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2016/04/24

「鉄道ファン」のあり方

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 4月11日に、真岡鐡道が公式Facebookページに掲載した内容が、鉄道ファンのあり方に一石を投じたものとして、鉄道ファンのみならず一般報道でも話題になった。この記事はログインなしでも読むことができるので目を通していただければと思う。


 ⇒真岡鐵道株式会社facebook公式ページ 4月11日の記事

 鉄道趣味というのはある種特異なところがあって、趣味となる対象(つまり鉄道)へのアプローチの仕方が非常に多様である。大別すれば、実際に列車に乗ることを楽しみとするファン、列車を撮影したり音を録ることを楽しむファンとに分けられる。昨今認知されつつある言葉では、前者を「乗り鉄」、後者を「撮り鉄」などと言ったりする。この他にも模型、鉄道史、メカニック研究、廃線など、切り口を挙げればきりがない。


 私はこの「」という言葉は、なにかしら見下されているようで少々面白くないのだが、実際のところ、この「鉄」のうち、一部の心無い存在が鉄道沿線や列車内、駅施設内などでしばしば一般常識を逸脱した行為をおこない、報道で取り上げられたり、ネット上で激しく叩かれるのを目にする。


 開業初日や廃止日の駅、車内で、写真撮影の場所取りをめぐってファン同士の小競り合いが必ず起こる。場合によっては暴力沙汰に発展する。2年前に廃止になった江差線末端区間ではファンに殴られたという人のtwitterが拡散した。カメラの視界に入った子供や家族連れを怒鳴り飛ばす話も必ず出てくる。
 危険区域や立入禁止区域に平気で入るのもいる。ひどいのになると車両基地や駅に侵入して物品を失敬してくる。鉄道ファンの間からも「盗り鉄」などと忌み嫌われるが、今年末の廃止が決まっている留萌本線の末端区間では、すでに駅名板がなくなる事件が発生している。


 鉄道趣味の特異性については、もうひとつ、その対象が社会資本として一般市民に開放されている存在であるということである。
 アイドルにせよスポーツ観戦にせよ、多くの趣味はそれを見に行くために、チケットの購入や開催会場など、多くの経済的・物理的制限の下に置かれる。主催者側はその制限を利用して事故・事件の発生しないような環境を整備し、参加者の行動を監視・コントロールする。


 ところが鉄道の場合は、一般市民の生活の中に通常存在しているから、そうした環境整備が非常に困難である。例えば「撮る」という作業は、線路に並走する道路上ならばほぼどこからでも手軽にできる。それをすべて監視・制限下に置くことは困難を極める。
 その結果、一部の増長したファンが、当然であるかのごとく民有地や鉄道敷地内へ侵入した。よりよい撮影ポイントを得るためなら花を踏み荒らすのも怒声を飛ばすのも平気になった。


 これはいわゆる「撮り鉄」に限った話ではない。「乗り鉄」も同じである。同じ趣味を持つものが集合するコンサート会場やスポーツ競技場と違い、社会の公器である鉄道には、乗ることそのものを目的としている者の他に、別の目的のために手段として鉄道を利用する人々が乗り合わせている。その車内を用もなく歩き回ったり、混み合った車内で三脚を立てて写真やビデオ撮影に没頭する人の姿を見かけるが、あまり気分の良いものではない。


 周囲の迷惑を顧みないこうした振る舞いをするファンが決して鉄道ファンの全てではない。多くのファンは節度を保ち、常識的な範疇の中で鉄道趣味を楽しんでいるはずである。
 これは推測であるが、おそらくどこの趣味の世界にも少々変わった人であったり、常軌を逸した人々は少なからずいるのではないかと思う。ただ、これまでに書いたとおり鉄道という趣味の対象の特異性は、他の趣味と比較して少々多い「非常識人」を生み出しているように感じる。また、その特異性ゆえ、鉄道に関するニュースは一般ニュースとして報じられる機会が多く、それゆえにこうした非常識な振る舞いが目に付くことも多いのだろうと思う。


 今回の真岡鐵道の件はそうした鉄道ファンのあり方に一石を投じた。実際には真岡鐵道だけでなく、それ以外にも複数の鉄道会社がホームページなどで、ファンに対して警鐘を鳴らしている。
 写真撮影の対象としての鉄道は、それ自体は鉄道会社へ直接的に利益をもたらさない。それでも特に中小の鉄道会社が撮影のために集まってくるファンに対して懐深く構えているのは、雑誌やブログ、SNS、果てはクチコミで鉄道の魅力が伝えられ、実際に訪れてみたい、乗ってみたいと思うファンが増えて欲しい、という期待に他ならないのではないかと思う。
 その一方で、そこに集まるファンが常軌を逸した行動をとれば、その鉄道を取り巻く環境、沿線住民や利用者の反感を買い、ファン以上に重要なサポーターを失うことになる。そのギリギリの境界線で苦悩した鉄道会社の出した結論が、今回の件につながったのだろう。鉄道会社が自分たちのファンに向けてこのようなメッセージを送らざるを得なかった理由を、私たちは肝に銘じなければならない


 こういう出来事が報道される機会が多いということは、鉄道と鉄道ファンへの注目度が高いという証しでもある。これは裏返せば鉄道趣味自体の裾野の広さを示しているとも言える。
 かくいう私自身も「乗り鉄」に属する者のひとりとして、客観的に見たときに本当に紳士的な鉄道ファンであるかどうかは正直疑わしい。節度あるファンとして、友人知人上司部下ファン仲間から尊敬されるよう、日々邁進するつもりである。


 背負い過ぎか(笑) だがそれくらいでちょうどいいのではないか、とも思う。





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鉄道の旅人」カテゴリの記事

コメント

自分も全国の鉄道を乗りつぶし、写真撮影もしてきましたが、若いころは全国の駅に置いてあるスタンプを集めるのに必死でホームを走って乗り換えまくる迷惑な人だったし、臨時列車のキップを手に入れるのに何度もみどりの窓口に並んだこともあります。以前なら「あの人は○○だから・・・」とスルーされた(公表したくてもする場がなかった)ことが、全国民がリアルタイムで知ることができるようになったということなんでしょうね。教員としてはいつ新聞に載るかもと怖い世の中になりました。

投稿: かわうそくん | 2016/04/25 19:00

このニュース私もテレビで見ました。
とうとう来ないでくださいとまで書かれて…
とても情けない事だと思います。
鉄道ファンだけでなく、最近は目的の為なら他はどうでもいいといった身勝手な人が増えてる気がします。
そしてそれを指摘されれば逆ギレしますし…
敷地内へ入ったり花を踏み荒らすなんて事を平気で出来るというのがどうしても理解できません。
何をどう楽しんでもいいけどマナーだけは守ってほしいですね。
鉄道会社には頑張ってもらいたいです。
ダメなものはダメ!ここ、ブレちゃいけないと思います。

投稿: ミミ | 2016/04/25 20:57

>かくいう私自身も「乗り鉄」に属する者のひとりとして、客観的に見たときに本当に紳士的な鉄道ファンであるかどうかは正直疑わしい。

こう振り返り、客観分析できるいかさまさんは、まさに節度ある鉄道ファンと思いますよ!
少し話かわりますが・・・最近、「出過ぎた杭は打たれない」風なことよく言う人いますが、日本人のDNAって「過ぎたるは及ばざるがごとし」、控えめくらいの方が好感もてちゃうんですよね・・・そんな甘っちょろいこと言うなとおしかりもらう場面もありますが^.^;

投稿: キハ58 | 2016/04/25 23:27

こんばんは。

最近の「鉄」の加熱気味は、もう理解を超えるとこまで
きましたね。

イベント列車が走っても、もう撮影に行く気分になり
ません。

GWには京都鉄博がオープンしますが、混雑と混乱が
目に見えるようで どうしようか迷って
います。
たぶん入り口までは行くと思いますが(^^;

投稿: なかっちょ | 2016/04/26 22:19

 かわうそくんさん、コメントありがとうございます。
 私も振り返ってみると、子供の頃・若い頃はそういう行動を少なからずとっていたと思います。学校の机の中に大型時刻表が入っていて、周囲の友達からは変人扱いされたものです。ネット社会の怖さはこうした評価が見知らぬ第三者によって「拡散」していくことです。
 だからという訳ではありませんが、社会の公器を趣味として楽しむ者としては、節度ある行動をとるよう心がけなければいけませんね。新聞に載るのもネットで拡散されるのも嫌ですから(笑)

投稿: いかさま | 2016/04/27 21:29

 ミミさん、いつもありがとうございます。
 非常識な振る舞いをする人間は鉄道ファンに限ったことではありませんが、同じ趣味を持つ人間であるからこそ、もっと反省して欲しいと切に思っています。
 趣味の対象から締め出されたファンほど情けないものはありません。報道で非常識なファンの振る舞いが広がれば広がるほど、鉄道ファンそのものに対する世間の見方がシビアになっていきます。「私はそうではない」と言ったところで周囲はそうは見てくれません。
 私たちが理解できないそういう人々が私たちの趣味の首を絞める、そんなことにはなって欲しくないと思います。

投稿: いかさま | 2016/04/27 21:43

 キハ58さん、いつもありがとうございます。
 偉そうに客観分析しておりますが、本当に客観的に見てちゃんとしているのかどうかは、こうしたできごとが報じられるたびに気になるのです。自分ではちゃんとしているつもりでいながら、その実のめり込んでいる最中は、やっぱり一般の方から見て迷惑になっているのでは、と考えてしまいます。
 謙譲の精神は日本人の美徳と言われますね。私はそうは生きられませんが、それができる人を尊敬します。「出すぎた杭は打たれない」は一見格好いいが、それは打たれないのではなく、抜かれるか放置されるかなのではないか、と私はひそかに思っています(笑)。

投稿: いかさま | 2016/04/27 21:50

 なかっちょさん、コメントありがとうございます。
 鉄道趣味が比較的市民権を得てきてから、こういう類の報道を目にする機会も増えてきたように感じます。ただ、そういう人々は昔から少なからず存在していて、それが趣味の裾野が広がったことで顕在化してきたのではないか、と思っています。いずれにせよ過熱感が以前に比べて増したように感じていますし、その過熱感がまたエキサイトして周囲が見えなくなるファンを増やしているのではないかとも思っています。

 京都鉄博のオープンは楽しみですね。私はのんびり、落ち着いた頃に覗きに行こうと思っています(笑)。

投稿: いかさま | 2016/04/27 22:03

こんにちは。
 
ネットのニュースで見ました。
もう腹立ちを通り越して情けなくなりましたよ。
 
どの世界でもそうですが、一部の心ない人のせいで
全体が悪く言われてしまうのには憤りを感じます。
 
読んだ記事の中に
「菜の花なんて たかだか雑草だろう」の一文があり
悲しくなりました。
 
生き物を大切に思えない人に
人が動かす鉄道を愛して欲しくありません。

投稿: 花mame | 2016/05/15 14:39

 花mameさん、コメントありがとうございます。
 真岡鐵道さんがあえてこうした記事を掲載したことで、非常識なファンの振る舞いに対する批判の声が高まっています。これはこれでひとつの成果だと思いますが、その一方で、これが鉄道ファン全体に対する一般の方々の見方として定着してしまうのではないかという危惧があります。
 自分の趣味の世界を理解してもらうためには、自分の世界以外を理解しようとする気持ち、優しさが必要ですよね。自らも肝に銘じたいと思います。

投稿: いかさま | 2016/05/15 23:25

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