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2016/11/06

ローカル線の行方【4】 2015年度の輸送実績と今後の展開

 11月4日、JR北海道は2015年度の線区別収支状況を公表した。


 ⇒【JR北海道の公式プレスリリースはこちら】


 会社全体としての輸送密度は、5,094人/km/日と、前年度から6%改善した。札幌都市圏での利用増が主たる要因と考えられる。また、一連のトラブルの影響により本数が削減されていた特急列車の運転再開により、函館本線・室蘭本線・宗谷本線などでも改善の傾向がみられた。根室本線廃止が確定した留萌本線(留萌-増毛)も大幅に改善しているが、こちらは分母がそもそも小さいので、全体の底上げへの影響は小さいとみる。


 輸送量の増加に伴い鉄道事業収入は前年より12億円改善したにもかかわらず、全路線合計の営業係数は前年よりわずか1円ではあるが悪化した。修繕費や老朽車両の更新に伴う減価償却費などの費用の増加が主たる要因である。
 同時に公表された第二四半期の営業成績によると、北海道新幹線の開業効果により営業収入は増加した一方、費用の増加と経営安定基金の評価益の考え方により、経常損益は10億円の赤字となった。今後、台風被害による減収の影響が拡大していくことなどから、通期での経常利益予想も235億円の赤字と、当初計画からさらに60億円ほど悪化するとみている。


 すでに報じられているとおり、JR北海道は、今後単独での鉄道維持が困難な路線について今秋公表するとしていた。本来であれば今回、各線の経営状況と合わせて発表したかったのが本音ではないかと思うが、台風災害からの復旧などもあって遅れている。公式発表は今月末になるという。


 一方、新聞等の報道は、このところだいぶにぎやかになっている。先日の日高本線部分廃止報道に続き、10月25日には読売新聞が、「輸送密度200人未満の3路線3区間を廃止」と報じ、北海道新聞など他紙もこれに加えて「輸送密度2,000人未満の10区間について、いわゆる『上下分離方式』を念頭に置いた経営形態見直し」と報じた。
 以下、あくまで公式発表ではないが、詳細を羅列すると文字だらけになって目に悪いので、ざっくりとした地図を示す。
(地図はクリックすると拡大します。)


Hokkaido1981  まず、赤線で示した区間が、これまでに廃止が決定した区間、および今回廃止が報じられた区間である。いずれの区間も並行道路があり、バスでの代替に支障があるとは考えにくい。除雪や整備に費用はかかるが、鉄道を維持するよりははるかに安くつく。
 留萌本線(留萌-増毛)、石勝線(新夕張-夕張)は廃止が決定している。日高本線(鵡川-様似)については今回の報道からは外れているが、先日沿線自治体首長による廃止容認報道があった区間である。災害復旧との絡みもあり確定ではないが、費用の面からもこのまま廃止になる可能性が高いのではないかと思われる。


 青線で示した区間は、経営形態の見直しを検討するとされた路線である。輸送密度の点からは第二次特定地方交通線に相当し、協議が整わなければ廃止の可能性も含んでいると考えられる路線である。
 ただ私は、これまでのJR北海道のプレスリリースの内容から考えて、輸送密度500人未満を廃止対象として報じるのではないかと考えていたので、宗谷本線(名寄-稚内)、根室本線(滝川-富良野、釧路-根室)が青線側に回ったことについては、ある種の政治的な臭いを感じた。稚内、根室に向かう路線は国防上の理由から鉄道の必要性を訴える意見もある。だがそれならそれで国が考える問題であり、JR北海道に判断の一端をゆだねるべきではない。存廃議論以前の問題になる。


 新聞報道では、これらの路線に加えて、紫線で示した2区間についても協議の対象になる可能性があるとしている。この2区間は高速化事業に当たって設立された第三セクター「北海道高速鉄道開発」が施設の一部を保有している特殊な区間である。根室本線(帯広-釧路)は輸送密度2,000人を超えてはいるが、第三次特定地交線並みであり、こちらも何らかの支援が必要だと判断したとみられる。


 今回の対象からは外れているが、緑線で示した函館本線(函館-長万部-小樽)については、北海道新幹線の札幌延伸時に経営分離されることが確定している。
 以上を総合すると、あくまで公式発表ではないものの、15年後、JR北海道が自前で経営している鉄道路線は、最少の場合、北海道新幹線のほか、地図上に黒線で示した区間だけということになる。もはや北海道の骨格をなすとはとても言えない。「日本国有鉄道が経営している事業にかかる利用者の利便の確保及び適正な利用条件の維持」を定めている日本国有鉄道改革法の理念は崩れたとも言える。


 ただ、以前から書いていることの繰り返しになるが、この30年の間に鉄道を巡る状況が大きく変わったのは間違いない。道路整備の進捗により、自動車の保有率は向上した。ほとんどの鉄道路線に道路が並行し、バスの運行にも支障はない。ローカル線の主たる乗客である学生は、過疎化少子化により減少の一途をたどる。農業を主体とした産業構成を持つ北海道ではこれらがとりわけ顕著に推移した。


 これらの施策を進めてきたのはすべて国である。ローカル線の存廃問題は、こうした背景を受けて鉄道の役割が都市圏・都市間輸送に特化していったことの当然の帰結として、みたび表面化した。
 ちなみに、国鉄再建法に基づく特定地方交通線として廃止された路線を、地図上に灰色の細線で表してみた。あの当時、これだけ多くの路線が廃止され、今回さらに多くの路線が存亡の危機に立つ。北海道の置かれた環境の厳しさを反映している。


 分割民営化から来年で30年になる。旅客6社のうち4社が株式上場を果たし、JR貨物も上場に向けた準備をを進めている一方、四国・北海道の2社は苦しい経営が続く。
 廃止対象路線を抱える地方自治体が、地域にとって最適な交通体系を考えていかなければならないのは言うまでもないが、分割民営化の功罪を検証し、今後の地方における交通体系整備の方向性を明確に示すのは国の仕事である。それでなければ今後の議論は進まないし、地方の活性化などおぼつかないのではないかと思う。


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