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2015/07/22

「JR北海道再生のための提言書」をめぐる動き【3】

前回の続き。


 留萌本線の廃止が報じられて以降、にわかにJR北海道の今後を取り巻く報道の量が増えてきた。まず6月30日の北海道新聞は、「廃線拡大の可能性」として、2015年3月期の厳しい決算内容と、極端に利用の少ない区間の一覧を絡めて、JR北海道の置かれている厳しい現況を伝えた。



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札沼線(一部)   北海道医療大学-新十津川 47.6km
石勝線(一部)   新夕張-夕張 16.1km
根室本線(一部) 滝川-新得 136.3km/釧路-根室 135.4km
日高本線      苫小牧-様似 146.5km
宗谷本線(一部) 名寄-稚内 183.2km
釧網本線      東釧路-網走 166.2km



 以上に挙げた6線7区間に、留萌本線を加えた7線8区間が、輸送密度が500人を下回る超閑散区間である。札沼線・石勝線のこの区間の輸送密度は、留萌本線を下回っている。
(詳細は「JR北海道再生のための提言書 別紙」を参照)


 この数字がどの程度厳しいものか、ということを表す基準をいくつか示す。


 1980年代、巨額の赤字に喘ぐ当時の国鉄各路線を、自立的経営ができるかできないかで、「幹線」と「地方交通線」に分けた。区分の条件はいろいろあるが、旅客輸送密度(1977~79年の平均)に限ると、主要都市間を連絡する路線で隣接駅間の輸送密度が4,000人以上の区間があること、もしくは全線の輸送密度が8,000人以上であれば、幹線系線区に区分された。


 これを下回るのが地方交通線で、合理化や割増運賃の導入によってもなお自立的経営ができないと判断された路線である。なかでも、輸送密度4,000人未満の路線は、代替道路未整備などいくつかの除外理由に該当したものを除き、計83線が3次に分けて、鉄道以外の輸送方法が適している「特定地方交通線」に指定され、バス、もしくは第三セクターなどの鉄道に転換されていった。


 この83線のうち、バス化ではなく鉄道としての存続を選択したのは38線。うち7線が経営難からすでに廃線となっている。
 残る31路線(26社)のうち、2012年度の決算が経常ベースで黒字となっているのは真岡鐵道・伊勢鉄道の2社だけである。鉄道事業に限定すれば黒字路線はゼロ。多くの第三セクター鉄道は、JRと比べて徹底した人員削減などの合理化を進めているが、自治体からの補助金などを受けてようやく当期利益を確保している会社がほとんどである。


 下に掲げたのは、2012年度の輸送密度が500人未満の路線である。30線のうち、特定地方交通線からの転換路線は8路線と比較的少ない。一方で、特定地方交通線の指定を逃れたJR線が、北海道の3線をはじめ16線と半分以上を占める。


 この理由はいくつか考えられるが、そのひとつは、除外理由により特定地方交通線の指定を免れたローカル線は、指定された路線と同等か、それ以上に厳しい環境にそもそも置かれていたという事実である。留萌本線の1977~79年平均輸送密度は1,619人で、数字上は第二次特定地方交通線に相当する
 こうした路線を、JRは幹線区間の収益力で維持してきた。これに対し、第三セクターや在来の地方私鉄では、収益性の悪化した会社の淘汰が進んだ。これも理由のひとつである。


 それともうひとつ、かつて廃線の危機に見舞われた第三セクター鉄道では、「乗って残そう」運動に代表される利用促進や自治体のバックアップなどにより、沿線住民が鉄道を身近な存在として捉えてきた。これに対し、廃止対象から外れた路線では、こうした意識が希薄で、鉄道の存在を当然のものと考えていた可能性がある。また、JR自身もこうした路線に対して積極策を打つことなく、現状維持から踏み出すことはなかった。


 ローカル線を巡る環境は、近年とみに厳しくなり、沿線人口はいずこも減少の一途をたどっている。けれども、現在残る特定地方交通線転換の第三セクター鉄道の中には、留萌本線のように輸送密度がこの30年余りで10分の1以下にまで減少した路線はない
 意識だけで鉄道を守ることはできないが、その意識すらなくなれば、鉄道はもはや存在意義を持たない。30年前に明暗の分かれた鉄道の現況が、そのことをよく伝えているように思う。

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 表はクリックすると拡大します。



 ※参考資料
   鉄道統計年報 平成24年度版
   週間東洋経済 臨時増刊「鉄道 完全解明」(2010年)




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コメント

国道の方はバイパス化がそこら中で進んでいて、高速道路網も整備されてきたから、鉄道にこだわらずに公共交通機関全体でネットワークを考える時代に来ているのかもしれませんね。名古屋だとガイドウェイバスとか基幹バスとかバスにも鉄道並みの定時制を持たせる取り組みがありますけど、地元の利用者が使いやすい仕組みを作ってほしいものです。

投稿: かわうそくん | 2015/07/24 14:45

こんにちは!
普段使用しているものが突然使えなくなったら、かなり困りますもんね。
ましてや選択肢のないものであれば尚更…
生活に必要な施設として残せるような方法が見つかれば、全国的に利用するかもしれませんね。
なにか…と、そう簡単にいかないからどんどん廃線になっているわけで…
難しいです。

投稿: ミナゾウ | 2015/07/26 18:39

かわうそくんさん、ありがとうございます。お返事が遅くなりまして申し訳ありません。

道路と鉄道、利便性を考える上ではどちらも重要なインフラですが、それぞれの特性を活かした形で投資をしていかないと、どちらも中途半端になるおそれがありますね。震災復興地域で導入されているBRTなども含め、今後の地方都市の交通機関確保にむけて、さまざまな検証を進めていって欲しいと思います。

投稿: いかさま | 2015/08/02 23:45

ミナゾウさん、いつもありがとうございます。お返事が遅れまして申し訳ありません。
鉄道が地方の利便性を維持し、ひいては地方活性化の一助になるのなら、それは一番嬉しいことです。でも、地方の生活環境を維持、向上させていくのが目的ならば、一民間企業の手にはちょっと余りますね。
いろんな面で、国がもう少し思慮深くなってもらわなきゃなあ、と思いました。

投稿: いかさま | 2015/08/02 23:48

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