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2017/05/11

国鉄改革を復習してみた【3】その分割は正しかったのか

 国鉄改革復習、第3回。その1 その2


 国鉄改革における「分割」は、大枠で観れば旅客鉄道会社の地域分割であるが、詳細にみると、鉄道輸送以外の分野については、通信事業を担うJR通信(のち日本テレコム→ソフトバンクテレコム)、情報処理事業を担うJRシステム、研究開発を担うJR総研などに機能分割されている。
 また、JR貨物については、貨物輸送に関する「機能分割」でありながら、旅客鉄道会社が保有する線路上を使用料を払って走る、いわゆる「上下分離」の一類型とみることもできる。


Img_20170511_0001_new  鉄道施設の保有者と列車運行会社を分離する上下分離方式は、ヨーロッパにおける国有鉄道の改革において多く採用された。しかし、イギリスでは施設保有会社のずさんな維持管理が大事故を招き、運営体制の見直しを余儀なくされた。フランスでもダイヤ編成の不都合から、いったん分離されたインフラ部門と運行部門を統括・調整する組織が設置されて実質的に再統合されている。
 我が国の新幹線などは、一般の在来線から独立した形で、車両・施設などを一体の「システム」として運営、整備されており、上下分離方式には最も不向きであると考えられる。


 ところが、JR貨物の例を別にして、国鉄改革に当たって上下分離方式が唯一採用されたのが、実はこの新幹線であった。それが今は亡き「新幹線鉄道保有機構」(以下「機構」)である。


 国鉄分割民営化当時、東海道・山陽・東北・上越各新幹線の施設については、機構が一括して保有し、運行主体となる本州3社に貸し付ける仕組みが取られていた。機構はあくまで施設の保有だけで、維持管理は運行会社がおこなう点は欧州と異なる。
 本州3社は分割民営化に際し、国鉄の累積債務の一部を負担することになっていたが、機構も各新幹線の資産価値相当分プラスアルファの債務返済を負担することになっており、その返済には運行を担当する本州3社からのリース料がそのまま充当された。


 この制度のミソは、リース料の比率は各新幹線の簿価ではなく、収益力に応じて設定されることにある。しかもその比率は2年ごとに見直されるルールになっていた。これは本州3社の本州3社間の収益バランスを図り、分割民営化の歪みを隠すための仕組みであると理解することができる。
 ただ一方でそれは、各旅客会社が新幹線の収益向上を図る努力が、リース料増大という形で減殺されるリスクをはらんでいた。また、自前施設でない新幹線施設を旅客鉄道各社は減価償却することができず、収支構造は歪み、資産の明確化もできない。折からのバブル景気に乗って順調に業績を伸ばし、株式上場を目指す本州3社にとって大きな障壁となった。


 この悩みは、最も施設が老朽化していながらその収益力から最も高いリース料を設定された東海道新幹線を抱えるJR東海において顕著だった。JR東海の主張により、1989年のリース料比率見直し時にその率は固定され、2年後の1991年には、JR各社に新幹線施設を譲渡し、わずか4年で機構は解散することになる。債務の引き受けと引き換えに新幹線施設を所有することになった本州3社は、2006年までに完全民営化を達成した。


 本州3社の完全民営化は、国鉄改革の成功面を強調する一方で、三島会社との経営基盤の格差を表面化させた。
 特にJR北海道やJR四国については、それぞれJR東日本・JR西日本に吸収させるべきとの意見が以前からあった。単体で3,000億円を超える経常利益をあげるJR東日本とすれば、JR北海道の100億円の純損失はとるに足らない金額かもしれないが、現在のJR東日本は純民間会社である。国の施策がどうあれ、株主が反対すればJR東日本に救済する義務はない。それが完全民営化の事実だし、そもそもの話をすればスリムな機構で地域密着型の運営をおこなうとした国鉄改革の趣旨に反する。つまるところ、国自ら分割民営化の失敗を認めるようなものである。


 だとすれば分割民営化の「正解」はいったいどこに求めたらよいのか。例えばNTTや日本郵政のような「持株会社方式」にして、グループ会社間の収益や資産の移動を容易にするような方法も唱えられている。だが国鉄改革当時、持株会社方式は独占禁止法により禁止されていた。その点はNTTも同じだが、もともと全国一本でスタートしたNTTとJRでは条件も異なるし、今となってはどうにもならない。


 収益調整機能が失われ、本州各社を含めたJR再編ができないのだとすれば、JR北海道やJR四国の経営を健全化させる方法は、それぞれの会社そのものを再度分割・再編するしかないような気がする。
 そうなると方法のひとつとして、上下分離方式の導入が考えられる。高速輸送・大量輸送が要求される幹線での導入には不向きだが、輸送密度の低い地方ローカル鉄道での導入は増えている。JR北海道が今般、地方路線の今後の運営形態の一例としているのもこの方式である。鉄道施設の所有が地方自治体に属することになれば、財政負担は必然的に増加するが、鉄道というインフラのその地域における必要性を図るうえで、その費用対効果はよく検証されてよいと思う。


 先日、ある集まりで同席させていただいた某自治体の偉い方が、「片やで鉄道の廃止に反対しておいて、職員の札幌出張はたいてい車か高速バスだ。そういうところから改めないと説得力がないと言われても仕方がない」と話されていた。JR北海道の場合、閑散ローカル線の利用状況はその程度の努力ではいかんともしがたいところまで来ているが、鉄道の必要性を考える上では重要な視点だと思う。




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