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2015/08/05

阿川弘之氏を悼む

 

作家の阿川弘之氏が亡くなった。94歳。

 

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 以前のブログでも触れたが、阿川氏は戦時中海軍に従軍し、戦後作家活動に入った。海軍での体験を活かして執筆された戦記文学が代表的な作品である。
 なかでも、「海軍左派トリオ」と呼ばれた3人を取り上げた、「米内光政」「山本五十六」「井上成美」は、文学的にも高い評価を得ているが、同時に、当時の歴史の背景を語る文献として非常に貴重な作品となっている。

 過去記事「本棚:『米内光政』『山本五十六』『井上成美』」はこちら。

 また一方で、エッセイや随筆には、戦記文学とは一線を画す、軽妙洒脱なタッチを用いている。その代表作のひとつが「南蛮阿房列車」シリーズである。これは元祖「阿房列車」の作者である内田百閒の衣鉢を継ぐものであるが、本家に負けず劣らずの軽やかな中にも味わい深い雰囲気を残している。宮脇俊三も阿川氏の文章を崇拝していた一人であり、手法や背景は異なるものの、そのユーモア溢れる文体は同じ流れの中に位置するものであった。

 阿川氏のお嬢さんが、「TVタックル」などでもおなじみのエッセイスト、阿川佐和子氏である。佐和子氏のエッセイにしばしば登場するお父さんは頑固一徹で自分本位な人として描かれているが、反面、愛情の表し方がわからないで戸惑っている一面や、ユーモアに溢れた側面なども書かれている。
 吉行淳之介や遠藤周作、開高健、北杜夫らをはじめ、作家同志の交流も広く、ことに遠藤周作や北杜夫のエッセイには毒舌とユーモアの洒落人としてよく登場しており、阿川氏の人柄を表している。

 昭和の時代に生きた作家がまたひとりいなくなった。
 戦後70年の節目、それも8月になくなられたというのも因果だろうか。阿川氏を偲びながら、節目のこのときに、もう一度海軍三部作を読み直してみるのも悪くないと思っている。
 ご冥福をお祈りしたい。


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本の旅人」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
 
弘之氏の本はいまだ読んだことがありません。
何だか敷居が高いような気がして・・・。
「きかんしゃやえもん」くらいでしょうかね。
 
佐和子氏の本はエッセイが多いですから読みやすくて
こちらは何冊も読んでいまして
弘之氏の人となりは、その中で知りました。
 
同じく ご冥福をお祈り致します。

投稿: 花mame | 2015/08/09 11:21

花mameさん、ありがとうございます。
お返事が遅れまして申し訳ありません。

弘之氏の作品はなんとなく気難しい感じの本が多いように感じるかもしれませんね。文章からもそれはよく伝わってきますが、一方で文章そのものは心地よいリズムに満ちているように感じます。
佐和子さんの文章を読んでいると、一見、まったく異なもののようで根っこはつながっている、そんな風にも思えてきます。

機会があればぜひ一度手に取ってみてください。

投稿: いかさま | 2015/08/22 01:07

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