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2016/02/05

JR北海道 区間別営業係数を公開

 1月29日、JR北海道は、道内の14路線すべて(30区間)について、100円の収入を得るために必要な費用を示す「営業係数」を発表した。
 このうち、輸送密度が500人を下回る超閑散区間(7路線・10区間)については、以前にも公開されているが、今回はこれ以外の路線も含め、管理部門費用も配分したうえで公表している。

Hokkaido これによると、管理費を加えた営業係数はJR北海道全体で154で、道内全ての路線が営業係数100を超え、赤字であることが明らかになった。
 乗車区間の個別特定がしにくい札幌圏については、函館本線・小樽-札幌-岩見沢、千歳線・白石-新千歳空港・苫小牧、札沼線・桑園-北海道医療大学を一体として計算し、営業係数は107とこれも赤字。ただし管理費を除くと91の黒字となる。


 ちなみにJR北海道全体としての営業損失は約400億円。昨年公表された鉄道事業における営業損失(約415億円)との差の理由は不明だが、管理費を除いた営業係数(社全体で133)から勘案すると、ざっと150億円あまりが共通管理費として各路線に配分されている計算になる。この金額が大きいか小さいかは判断基準がないのでわからないが、昨年公表された、鉄道事業に関する売上約757億円の2割、費用約1,171億円の13%を共通管理費が占めていることになる。


 いずれにせよ、JRがこうした経営実態を詳細に明らかにするのは、国鉄時代を別にすればかなり異例のことであり、JR北海道がおかれている厳しい状況の象徴でもある。そして同時に、これは国に対するSOSの発信であり、沿線住民に対しては今後の交通体系見直し、すなわち廃線論議に向けた地ならしであるとみることもできる。


 JR北海道に限らず、他のJR各社も閑散ローカル線を多く抱えている(参考資料はこちら)が、地域のために必要な路線であれば可能な限り維持しなければならないのが、単純に利益追求の視点だけで語れない鉄道会社の社会的使命である。鉄道会社は、収益力の高い路線(大都市通勤輸送や新幹線など)の利益で閑散ローカル線の赤字を補填し、維持してきた。


 ところがJR北海道に関して言えば、ローカル線の赤字を補填できるだけの黒字を出す路線がただのひとつもないということになる。こうした慢性的な赤字構造を解消するために、先にも触れた経営安定基金が積み立てられているわけだが、直近の実績を見ると、JR北海道においては鉄道事業における赤字額を運用益で補填し切れていない。しかも経営安定基金の主たる運用先は国に対する貸付であり、実質的な補助金である。


 国鉄が分割民営化された際、国鉄は自ら「国鉄再建法」に基づき、当時の基準に照らして鉄道としての使命を十分に果たせない路線を切り離した上でJR6社に引き渡し、北海道・四国・九州の3社には「経営安定基金」という持参金まで持たせた。けれども以来30年近くなり、状況は大きく変わった。バブルの崩壊で基金の運用益は減少する一方、少子高齢化や都市過密・地方過疎の拡大により、地方ローカル鉄道の主たる利用層の人口そのものが減少した。全国に張り巡らされた高速道路や高規格道路はその流れに止めを刺した。


 こうした環境の変化は国の政策による部分が大きい。つまり、鉄道を地域交通網の一環として残していくために分割・民営化を実施し、基金運用益というある種の補助金まで提供しながら、同時に鉄道の存在意義を喪失させていくような形に導いていった。極度の金利低下を招いた経済政策も含め、これは失政ではないかと思うのである。もしくは、北海道(あるいはその他の地方都市も含めて)という土地の成長性に対する見通しの甘さではないかと思う。


 だとすれば今後、どこまでも赤字から脱却できない鉄道の必要性を考えていく中で、国が果たすべき役割は小さくないように思う。それは閑散ローカル輸送については代替輸送環境整備のサポートであり、地方幹線については、例えばいわゆる「上下分離」、国や地方が線路を所有し、JR、あるいは他の民間業者に運営を委託するようなやり方の検討である。


 もちろん、その前提にはJR北海道自身が自らの努力の中で採算改善に積極的に取り組んでいくことが必要である。けれども、想定を越える勢いで北海道の人口減少と札幌への一極集中が進む中では、その努力も限界に近づいている。鉄道に用はない、赤字だからすべて引っぺがせ、道路と航空機ですべてが代替できる、と考えるのならば話は別だが、そうでなければ、国には新幹線とその利権に踊らされるだけではなく、地方交通のあり方、ひいては地方の活性化そのものについてJRや地方自治体と一緒になってもう少し真剣に考えてみてほしいと思う。


※JR北海道全区間の営業係数資料(北海道新聞より)はこちらから



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JR北海道経営問題」カテゴリの記事

コメント

いかさまさま。いつもお世話になります朝比奈です。
JRの本州3社以外の北海道・四国・九州はいずれも営業係数が厳しい在来路線が多いのが事実ですね。

この鐡道路線を維持するためには鐡道の枠組みを全体的に変えないと地方の鐡道は絶滅してしまうと思います。

上下分離方式か本島3社による買収かぁ。いずれにしてもJR北海道・四国・九州は旧国鉄時代のように赤字を大量に作る前に枠組みを変えないといけないと朝比奈は思いました。

投稿: 朝比奈 ひなた | 2016/02/05 22:08

 朝比奈ひなたさん、コメントありがとうございます。
 単純に営業係数ベースで見ると、JR東日本の山田線や只見線、JR西日本の三江線や木次線など、同レベルで厳しいところは本州各社にも点在しているように思います。ただ、それを補填するだけの力をJR北海道は持っていないのが大きな違いだと思います。
 意外に健闘しているのが九州でしょうね。四国は北海道同様、厳しいと思います。方法、やりかたは必ずしもひとつではないですから、国や自治体も積極的に提案をして、一番いい形を考えてほしいなと思います。

投稿: いかさま | 2016/02/08 02:10

北海道庁のサイトには、より詳細な資料が掲載されていました。過去5年間を平均した1日あたりの全駅乗車人員が出ていましたが、もうひどいの一言。留萌〜増毛間は瀬越・信砂・増毛以外は1人以下、浦臼〜新十津川間は間の駅がすべて1人以下、名寄〜豊富間は特急停車駅とその他の7駅以外が1人以下、特急が止まらない駅は全部10人以下という惨憺たるものでした。

石北本線と宗谷本線については、もうそれぞれある程度需要がある区間以外は原則普通列車なしとし、石勝線や海峡線のような特急料金不要の特例を設定、とした方がいいと思います。もっと極端な場合、特快「きたみ」や快速「なよろ」を特急化して、札幌直通便を増やすという方法もあり得なくはないでしょう。

それから、今度の改正では、長万部発函館行きの快速「アイリス」が普通列車となり廃止されます。そもそも快速である意味がなかったので、妥当でしょう。この際、その他の快速「狩勝」や「はなさき」「ノサップ」も普通列車にしてしまっていいと思います。

投稿: 龍 | 2016/02/10 02:15

 龍さん、コメントありがとうございます。
 鉄道の主たる役割は都市間輸送と地域内輸送だと思いますが、このうち地域内輸送については、都市圏を除いてはほぼしんどい状況におかれているのは間違いないと思います。また、都市間輸送でも稚内方面は厳しいですね。宗谷線の特急停車駅、天塩中川も、直近のデータでは乗降客数は10人を切っているといいます。

 おっしゃるとおり、今後も鉄道としての機能を維持していくのであれば、都市間輸送と地域内輸送を住み分けるのでなく、ある部分においては融合させてより合理的な運行形態を考えていかなければならないのかもしれませんね。

投稿: いかさま | 2016/02/12 00:46

龍さんは「石北本線と宗谷本線については、もうそれぞれある程度需要がある区間以外は原則普通列車なしとし、石勝線や海峡線のような特急料金不要の特例を設定、とした方がいいと思います」と言っていますが、それだと特急が停車しない駅はどうなるのですかといった疑問が起こります。石北本線と宗谷本線以外の路線にも言えますが、そもそも極端に利用者の少ない駅は原則廃止、その結果駅間距離が20km、30kmになってしまってもいいと思います。他地域に比べ駅間が極端に長くなりますが、鉄道を存続させるためにはこれも必要なことだと思います。

投稿: 福本英一 | 2017/08/17 19:43

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