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2015/07/12

「JR北海道再生のための提言書」をめぐる動き【2】

 前回の続き。


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 今回の提言を受けて真っ先に表面化した動きが、留萌本線(深川-増毛間66.8km)の廃止に向けた動きである。


 北海道新聞は6月27日、留萌本線沿線の秩父別町をはじめ、沿線各自治体をJR北海道の幹部が訪問し、留萌本線廃止に向けた手続きを進める意向を伝えたと報じた。


 留萌本線は、国鉄時代の1977~79年度の平均輸送密度(1日1kmあたりの旅客人数)が1,619人と、当時から「特定地方交通線」として廃止対象とされた基準(輸送密度4,000人)を下回っていたが、「平均乗車距離が30kmを超え、輸送密度1,000人以上」という除外規定に該当し、廃止対象を免れている。


 けれども輸送密度はその後も年々減少し、国鉄最後の1986年度に537人、2014年度にはわずか142人と、40年たらずで10分の1以下になり、JR北海道の統計区間でワースト3位に位置している。JR北海道は留萌本線全体の存廃について検討を進めており、末端区間の留萌-増毛間16.7kmを先行して2018年度までに廃止したいとしている。


 留萌本線の旅客流動の中で最も大きいものは、函館本線と接続する深川を中心とした地域内流動で、石狩沼田・秩父別などから深川市・滝川市への通学利用が中心である。
 2007年には秩父別駅で通学高校生26人が満員の列車に乗車できない「積み残し」も発生している。積み残しなど東京の山手線では日常茶飯事であろうが、2分待てば10両編成の電車が来る山手線と違い、1両編成の列車が1日9本しか来ない留萌本線では「事件」である。ただ、この区間も日中の利用客は少なく、利用状況の下支えにはなっているが、需要の増加には至っていない。


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 そのほか、深川あるいは札幌・旭川と留萌を結ぶ都市間輸送と、留萌を中心とした地域内流動がいくらかある。しかし、札幌~留萌間の移動は、自家用車もしくは高速バスが便利で、乗り換えの必要なJR利用は少ない。また、留萌市は振興局所在地だが人口は22,000人程度で、人口5,000人足らずの増毛町との間の鉄道利用者は少ない。留萌-増毛間が雪害により運休になった際、新聞の報じたところによれば、影響は1日あたりわずか約40人であったというから、昨年廃止になった江差線末端区間レベルを下回る


 加えてこの区間は、2005年と2012年の二度、雪崩を原因とする脱線事故が発生しており、今年に至っては雪崩の恐れのため、2月23日から4月28日の間運休になっていた。
 道路と比較して「雪に強いのが鉄道」と昔から言われてきたが、近年では主要道路の拡幅や改良が進んでいる。留萌-増毛間の国道も道路状況は良く、除雪も行き届いていて、路線バスも1日10往復運転されている。
 JR留萌本線の抜本的な雪害対策には約50億円を要するとされ、1日わずか40人の乗客のために一企業が負担できる金額ではない。「選択と集中」のターゲットになるのも無理からぬところである。


 毎日新聞は、この意向を受けた沿線自治体の首長の反応を伝えているが、今回の部分廃止で一番影響を受ける増毛町の町長をはじめ、大多数の首長が路線の存続には悲観的(もしくはあきらめ)なコメントを残している。江差線のときと同じである。


 これが国鉄時代ならば、沿線自治体の住民を巻き込んで、「乗って残そう○○線」的な廃止反対運動が盛り上がるところである。けれども、過疎化による人口減少と、高齢化・少子化の進行により、鉄道利用の主役たる通学生も大幅に少なくなっており、利用促進による廃止反対運動が困難な状況になっている。


 加えて、道路の整備により自動車の利便性が向上し、かつては駅周辺と相場が決まっていた商業施設や公共施設も、駐車スペースの確保が容易な郊外、主要道路周辺へとシフトしている。過疎地域における鉄道の重要性は小さくなり、代替手段が確保されるのであれば鉄道にこだわる必然性はなくなってきている。
 寂しい話ではあるが、これが21世紀の地方における鉄道の実態なのである。


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JR北海道経営問題」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
厳しいですね。
でも仕方ないのではないかと感じるのは、利便性や合理性を重視する今時の考え方に染まっているからなんでしょうか?
確実にその地域の人達には生活に影響するし、深刻な問題だと思うけれどそれでも「仕方ないのではないか」と思う理由の一つに利益が上がっていないから…
それが本当に仕方ない事なのかは実際よくわからないのですけどね…

投稿: ミナゾウ | 2015/07/13 01:05

こんばんはいかさま。
北海道は広いし、分散してるし、人々の暮らしも大変でしょうね。そこで路線廃止となると、ますます住み辛くなりそうですね。JRも営業面もあるけど、だんだん寂しくなってしまいますね。
mitakeyaの近くの駅も4月から無人化されてしまいました。防犯面で反対の意見もありましたが、時勢の流れで仕方がないかな。

投稿: mitakeya | 2015/07/13 20:28

先月北海道を旅した際にこの話題に触れました。
逆に、留萌-幌延間の羽幌線あったころを懐かしく思い出しちゃいました。鉄道は基本地元のライフラインですが、別のラインが出来れば話は別、いかさまさんの指摘の通りと思います。我々旅行者は、今ある中で旅情を楽しませてもらい、とにもかくにも地元にとって、一番良い結果になることを祈るのみです。

投稿: キハ58 | 2015/07/13 22:28

ミナゾウさん、いつもありがとうございます。
鉄道は公共インフラとして欠かせないものですが、それを民間にやらせようというのが国鉄分割民営化でした。郵政も似たような話でしたね。
地域の生活に必要な交通機関が本当に鉄道でなければならないのか、地方そのものの街づくりに必要なものなのか、はなお議論の余地があると思います。一民間企業に任せる話ではなく、国や地方、地域住民も交えて、皆で考えていかなければならない問題だと思います。

投稿: いかさま | 2015/07/16 00:06

mitakeyaさん、いつもありがとうございます。
後に触れる機会もあるかもしれないと思い、調べたのですが、北海道は九州の半分以下の人口なのに、JRの路線延長は逆に北海道のほうが1割ほど多いのだそうです。この差が輸送密度の差にもなって現れています。
ただそれでも、JR九州の輸送密度は、本州3社に遠く及びません。駅の無人化など、合理化も進めていかなければならないと思います。その中でさまざまな取り組みで乗客を確保し、観光客や鉄道ファンを魅了する施策を繰り出すJR九州の心意気には頭が下がります。

投稿: いかさま | 2015/07/16 00:13

キハ58さん、いつもありがとうございます。
留萌本線は羽幌線あっての「本線」でした。私は残念ながら廃止前に羽幌線を訪れることはできませんでした。
北海道は札幌と一部の市町村を除いて人口減少が続いていますが、鉄道のなくなった街はその中でも人口減少が著しい傾向があります。地方の活力の維持のために交通機関の確保は必須条件だと思いますが、それが果たして鉄道でなければならないのか、という疑問は少なからずあります。鉄道ファンとしては寂しい話ですが、現実はシビアに見ていかなければならない気がしています。

投稿: いかさま | 2015/07/16 00:21

テレビで北海道の冬の鉄道をルポしたのを
今年見ました。
駅は無人で、駅の廻りは何もなく・・・。
いかさまさんのブログが分るような気がします。
時代と言えば済みますが、あるものが無くなるのは
寂しいかぎりですね~。

投稿: マーチャン | 2015/07/19 07:12

 マーチャンさん、いつもありがとうございます。
 北海道は特に顕著だと思いますが、鉄道の衰退が著しい一方で、道路の整備状況には目を見張るものがあります。まさに地方では交通機関の主力はマイカーで、鉄道の比重は小さくなっていますね。道路、鉄道、両方を求めることができないとしたならば、地域住民はどちらを選ぶか・・・。
 これが現実なのだろうと思います。

投稿: いかさま | 2015/07/22 23:35

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