります。

投稿: いかさま | 2015/05/10 23:31

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