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2016/06/06

北海道の都市間輸送はどうなるのか

 2011年5月27日の石勝線特急脱線炎上事故から5年が過ぎた。


 この事故は結果的にJR北海道の屋台骨を揺るがし、今日的状況に追い込む最初の一歩となった。新旧問わずあらゆる形式で発生した車両トラブルにはじまり、レールの点検データの改ざん、初歩的な運行トラブルの多発など、問題は複雑かつ長期化した。労務管理のトラブルと組合問題も明るみとなり、末期の国鉄と同じような症状を呈してきた。


Img_2248 厳しい経営環境の中で他の交通機関との競合に打ち勝つために投入された振り子特急は、結果的にその複雑な車両構造と北海道特有の厳しい環境条件、さらには不十分なメンテナンスにより、その性能を満度に発揮することはできなくなった。北海道新幹線の新函館北斗開業時にアクセス特急として活躍するはずだったキハ285系は、まともな試験運転もできないまま、設計着手から4年、完成からわずか半年で廃車の憂き目にあった。老朽化した特急車両の代替は、初期車登場から16年が経過したキハ261系で進められることになったが、高速化のアシスト機能である車体傾斜装置は搭載されなくなった。


 こうした状況下で、JR北海道は来年以降、車両不足と輸送量の減少を背景として、札幌-稚内・網走間の特急列車の運行形態を見直す方向で、沿線自治体への説明を始めた。


Img_1826 現在、網走方面へは特急「オホーツク」4往復、稚内方面へは特急「スーパー宗谷」「サロベツ」の計3往復が札幌発着で運転されている。報道によると、今回の見直しで、網走方面・稚内方面各2往復の札幌-旭川間を短縮し、旭川発着とするという。運行本数自体は変わらないが、札幌直通列車は網走方面2往復、稚内方面1往復に減少する


 北海道の都市間輸送は、高速道路の延伸と幹線道路の改良、全般的な人口減少と札幌への一極集中により厳しい状況に立たされている。4月13日のプレスリリースによると、2015年度の特急利用客は、ピークである1991年度との比較で、最も減少率の少ない函館方面(東室蘭-苫小牧)でも89%、輸送量が最も大きい札幌-岩見沢間で80%と、いずれも1割以上減少している。


 これは網走・稚内方面においても例外ではない。旭川-上川間における特急列車の乗客数は778人で1列車平均97人、1991年度との比較では52%と激減している。北見-網走間では301人と半分以下になる。
 また、旭川-名寄間では661人で1列車平均110人。網走方面ほどではないが1991年度との比較で69%とこちらも落ち込みが激しい。名寄以遠の乗客数は466人である。


 今回の運転区間見直しは、こうした利用状況をバックに、老朽車両の増加を代替新造でカバーできず、車両不足が深刻化している状況下で打ち出された方針である。運転区間の短縮により運用を見直し、所要車両数を抑制するのが目的で、普通列車の大幅削減の時と事情は同じだが、運転本数の削減を伴わない代わりに、「札幌直通」という都市間輸送の「肝」の部分に手が入ることが異なっている。


 網走・稚内系統の特急は、札幌-旭川間で「スーパーカムイ」系統に組み込まれて役割を果たしている。減少傾向とはいえ札幌-岩見沢間は1日平均8,114人、滝川-旭川間でも5,783人の乗客があり、「オホーツク」「スーパー宗谷」「サロベツ」においても旭川までの区間利用客もけっこう多い。少ない自由席は平日でも立ち客が出ることもある。


 こうした状況から、旭川以遠での特急の乗車効率が低下するのは必然である。本来ならば、網走・稚内方面への列車の直前あるいは直後に「スーパーカムイ」を運転して遠近分離を図れば区間利用客は減少し、編成を短くするなどの効率化を図ることもできたはずだが、実際には2010年の函館本線踏切事故による「スーパーカムイ」用789系電車の廃車や、一連の安全対策としてのスピードダウンの影響により「スーパーカムイ」は減便となり、相対的に「オホーツク」「スーパー宗谷」「サロベツ」の負担は増えている。


 輸送力の適正化という点だけを見れば、旭川での系統分割はひとつの選択肢であることは間違いない。ただ、現在の北海道内の地方都市は、過疎化と一極集中により札幌志向の度合いを年々強めている。
 1日778人ないし661人の乗客のうち、旭川発着の乗客は限定的だと思われる。残る旅客の求める直通手段を奪うということは、ただでさえ所要時間の長いこの区間の乗客に乗換えを強いることになり、札幌を起点とする都市間輸送の機能は格段に低下する。国鉄時代からほとんど積極的な投資がおこなわれていない旭川-網走間はともかく、32億円を投じておこなわれた旭川-名寄間の高速化工事はいったいなんだったのか、ということにもなりかねない。工事を実施し、施設・車両を保有する北海道高速鉄道開発(株)は、JR北海道が50%を出資する第三セクターだが、沿線の士別市・名寄市も出資している。


 それにしても残念なのは、キハ261系の開発当時に想定された、電車特急との協調運転が有効に活用されなかったことである。
 網走・稚内系統の列車を2両ないし3両の短編成とし、札幌-旭川間で「スーパーカムイ」と併結して走れば輸送力の適正化を図ることは可能だったろうし、少ない車両を有効活用できたのではないかとも思う。メカ的な専門知識は持ち合わせていないから夢物語と笑われるかもしれないが、他に鉄道による都市間輸送を守る方法はなかったのか、と寂しく思う。



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コメント

旭川〜網走間と旭川〜稚内間だけで4時間近くかかってしまいますからね。旭川〜名寄間を除いて95km/hでしか走れないので、元々の距離が長いだけでなく遅い。そのため、札幌直通だと1日当たりの運用が1往復以上設定できず、そのぶん車両を多く用意しなければなりません。宗谷本線と石北本線を全区間高速化して、札幌までの所要時間が4時間台前半になっていれば、1日2往復は無理でも1往復半の運用は設定できていたと思います。

石北本線に関しては、高速化の機会を逸した感があります。ふるさと銀河線の沿線が「銀河線を高速化して特急を銀河線経由にしろ」などとゴネなければ、せめて旭川〜北見間だけでも話がまとまった可能性があるだけに、惜しいことをしました。さすがに北越急行のような高速新線を、一から作るわけにもいかないでしょうから。

ちなみに高速バスは札幌〜網走間で8往復、札幌〜稚内間で5往復。いずれも列車より本数が多く、所要時間はほとんど差がないので、太刀打ちできていません。車内の電源コンセントの有無も、バスに水をあけられる原因になっているようです。

将来、車両を置き換える際は、「オホーツク」と「宗谷」に共通して使える車両にしたり、国鉄時代にやっていたように「オホーツク」と「宗谷」を旭川まで連結したり、といった方法を採用した方がいいと思います。「スーパーカムイ」との連結も一つの手ですが、今のJR北海道の状況ではやりたがらないでしょう。電車と気動車の協調運転ですから、専用車両の導入や費用対効果を考慮すると現実的ではありません。現に731系と連結できるキハ201系も、運用が限定されてしまい、ダイヤ作成の足かせになっているようです。

投稿: 龍 | 2016/06/06 09:55

 龍さん、いつもありがとうございます。
 宗谷本線に関しては、名寄までの高速化を図っても対稚内で所要時間が5時間弱(最速当時)というのは、鉄道のシェア確保の点でも痛かったですね。それでも相当の無理をして走っていた感はありますが、そのことが逆に車両の寿命を縮めた面もありそうです。高速化で運用にも無理がかかれば余計にそうなったのではないかと思います。
 石北本線に関してはご指摘のとおりだと思います。

 費用面から言うと鉄道のライバルは高速バスということになるでしょうが、宗谷線・石北線の最大需要地である稚内・北見を点で見ると飛行機も重要な競合相手ですね。私は稚内・女満別どちらも利用したことがありますが、費用面はともかく、圧倒的な速達性の前には快適性など不要だと感じました(笑)。

 「オホーツク」と「宗谷」の併結運転は需給均等化の一策と思います。が、ただでさえ遅れることが多いこれらの列車の遅れが函館本線に影響するのを抑えるとなると、併結相手が限定されない「スーパーカムイ」との連結という選択肢もあるのではないか、と素人考えをしてみました。技術的なハードルもあるのでしょうが、今はいろいろな人がいろいろなアイデアを出す時機であってもいいのかもしれませんね。

投稿: いかさま | 2016/06/07 23:33

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