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2015/12/09

2009年世界の旅【19】ボストン(17)迷走食生活 夕食とジュディストの新年会 その1

前回の続き。これまでの経過は ⇒こちら。


 ホストマザーのフランさんはこの年齢にして日中仕事をしており、帰宅は通常18時頃である。それから夕食の準備にかかるわけだから、豪華な食事など望むべくもない。週末にまとめて用意した食事をひたすら提供しているだけらしく、到着日の日曜から月、火、木と、鶏肉とオイスターソースを混ぜて炒めたようなご飯が出された。水曜日にはパスタが挟まったが、1週間のうち4回、同じものを食べていることになる。人づてに聞いていたアメリカの食事事情から考えると、格別驚くほどのことでもないようではある。


 第1週の木曜日、例のご飯を食していると、フランさんが、
 “明日は仲間が集まって家でパーティなの。もし夕食が必要なら、そこに同席してもらうことになるけど、それでもいい?”
と尋ねた。私が、何のパーティですか、と尋ねると、
 “ジュディストの新年を祝うパーティよ。”との答えである。


 ジュディスト(Judaist)というのは、ユダヤ教徒のことである。ユダヤ教は2つの暦を持っていて、そのうちのひとつ、農耕暦は9月に新年を迎える。敬虔なジュディストであるフランさん宅に、同じく敬虔な仲間が数人集まって、毎年パーティを開くのだと言う。
 フランさんの仲間というからには、おそらく敬老会のような雰囲気になるのだろうし、無宗教に近い私にとって、宗教の集まりというのは、どうしても腰が引ける。
 “大丈夫。誘ったりしないわ。信じる、信じないは自由意志よ。”
 フランさんは、私の心中を見透かしたかのように、そう言った。もっとも、そもそも他に食事をとる当てもないから、同席するより他にない。


 翌日、洗濯と散歩を終えてホームステイに帰ると、フランさんがあわただしくパーティの準備をしている。食器の準備を手伝ったりするうち、例のカメラマンの髭おっさんも現れた。ユダヤ教というよりイスラム教の方が似合いそうな風貌である。この人は普段家の中では、黒いTシャツに短パンという非常にラフなスタイルを貫いているが、今日はさすがにポロシャツに長ズボンと気を遣っている。おっさんの後ろから元気な白人の女の人もついてきた。しばしば家の中で見かけるが、どうやらおっさんの奥さんらしい。


 夜7時近くなって、フランさんのお仲間が次々と現れた。男性2名、女性2名、うち1組は夫婦のようである。夫婦でない男性は、ジュディストの特徴である「キッパー(kippa)」と呼ばれる小さな帽子を頭の上に載せている。
 全員が着席すると、手元にユダヤ教の聖歌集が渡された。見るとヘブライ語らしく、ミミズが鋭角にのたうちまわったような文字の羅列が目に飛び込んでくる。渡されてもどうしようもないのだが、とりあえずは流れに身を委ねるしかない。合唱が始まる。仲間の皆さんは胸に手を当ててゆったりとした雰囲気で歌う。黙っているのは私とおっさん夫婦だけである。


 フランさんが隣室から大きなパンを持って現れた。包丁を手に握り、歌声に乗せるかのように身体を揺らしながらそれを切り分けていく。農家の丹精の賜物である麦から作られたパンを厳かに扱い、自然の恵みに感謝するという趣旨のようである。
 それから、スープ、サラダと、次々と料理が出された。メインディッシュは、味付きのライスをロールキャベツ風に巻いたもので、これはなかなかいけそうな感じである。アメリカ上陸以来、見た目にも最も華やかな夕食である。


 一連の儀式が終われば談笑しながらの食事になる。けれども私は言葉に不自由している最中である。お仲間の皆さんがいろいろと話しかけてくれても、いいところ半分以下しか聞き取れず、時にとんちんかんな答えを披露する。見かねてフランさんが助け船を出してくれるが、次第に会話は話の通じる皆さん方で盛り上がる状況になった。取り残された私は、緊張から味のよくわからない夕食を食べることに専念した


 延々と、続く。




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コメント

わぁ、宗教的な夕食参加しちゃったのですね
映画でしか観たことがなかってすが、実際参加すると味が分かんないお気持ちになるのも分かる気がします
さて、この後どうなるんでしょ?

投稿: と~まの夢 | 2015/12/10 12:07

(* ̄0 ̄)ノアーメンソーメンヒヤぞーめん!
(*^m^)冷や汗もんですね。

投稿: mitakeya | 2015/12/10 20:54

 と~まの夢さん、ありがとうございます。
 宗教というのは、ある意味、もっとも大きい異文化交流かもしれません。その厳か感はひしひしと伝わってきましたが、その儀式の持つ意味合いをしっかり理解するには勉強が足りないことを痛感しました。
 ここに突っ込まれたことによる緊張感は、味覚を喪失させるのには十分でした。味を思い出せといわれても、まったく無理です(笑)

投稿: いかさま | 2015/12/14 00:26

 mitakeyaさん、ありがとうございます。
 これは懐かしいフレーズが飛び出しました(笑)
 本当に冷や汗をかきました。できればこういう宗教に関わるような情報は、事前にエージェントから教えておいてもらいたかったですね。多少の心構えはできましたから(苦笑)。

投稿: いかさま | 2015/12/14 00:28

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