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2016/08/09

ローカル線の行方【1】「持続可能な交通体系のあり方について」を読む

 普通列車の減便、ローカル線閑散区間の廃止、特急列車の運転区間短縮と、このところ明るい話題の乏しいJR北海道だが、7月29日のプレスリリースで、「持続可能な交通体系のあり方について」と題する文書を発表した。

 ⇒JR北海道のプレスリリースはこちら。

 この文書の言わんとすることは、すでに各媒体での報道でも明らかにされているが、要するに、採算性の著しく悪い路線・区間について、今後どのように交通体系を持続していくかを地域とともに協議していきたい、ということである。

 このことが即ち路線の廃止を意味するものではないということは、JR北海道自身も強調しているが、想定されるプロセスは以下のとおりである。

(1) JR単独での維持が困難な路線の公表
(2) 鉄道として維持するための支援策の検討
(3) 鉄道による交通体系確保の是非の検討


 このうち(1)については、秋口までにJR北海道から公表されることになっているが、これまでの各種メディアの報道内容からすると、かなり多くの路線が対象になると考えられる。この詳細については後に譲る。

 (2)については、鉄道として維持することを前提に、どのようにして負担を軽減していくかを多面的に検討するようである。具体的には列車削減や駅廃止などの合理化運賃値上げ、地域による利用促進などが想定されているが、経営形態の見直しにまで踏み込むことが明記されている。資料の中では若桜鉄道の例が挙げられており、線路などの施設保有を地方自治体に委ね、JRは列車運行に専念する、いわゆる「上下分離」を念頭に置いていることがわかる。

 こうした検討の内容を踏まえたうえで、(3)が検討されることになる。すなわち、地域の交通体系の中で、鉄道を残していくことが本当にメリットになるのか、場合によっては鉄道以外の選択肢の方が良いのではないか、ということである。逆に言えば、これらの協議に理解が得られなければ、JR北海道としては路線廃止以外の選択肢はない、ということを遠回しに表明したものと言える。


 文書の中でJR北海道は、これらの検討を進めていく前提として、インフラが自己保有であるという経済面での不利をふまえつつも、大量輸送・高速輸送などの場面で優位性を発揮するという鉄道の特性について説明している。そのうえで、逆に輸送単位の小さい過疎地域においては、小単位で機動的に運用できるバス、タクシーなどの活用も有利であることを、2年前に廃止になった江差線(木古内ー江差)の実例とともに示した。

 また、こうした状況に陥った背景として、JR発足以降30年間での環境の変化を挙げた。札幌近郊へ人口が集中する一方で総体として北海道の人口が減少を続けていること、自動車の保有台数が1.8倍、高速道路・高規格道路の延長が6.5倍にも達していること、などである。人口の減少と過疎は移動の絶対量を減少させ、自動車の普及と高速道路の整備は鉄道の相対的地位を低下させた。そのこと自体に疑いの余地はない。

 だが、北海道の鉄道を取り巻く厳しさは今に始まった話ではない。鉄道運輸収入が減少する一方で低金利により基金運用益が減少した1990年代後半のバブル崩壊期や、原油価格の異常高騰でディーゼル列車の運行費用が増した2008年のリーマンショック前夜などもかなり厳しい状況に置かれていたはずである。

 本来ならばこれらの時期にJR北海道の経営予測はもう少し真剣に論じられてもよかったはずだが、人件費や修繕費、設備投資を極力抑制することで利益を確保(もしくは赤字を抑制)する方向に向かった。
 文書の中では、トンネルや橋梁などの施設の多くが経年50年、一部は100年を超えているとして窮状を訴えているが、そもそも経年50年で手入れ・改修が必要ならば100年を超えるまで放置していること自体がおかしな話である。厳しさを増す経営環境の中で修繕費の抑制も求められていったといえば幾分聞こえはいいが、要するに鉄道が本来果たすべき安全輸送よりも収支均衡が優先したという話であって、全く褒められた話ではない。


 いずれにしてもこうした状況の中で、JR北海道はかなり思い切った収支改善策をとるため、このようなプレスリリースをせざるを得なくなった。具体的な線区の公表は秋口とされているが、実際の協議はすでに水面下で進んでいる。今日の新聞各紙には、おそらく協議対象候補となる石勝線夕張支線(新夕張-夕張)について、夕張市長がJRによる地域振興策への協力を前提に廃止を容認する姿勢を打ち出したと報じられた。

 当事者たる自治体からもこうした動きが出ること自体、鉄道の地位が低下したことの現れとも言えるが、夕張市をきっかけに、廃止か否かは別として地域交通体系のあり方を積極的に検討する動きが他地域でも加速していく可能性は高い。今後の動きから目が離せない。


 続く、予定。

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コメント

今は車であちこち走り回っていますが、70歳を過ぎたら早めに車を手放して、列車でのんびり旅をしたいと思っていました。
しかしどんどんローカル線がなくなってしまってはそれが叶いません。
勝手な願いですが、空いているローカル線が存続して欲しいと思っています。

投稿: OKCHAN | 2016/08/10 10:38

 OKCHANさん、コメントありがとうございます。
 私は鉄道で旅をするようになって30年近くなりますが、高校・大学時代の旅など、今の時刻表で辿ろうと思っても、列車や路線がなくなっていて再現できないものがほとんどです。
 ローカル線の旅情は捨てがたいものがありますが、景色の美しさは周辺人口の少なさと裏表の関係にあります。ファンとしての希望と、冷静な視点からの鉄道の生きる道は矛盾しており、難しいところです。

投稿: いかさま | 2016/08/14 19:20

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