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2017/05/18

JR北海道の決算と利用状況

 5月9日、JR北海道は平成28年度決算をプリスリリースした。


 ⇒JR北海道によるプレスリリースはこちら


 営業収入については、台風被害による減収があったものの、北海道新幹線の開業と札幌圏の利用増などにより55億円の増加となった。その一方、営業費用については、主として北海道新幹線に関する修繕費・減価償却費の増加などにより107億円増加した。
 これにより営業損益は前年より51億円悪化して498億円の赤字となった。これを補てんするのが、国鉄分割民営化時に積み立てられた経営安定基金の運用益なのだが、前年度に資産の評価益を一部実現させた反動により大幅に減少し、112億円減少した。その他の営業外損益も含め、経常損益は過去最大の188億円の赤字となった。


 今回のプレスリリースでは、合わせて各路線・区間ごとの輸送密度も公表された。28年度は8月下旬から9月にかけて北海道を襲った台風の影響により、10月ないし12月まで運休となった区間がある。このため、4~3月の通年実績と、台風被害による利用減の影響が出る9~12月を除く8か月間実績の2種類が公表されている。影響度合い等を加味しながら見てみる。


 北海道新幹線については、前年度から大幅に改善し、通年実績で5,638人/km/日と、前年度の海峡線実績比151%となっている。ただしこれについては、開業直後のフィーバーに下支えされた実績であり、年度後半になるにしたがって利用状況が低下してきていることは以前にも書いた。
 ⇒過去記事「北海道新幹線、満1歳の成績表」


 JR北海道が昨秋、「単独では維持することが困難な線区」として公表した、輸送密度2,000人/km/日の区間については、通年ベースでみると押しなべて前年度より輸送密度が減少している。増加が見られたのは、富良野線(富良野―旭川)と、廃線報道でお名残り乗車が増えた留萌本線(深川―増毛)のみである。石北本線(新旭川―網走)は、台風の影響を除いた期間の実績でも前年比14~15%の減少と、旅客離れは深刻である。


 一方、輸送密度2,000人以上の路線は、台風の影響を大きく受けた石勝線・根室本線(南千歳―帯広―釧路)を別にすると、おおむね前年並みから増加の傾向にある。特に札幌近郊の区間では顕著に増加しているが、その中にあって減少傾向を示している区間がある。室蘭本線・千歳線(室蘭―苫小牧―白石)と、函館本線(札幌―旭川)である。


 室蘭本線の場合、長万部―東室蘭では通年で3%程度の増加となっており、函館本線(函館―長万部)と併せて、新幹線効果が波及したとみることができる。しかし、対札幌の利用度が高まる室蘭―苫小牧では逆に3%の減少となっている。
 また、苫小牧―白石ではほぼ前年並みだが、新千歳空港―南千歳が前年比4%の伸びを示していることをふまえると、石勝線特急運休の影響を差し引くと、札幌対苫小牧方面の旅客は大きく減少していると考えられる
 

 函館本線(札幌―旭川)の場合は、特急依存度の高い石北本線や宗谷本線の利用減の影響を受けるが、この両線の減少分すべてが影響したとしても、差し引きでなお280人、この区間では輸送密度が低下していることになる。札幌都市圏の他区間の利用状況を考えると、特に札幌対岩見沢以遠の都市間輸送が減少していると推測できる。


 札幌―苫小牧・室蘭、および札幌―旭川はいずれも高速バスとの競合が激しい区間である。特に前者はSきっぷの廃止と割引切符の大幅な見直しによりJR特急の利便性が大幅に低下している。後者もSきっぷフォーの廃止により選択の自由は減殺された。両区間の利用減にこのことが少なからず影響しているのではないか、という気がする。
 北海道中央バスの29年3月期決算短信によると、具体的な数値の記載はないが、都市間高速バスの利用者は増加したという。私は単身赴任先の旭川と札幌の間を高速バスで移動する機会が多いが、昨年春以降、高速バスの混雑度が上がったように感じる。日曜の夕方など、1~2本程度積み残される頻度も高くなった。


 都市圏輸送と並んでJR北海道の旅客増の両輪となるはずの都市間輸送は、人口の札幌圏一極集中化が進む中で大幅な旅客増が望みがたい状況にある。さらに、安全対策強化の名のもとに実施されたスピードダウンや、車両不足を賄うための減便や区間短縮など、今後も厳しい状況に置かれるのは間違いない。地方ローカル線は言うまでもなく、2年目を迎える北海道新幹線も経営的には決して明るい立ち位置にはない。
 国鉄分割民営化から30年、当初から厳しい経営が予測されたJR北海道の今後の在り方が大きく問われる分岐点に来ているといっても過言ではないだろう。




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