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2016/10/05

2009年世界の旅【58】スウェーデン 入国審査の壁

これまでの経過は ⇒こちら。


 シカゴからストックホルムまでのフライト時間は8時間強、時差7時間を飛び越え、ストックホルム・アーランダ(Armanda)空港着は、10月22日午前7時45分になった。


 入国審査は前年のヨーロッパ体験から、特段の問題もなくスムースに通過できるものと踏んでいたが、そうはうまくいかなかった。私と同年輩かやや上に見える女性の入国審査官は、パスポートと私の顔をしばらく見比べた後、言った。

“スウェーデンへは何をしにきたのか。”
“観光です。”


 ここまではどこの入国審査でも行われるやりとりである。厳密には仕事だが、面倒なのでそう答える。これがよくなかったのかもしれない。まして、私のパスポートには、アメリカの学生(F1)ビザも綴られている。入国審査官は、矢継ぎ早に質問を浴びせてきた。

“どれだけ滞在するのか。”
“スウェーデンには宿泊しません。今日の夕方オスロに向かいます。”
“たった1日で何を観光するのか。”
友人に会いに来たのです。”
“どんな友人か。”
“以前に仕事上で知り合った友人です。すでに空港へ迎えに来ているはずです。”


 今この時間、アーランダ空港の到着ロビーに迎えに来てくれているのは、私の会社と10数年来の取引のあるG社のL営業部長である。しかもわが社では有名人だが、私が実際に会うのは今回が初めてである。友人などと言っては失礼にあたるのだが、入国目的を観光と答えた以上、これ以外に切り返しの方法はない。


 審査官は不審げな表情を隠そうともせず、行程表とこの先の航空券を提示するよう、半ば命令口調で私に告げた。私はセカンドバッグから行程表やEチケットのコピー、ホテルの予約情報を綴じ込んだファイルを出し、それを見せながら、執拗に滞在地での宿泊先などを質問してくる審査官に片言英語で必死の説明を試みた。


 ややしばらくの間、Eチケットの写しを穴が開くほど眺めていた審査官が、ようやく私のパスポートに入国印を押すまでおよそ10数分。数百人いたはずの乗客がきれいにいなくなった入国ゲートから出口へ向かうと、写真で見たことのある眼鏡をかけた小柄な初老の男性が、あたりを見回しながら立っているのが見えた。L部長である。私が近寄ってあいさつすると、
“あまりに遅いので、飛行機に乗り遅れたのかと思いました。”
と笑った。


 今日の訪問先は、アーランダ空港から西へ約150km、車で2時間ほどのところにあるヒェーピング(Köeping)という町である。ここにはG社製品の主力ユーザーの工場がある。
 丈の低い枯れた草地の真ん中を道路が突っ切っており、どんよりと曇った空もあいまって、ただただ殺風景な印象である。煙草を吸おうと窓を細く開けるたび、冷え切った空気が車内に流れ込んできた。


 陽気なL氏は、時折プカプカと煙草をふかしながら、私のこと、会社のこと、私の上司のことなどを次々と尋ねてきてくれる。しかも彼の英語は、私にとっては非常に聞き取りやすい。日本人相手の商売を長くしているということと、彼自身がノルウェー人で、英語を母国語としていないことが大きいのだろう。それでも聞き取れない部分がいくつもあり、相変わらず神経を研ぎ澄ませていなければならないのは情けないことではある。
 彼の吸っている煙草は、「PRINCE」という地元銘柄で、私はこれまでお目にかかったことがない。ちょうど煙草を切らしていたので、1本いただけないか、と頼むと、1箱ぽんと私にくれた。


 ヒェーピングの町に入ってすぐのホテルのカフェで少し休憩をとり、そこから5分ほどで、目的の工場に到着。工場担当者の案内で3時間ほど工場内部の見学と意見交換を行う。
 工場担当者の英語は、早口と訥弁のせいでどうにも聞き取りにくく、途中で何度もL氏の通訳の手を借りる。細かな数字や専門的な言葉も飛び出し、難解である。のちほど資料で補強できそうな部分は、諦めて適当に相槌を打つようにしていると、
“わかりましたか?”
と節目節目でL氏が私に確認の問いかけをする。私はそのたびに、わかった、と短く答えるのだが、L氏の眼が、次第に疑り深くなっていったような気がした。



 延々と、続く。



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コメント

こんばんは。

入国審査、大変でしたね
審査官の「あたり・ハズレ」みたいなのもあるのかな?と思ってしまうほど、
時々こわ~い方とかいらっしゃいますよね。。。

わたしも以前、インド入国の際、
バカ正直に「無職」と入国カードに書いてしまい、
散々疑われ、大変な目にあいました
それ以降は「人生、多少のウソも必要だな…」ということを学び、
何があっても「職業:普通の会社員、目的:ただの観光」で通しています(笑)

投稿: アケ | 2016/10/06 00:12

こんばんは。北欧の方にはまだ行ったことがないですね。寒くて妖精がいっぱいというイメージです、さてさて、どんな妖精さんがでてくるのかしら、楽しみ~ポケモンは妖精じゃないですからね、ちなみに。

投稿: poem | 2016/10/06 01:00

 アケさん、コメントありがとうございます。
 入国審査は国柄ということもあるのでしょうが、人によって差があるというのは、複数開いている入国審査の窓口を見比べていると感じますね。
 私も諸先輩方から「会社員・観光」についてはレクチャーを受けて、これまでそのとおり実践してきたのですが、アメリカの学生ビザを持った会社員がただの観光はさすがに不審でしょうか(笑)今後気を付けたいと思います。

投稿: いかさま | 2016/10/10 20:04

 poemさん、いつもありがとうございます。
 北欧は実はほとんど仕事オンリーで駆け抜けてしまったので、poemさんご期待の妖精がほとんど登場しません。あらかじめ白状しておきます。
 その代わりその先になるといくらか妖精らしきものが登場してきますので、ご期待ください。
 あ、ちなみにポケモンはヨーロッパでも共通語でした(笑)

投稿: いかさま | 2016/10/10 20:07

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