« 2009年世界の旅・本編【0】 | トップページ | 2009年世界の旅【2】ボストンへの道 »

2015/09/13

2009年世界の旅【1】旅立ちまで

旅に出るに至った経過については、こちら。【その1】 【その2】 【その3】

 2009年の春、私は2か月間の海外研修に向けて、訪問先とのアポイントメントなど準備に取りかかっていた。視察希望先に見本市や展示会を組み込んだ関係から、8月中旬に出発してポートランドで語学研修、その後各地を回って10月中旬帰着で日程を設定していた。


 ところが行程案を提出した直後の4月末、カナダで新型インフルエンザが発生、瞬く間にアメリカにも広がって猛威を振るい、ついには日本にも上陸。会社からは「不急不要の」海外出張の自粛命令が出されるに至った。「不要」かどうかはともかく、「不急」であることは間違いない海外研修も、準備をいったんストップさせるよう、人事部からの指示があった。
 「おそらくではありますが、このままでいけば研修中止、ということもあり得ます。」
 人事部の担当者に能面のような表情で告げられ、私の浮かれ気分は急速にしぼんだ


 研修の実施が正式に決められたのは6月下旬。行程作成を再開するが、8時間から10数時間も時差のある相手との打ち合わせだから、アポイントメントひとつとってもやりとりに時間がかかり、結局、出発は1か月繰り下げて9月となり、語学研修先はボストンに決まった。


 行程表提出も無事終わって人事部の決裁が下り、留学エージェンシーを通じて語学学校の手配も済んだ。次にしなければならないのは学生(F1)ビザの取得である。アメリカでは一定時間以上学校に通う場合は学生ビザを取得しなければならない。ビザは時期によっては札幌の領事館でも申請できるようだが、あいにくこの時期は東京のアメリカ大使館でしか申請できない。そこで私は、留学エージェンシーから送られてきた書類を持って上京し、8月11日朝、土砂降りの雨の中、品川のホテルから赤坂のアメリカ大使館へ向かった。


 別棟になっている大使館への入口で、空港同様のセキュリティ・チェックを受ける。大きな荷物はゲート手前で預けることになっており、細心のセキュリティ対策である。
 ビザ発給カウンターの入口で書類を渡し、中に入る。病院の待合室のような長椅子がずらりと並ぶ向こうに、駅の切符売り場のように透明の板が立てられた窓口が10ほども並んでいる。天井からぶら下がったテレビではCNNが放映されているが、音声はほとんど聞こえない。もっとも、聞こえたところで内容が理解できるわけでもない


 ひとまず指紋の採取をされて、待つことおよそ45分、窓口から呼ばれる。ついたての向こうの男性係員は、書類をめくりながら、時々こちらの顔を無表情で見比べる。私は緊張しながら直立不動でその前に突っ立っている。しばらく無言の対面が続き、
 「××××××?」
 係員がこちらに問いかける。何を言っているか全く理解できない。パードゥン、と小さく言うと、もう一度質問を繰り返してくれる。けれどもやはり聞き取れない


 「Where will you stay in?」
 3度目の質問はややゆっくりで、ようやく何を聞かれているかが理解できる。あー、ボストン。そう、ボストン。そう答える。冷房が効いているにもかかわらず、いやな汗で背中が濡れつつあるのがはっきりとわかる。係員はさらに沈黙したまま書類をめくり続けたのち、こう言った。

 「アナタノー、ヴィザハー、キョカ、サレマシター。イッシュウカンカラトオカデー、トドキマース。コレデケッコウデース

 日本語である。何だよ、喋れるんなら最初から日本語で聞いてくれよ、と、私は安堵しつつも憮然とした気分になった。私は旅立ち前から試験にかけられたような気分になった。仮に全く対応できなかった時にビザの許可が下りたかどうかは気になるところではある。学生ビザが手元に送られてきたのは、予告どおり、上京から10日ほど後のことであった。

 延々と、続く。




ランキング参加中です。みなさまの「クリック」が明日への糧になります。よろしかったら、
ポチっとな

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道旅行へ にほんブログ村 旅行ブログ 海外旅行へ 鉄道コム

|

« 2009年世界の旅・本編【0】 | トップページ | 2009年世界の旅【2】ボストンへの道 »

世界の旅人」カテゴリの記事

コメント

ボストンにいらしたんですか!
私も数少ない海外出張で一番言った街がボストンでした。
シーフードが美味しくて、ハーバードの街は日本のキャンパスと大違いで唖然としました・・・
続き、楽しみにしています!

投稿: キハ58 | 2015/09/13 23:12

 キハ58さん、いつもありがとうございます。
 この先延々と続きますが、ボストンに4週間滞在しました。かなり長く居た割には行動半径が狭かったのか、ハーバード地区へは行けずじまいでした。有名なシーフードもも、クラムチャウダー以外はほぼ口に入れた記憶がなく(笑)、今思うと何をしてたんだろうと感じます。

投稿: いかさま | 2015/09/15 23:14

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 2009年世界の旅【1】旅立ちまで:

« 2009年世界の旅・本編【0】 | トップページ | 2009年世界の旅【2】ボストンへの道 »