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2017年10月

2017/10/29

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【4】 大糸線と信濃大町の夜

これまでの経過は ⇒こちら


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 糸魚川からは15時14分発の大糸線、南小谷行き普通列車に乗る。
 大糸線に乗車するのは、高校2年生の夏、友人との3人旅以来である。キハ120形ディーゼルカー1両の車内はほどよく空いており、ボックスシートに足を投げ出してのんびりと揺られる。姫川に沿って山の中を走る線路は、過去何度も雨や地震などの災害で不通になった経歴を持つ。カーブが多く、川面と線路の高低差が少ない。軽快なディーゼルカーも能力を持て余したようにのんびりと走っていく。


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 およそ1時間で到着した南小谷で、ホームの反対側に停車していた信濃大町行き普通列車に乗り換え。ここからJR東日本の路線になり、電化区間となる。通路を挟んでロングシートとボックスシートが並ぶ風変わりなE127系電車2両の車内は、ここまで乗って来た列車ほどではないが、やはり空いている。電化路線になったものの、相変わらず線形は悪く、列車はのんびりと走っていく。


 南小谷から信濃大町にかけては、スキー場が多い。信濃森上、白馬など、優等列車の起終点駅として聞き馴染みのある駅が続くが、乗客の動きは少なく、ひっそりしている。
 東神城から信濃木崎にかけては、右手に仁科三湖と総称される三つの湖を望みながら走る。ヤナバスキー場前臨時駅あたりは、線路を挟んで青木湖とスキー場が向かい合う。湖を望みながらゲレンデを滑降するなどさぞかし楽しい光景だろうと思うのだが、のちに調べると昨年から営業休止となっている。主たる用途を失った臨時駅の行く末も気にかかる。


 小さな中綱湖を経てしばらく走り、最後の木崎湖の周りには公園やキャンプ場も見える。いずれにしても季節外れで人の姿は少ない。松本-南小谷間のいわゆる「大糸南線」には、特急列車や臨時スキー列車が多く乗り入れていたが、糸魚川側からの乗り入れ列車はここしばらく設定されておらず、松本側からの列車も往年に比べると本数は減ったように思う。スキー人口自体も減少傾向だと聞くし、スキーにせよキャンプにせよ、今やアクセスの中心は自動車である。


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 17時15分、信濃大町着。多くの乗客が反対側に停車している松本行きに乗り継ぐ。私は改札を出て、山小屋風の駅舎を背に、日の暮れかかった道を3分ほど歩き、いかにも由緒ありげな構えの旅館「竹乃家」にチェックインした。
 いたってシンプルなフロントで手続きを済ませて部屋へ入ると、8畳ほどの和室で、トイレもシャワーもないが、体を休めるだけなら十分である。寝る前に入った大浴場は、6〜7人ほどがゆったり入れる浴槽があり、他に客がいないのを幸い、足を伸ばしてゆっくり浸かった。全般に古びているが、清潔感のある宿である。


Dscn6559  部屋に荷物を置いて、夕食と明日の朝食を物色がてら周辺を散歩する。宿から5分足らずのところに大きなスーパーがあるが、まだ18時前で、部屋に引きこもるにはもったいない。
 駅前付近にはアーケード街が伸びている。地方都市にありがちなシャッター街かと思いきや、意外に営業中の店が多い。若者向けの飲食店も目立つ。


Img_2959  「大町名店街」と看板の上がった小路に入ると、昭和の風情がぷんぷんと漂っている。こちらも半数ほどの店は営業中で、高校生や子連れの姿も見える。
 小路の入口近くにあった「ハングリーボックス・ユキ」で、生姜焼き定食を注文。品数、ボリュームともに十分で、700円とコストパフォーマンスも高い。


 食後のコーヒーを200円で追加して、昔ながらの軽食喫茶といった雰囲気のお店で、私の母くらいの年齢でないかと思われる気さくなママさんと少しお話しした。
 45年ほど大町名店街で営業しているそうで、しばらく前まではシャッター街と化す寸前だったとのこと。その後、市のバックアップもあり、地元のみならず大阪からの移住者が店を開くなど、少しずつ活気が戻ってきているという。こうした人たちが核となって、名店街の活性化に積極的に取り組んでいるらしい。立山黒部アルペンルートという観光地を控えた地の利もあるのだろうが、観光客にも評判や良いそうである。


 「私は長いことここでやってるからわからないんですけどね」
 ママさんは淡々とそう語ってくれたが、その表情がどこか嬉しそうだったのがとても印象に残った。



 続く。



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2017/10/25

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【3】 北陸新幹線に翻弄された2つの第三セクター鉄道

これまでの経過は ⇒こちら


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 国境の長いトンネルを抜けると、窓の外に雨が当たった。長岡行きの普通電車を六日町で降り、北越急行ほくほく線の電車に乗り換える。ここは初乗り区間である。たった1両の電車は「ゆめぞら」のヘッドマークを付けており、日曜日になると天井に様々な映像を映し出すらしいが、生憎今日は木曜日である。転換クロスシートの並んだ快適な車内に乗客は5~6人ほどとまばらで寂しい。


 ほくほく線は、国鉄再建法により工事が凍結された北越北線を引き継ぎ、第三セクター、北越急行により、1997年に開業した路線である。北陸新幹線の開通めどが立たない中、東京と北陸を結ぶ短絡線として高規格で建設され、越後湯沢で上越新幹線と接続する特急「はくたか」が頻繁に行き交った。
 しかし、2015年の北陸新幹線金沢開業により、「はくたか」は全廃、後にはローカル輸送だけが残された。これまでの収益を積み立てたことで、今後30年程度の運営は可能だというが、沿線人口は少なく、厳しい環境に置かれることは間違いないとみられる。


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 前方を眺めていると、立派なコンクリートの道床が伸びている。カーブも緩やかで、何しろトンネルが多い。この路線を「はくたか」は最高時速160kmで快走した。現在、普通列車の最高時速は110kmに抑えられているが、犀潟までの59.5kmを57分と地方ローカル線としては破格の速さで、乗り心地もすこぶるよい。ただ残念なことに乗客は一向に増えず、十日町、まつだい、ほくほく大島あたりで1~2人が入れ替わった程度で、終始空いていた。


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 犀潟で30分ほどの待ち合わせののち、JR信越本線直江津行き普通列車に乗る。色は塗り替えられ、座席も新しいものに取り換えられているが、国鉄時代に製造された115系電車である。もうロートルの域に入る車両だが、なんとなく落ち着いた気分になる。直江津までわずか2駅、8分の乗車が残念に思える。


Dscn6522  直江津からは、12時44分発のえちごトキめき鉄道・妙高はねうまラインの妙高高原行き普通列車に乗り換え。ET127形と呼ばれる電車はJRから譲り受けた車両である。2両編成の車内は、ロングシートの座席が6割方埋まっており、途中駅での入れ替わりも多い。直江津、高田、新井とまとまった街が続くこともあるのだろう。それでもこちらも北陸新幹線の開業に伴い、並行在来線としてJR東日本から分離された第三セクター路線である。


 ここはもう25年前に乗車済みであるが、新幹線上越妙高駅が設置されるにあたり、在来線との乗換駅とするため、旧脇野田駅付近の路線が西側に120m移設された。営業キロは変わっておらず、わざわざ乗り直すほどのことでもないのだが、近くまで来ていることだし、様子だけは眺めておきたい。とは言っても、元の風景をしっかり覚えているわけでもない。


Dscn6525  南高田の先で住宅街が途切れると、線路がやや右へカーブしていく。元線路らしき路盤が分かれていくが、周囲の農地に溶け込んでわかりにくい。高架をくぐって新幹線の西側に回り込み、上越妙高に着く。上越妙高駅の駅前広場付近にあったらしい旧脇野田駅も、元の線路の跡も、造成工事が進んでおり、痕跡はわからない。
 次の北新井で下車。200mほど離れて並走する国道にはショッピングセンターやコンビニなどが並び、車の行き来も多いが、駅の周囲は住宅も少なく、すぐ近くのパチンコ店だけがアンバランスに大きい。


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 上り列車で直江津に引き返し、同じ並行在来線分離路線のえちごトキめき鉄道・日本海ひすいラインの泊行き普通列車に乗る。一見電車かと見まがう真新しい車両はディーゼルカーで、たったの1両編成。電化区間だが、県境を越える路線で乗客も少なく、運行コストを削減するための施策らしい。ここもかつては日本海縦貫線の一翼を担う区間だったのだが、ローカル輸送の厳しさを物語っている。北越急行といいえちごトキめき鉄道といい、特急列車による都市間輸送の需要を失った鉄道の未来は、厳しい。


 続く。



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2017/10/22

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【2】 上越線・2つのトンネル駅

これまでの経過は ⇒こちら

 湯檜曽駅に上り列車で降り立つと、ホーム1面に線路1本だけの単純な駅風景であるが、よくよく考えると離れて走っていたはずの下り線のホームがないことに気付く。実はこの地点では、下り線はまだ新清水トンネルの中にあり、下り線のホームはそのトンネルの中にある。


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 あらためて湯檜曽駅の小さな駅舎に入ると、左手に上りホームへの階段があり、右手に地下道のようなトンネルが伸びている。これが下りホームへつながる通路である。通路の50mほど先が1面1線の下りホームになっており、ホーム左手の先には新清水トンネルの入口が見える。次の下り列車は9時52分で、1時間ほど時間があるが、北へ10分ほどの湯檜曽温泉で湯に浸かるにはやや余裕がない。この電車を逃すと、次の下り列車は約4時間後である。


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 そこで、湯檜曽駅前のバス停から、9時08分の谷川岳ロープウェイ駅行きの関越交通バスに乗る。2分ほど遅れてやってきたバスには、見るからに登山客とわかる数人の他に、中学校の先生と女子生徒と思われる2人連れが乗っている。
 バスは先ほど眺めた上越線上りの鉄橋下をくぐり、湯檜曽温泉街を抜けると、山間の道を湯桧曽川に沿って登っていく。勾配はかなりきつく、カーブも多い。道路の形も悪い。


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 不意に視界が開け、右手に大きなドライブインが見えると、土合駅前に到着。わずか6分ほどである。ループ線をくるりと回って走る上りの電車と同じ所要時間である。
 広い駅前広場を持ち、三角屋根が山小屋風の土合駅舎は、立派な改札口を持っているが無人駅。周辺に民家はなく、1.5kmほど離れた谷川岳ロープウェイ利用者をはじめ、登山客だけを対象とした駅のようである。


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 土合は湯檜曽と同じく、上り線が地上にあり、下り線は新清水トンネルの中という構造の駅である。改札を抜けると、上下線のホームへの通路は左右に分かれている。向かって右手に少し歩くとすぐ上り線ホームへの出口があり、その先にはすぐ、先ほど列車で通過した地上の上りホームが見えている。


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 これに対して下りホームは、通路をいったん左に進み、すぐにまた左に折れて、駅舎の横を通り抜けるようにして長い通路を歩く。24段の階段を降りて、先ほど通って来た国道291号線と湯桧曽川をまたぐと、山の中へ入る。その先には長い階段が待っている。階段のステップにはホームからの段数が表示されているが、その段数実に462段、ビルならば20階以上に相当する。「日本一のモグラ駅」の愛称にふさわしい。


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 階段は5段ごとに踊り場が設けられ、中間には何箇所かベンチも設けられている。脇にはエスカレーターを取り付ける計画もあったらしく空間があるが、設置されないまま現在に至っている。バリアフリーのかけらもない駅だが、利用客が登山客だけなのだからそれで問題はないのだろう。
 私の足でゆっくり下って10分、ようやくホームへ辿り着く。駅舎との標高差は70mにも達している。私は階段を下る側だったからまだよいが、東京方面からの登山客は、山に登る前に駅舎への階段を登るだけで嫌になるのではないだろうかと思う。


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 ホームはトンネルの中にやや張り出すように設けられている。もともとは本線の他に通過線があり、列車の追い抜きも想定されていたようだが、現在のホームはもともとの本線上に新たに設けられたらしく、ホーム下に線路だった名残りが見て取れる。
 ホーム上には写真を撮り合っているグループの姿もあったが、話を聞くと「モグラ駅」を見学に来ただけで列車には乗らないと言う。ほどなく9時56分発の長岡行き普通列車が4両編成で到着し、校外活動と思われる学生が大挙して降りてきた。すっかりガラガラになった車内に私は乗り込み、北を目指す。


 続く。



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2017/10/19

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【1】 上越線・2つのループ線

 前回の続き。


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 10月12日木曜日、早朝にネットカフェを抜け出し、高崎駅前のファミリーレストランで朝食を取った後、私は7時37分発の上越新幹線下り「たにがわ401号」で越後湯沢へ向かった。折り返して上越線上り水上行き普通列車に乗る。新潟・群馬県境を越える普通列車は1日5往復しかなく、かつて東京と新潟を結ぶ特急列車が頻繁に往来した上越線の面影はない。4両編成に50人足らずの乗客が揺られる普通列車の雰囲気は、地方ローカル線のそれと変わらない。


Photo  この区間の上越線は複線電化の堂々たる路線だが、少々特殊な形態になっている。普通の複線区間は2本の線路が並列しているが、地形と建設年次の関係で、上りと下りの線路が大きく離れているのである。
 最初に建設された上り線は、谷川岳の中腹を清水トンネル(9.7km)をはじめ7つのトンネルで抜ける。急な勾配を越えていくために、2つのループ線が設けられている。一方、複線化の際に増設された下り線は、13.5kmの新清水トンネルと3.1kmの新松川トンネルの2本のトンネルで貫き、ループ線はない。


 複線区間では、上り・下りの線路それぞれを通らなければ「鉄道を全部乗った」などと言えないのかもしれないが、細かいことを言い始めるときりがない。札幌駅の1番線から10番線まですべてを通過したかと言われると私も自信がない。
 私のルールでは、どちらか片方を通過すれば、その路線を乗車したと整理している。上越線は29年前、下り列車で全線通過しており、乗り直す必要はないのだが、上下線がこれほどまでに大きく離れている路線は珍しく、しかもループ線を挟んでいるとなれば、その風景には非常に興味がある。


 スキー場が沿線に点在する区間を抜け、越後中里を出ると、下り線が右に向かって離れていく。こちらの上り線は、しばらく直進した後、右に大きくカーブをはじめ、ほどなくトンネルに入る。さらにぐいぐいと右に曲がっていく感覚がわかるが、トンネルの中で景色は見えない。いったんトンネルを出るが、すぐにまたトンネルに入り、それを抜けるとほどなく次の土樽に停車する。交点はトンネルの中で見えず、遠心力に振られ続ける感覚だけがループ線の存在を伝える。


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 土樽を過ぎると、2本の線路はほぼ同時に長いトンネルに突入する。上り線の清水トンネルを抜けると、土合。ホーム1面だけの駅に、まばらな登山客が下車する。
 土合を出ると、列車は2本のトンネルを抜け、左にカーブを始める。しばらく進むと、進行方向右手の眼下に、これから通る線路が見えた。再びトンネルに入り、今度は左にぐいぐいと曲がっていく。2本目のトンネルを抜けた地点が、先ほど眺めた線路になる。列車はほどなく湯檜曽に停車。ここで列車を降りる。


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 駅舎を出て土合方面に向かって少し歩くと、ループ線が交差する地点を道路から見ることができる。トンネルを抜けて湯檜曽駅に向かう線路の奥側上方の山腹に、手前の線路と直交するもう1本の線路が見える。山の中で線路はぐるりと円を描き、急な勾配を距離を稼ぎながら登っていくのである。山岳路線らしい、ダイナミックな眺めである。


 続く。



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2017/10/16

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【0】 序章

 前回のブログで書いたとおり、この週末、私は鉄道乗り歩きの旅に出た。北陸・東海地方に残る未乗路線を一気に片付けるためであるが、旅立ちの前から私はいつもの旅と違い、少々居心地の悪い気分になっていた。


 それは、今回乗車する予定の中に、「観光路線」が非常に多いことである。
 鉄道の使命はいうまでもなく人や貨物を運ぶことである。すなわち生活の基盤のひとつとして存在していることが多く、列車に乗り込んでくる地元の人々の表情や動き、会話の断片から、さまざまな息遣いが伝わってくる。


 ところが今回は、観光地へのアクセス、あるいは列車そのものが観光要素となっているものが非常に多い。もちろんこれまでにも、ケーブルカーなどそうした路線に乗ったことがないわけではない。だが私は、これまで鉄道の乗りつぶしに専念するあまり、周囲もうらやむような観光名所の手前まで迫りながら、ちらりとも眺めることなく引き返してくるという愚行を繰り返してきた。数え上げればきりがないが、ここ5~6年の間だけでも、出雲大社、東尋坊、延暦寺、鞍馬寺、高尾山と、次から次へと出てくる。


 こうした反省を踏まえて、ここ最近はちょっと足を延ばせば訪問できそうなところは、少しの時間であっても楽しんでくることを心掛けていた。3年前の伊豆半島や2年前の草津温泉、昨年の竜飛崎などがそうである。
 今回の最大目的である立山黒部アルペンルートなどは、コースそのものが一大観光地である。脇目も振らずに走り抜けては、いよいよ頭がおかしくなったかと疑いをかけられかねない。


 そこで私は、こうした状況をふまえて、行程内にいくばくかの余裕時間を盛り込み、気になるところがあれば少し便を落として散策を楽しんでみようと考えた。出発直前まで行程をこねくり回していると、もうひとつ天気のことが気になり始めた。


 これまで私はあまり気にしたことがなかったのだが、あらためて振り返ってみると、鉄道の乗り歩きに出掛けて雨に降られた記憶が数えるほどしかない。それも3日ないし5日間の1回の旅で1日だけで、行程中1度も雨に当たらなかったことの方が多い。
 いくらかでも観光要素がある今回、私は出発前から天気の動向をかなり気にしていた。だが残念なことに、週間予想の段階から雨予報の連続である。出発直前になっても予報が変わる気配はない。


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 私は自分のことを、「晴れ男」だとは言わないまでも、「曇り男」程度ではあるのではないかと自負している。その私が行動を開始するのだから、少なくともそうひどい天気にはならないのではないか。そんな期待と祈りを込めつつ、10月11日水曜日、仕事が終わった後、私は旭川空港からJALの羽田行き最終便に乗り込んだ。幸いなことに今回は仕事の邪魔は入らなかった
 羽田空港からは品川、上野と電車を乗り継ぎ、日付をまたいだ12日1時前、群馬県の高崎まで辿り着いた私は、ネットカフェに潜り込んで明け方の出陣を待つことになった。


 続く。



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2017/10/10

1年越しで北陸へ

 私の住む旭川は、このところあまり天候に恵まれておらず、スカッと晴れる日が少ない。気温もここ数日はそれほどでもないが、先週は低い日が続いた。10月に入ってすぐにストーブを点けるなど、経済的観点からもできれば避けたいところなのだが、それでも10月に入って2日ほど、我慢できずに夜の1時間ほどポータブルストーブの世話になった。


 それでも昨年に比べるとまだ良いかもしれない。昨年は8月下旬から9月初めにかけて立て続けに台風が襲い、町や農地を呑み込んだ。その余波は10月を過ぎても続き、私も私の部下も心身ともに疲弊しきっていた。そのあおりで、私が9月に予定していた立山黒部アルペンルートへの旅はキャンセルを余儀なくされ、10月末の東北へと変更になった。それはそれでちょうど紅葉の時期にぶつかったりしてなかなか楽しい旅になったのだが、高倍率の抽選をくぐり抜けて当選した黒部ルート見学会をフイにした辛さは残った。


 私は今年もその抽選会に何度か応募をかけたのだが、残念なことに今年は当選の通知は舞い込まなかった。そこへ飛び込んできたのが、「関電トンネルトロリーバスの電気バスへの変更」というプレスリリースである。

 ⇒関西電力のプレスリリースはこちら

 「トロリーバス」と乗り鉄に何の関係があるのだ、という話になるが、一般のバスと異なり、トロリーバスは路面電車などと同様、空中に張られた架線から電気を取り入れて動力としている。レールはないが、架線のないところを走ることができないことから、鉄道事業法においては「無軌条電車」と呼ばれるれっきとした「鉄道」なのである。このあたりの一連の話は、つい先日、NHKの「ブラタモリ」でタモリの口から語られていたので、ご覧になった方もあるだろう。


 昭和中期には、東京・大阪をはじめ大都市の市内交通にも用いられながら、内燃式バスや自動車の発達とともに姿を消したトロリーバスが、立山黒部アルペンルートに2路線のみ残っているのは、内燃式バスと違って排気ガスを出さず、環境にやさしいためである。けれども、扇沢-黒部ダム間を走る関電トンネルトロリーバスは、導入から20年余りを経過したトロリーバスの更新に当たり、機動力と経済性に優れた充電式電気バスを採用することになった。
 もうひとつのトロリーバス導入区間である、室堂-大観峰間の立山黒部貫光は今のところ安泰だが、こちらも車両導入から20年余りを経過しており、次回車両更新時にはどうなるかわからない。


 こうなると乗ってみたくなるのが鉄道好きとしての血のなせる業である。本当ならば黒部ルート見学会に当選して、黒部峡谷鉄道との周遊ルートを組みたいところなのだが、大学合格より確率の低い見学会当選を待っていてはチャンスを逃すことにもなりかねない。おまけに来年は関電トロリーバスのラストイヤーと称してさまざまなイベントが組まれる予定もあり、その筋の人たちでごった返すあまり愉快でない状況になる可能性もある。


 10月末までに取得しなければならない夏休みはまだ残っており、仕事上小さな問題は散在しているものの、幸いなことに昨年のような大きな問題には直面していない。仕事の動きを横睨みしながら休暇の取得を決めたのが先月の下旬。出掛けるからには北陸地方に残る未乗路線も片付けたいと、時刻表をひっくり返しながら行程が固まったのがつい数日前。今年も11月中旬に嵐の到来を控える嫁の許可もいただき、出発を待つだけの身となっている。


 そんなわけで、「2009年世界の旅」は再度お休みし、次回からはトロリーバスを含めた北陸乗り歩きの旅を綴ろうと思う。邪魔が入らなければ、の条件付きではある。ここ1年あまりでプライベートの旅行や業務上の視察研修旅行など、遠征計画を2度にわたって潰されているからまだ100%の油断はできない。ただ日頃の行いには細心の注意を払っており、あとは無信教の私であっても神の良き思し召しを待つしかない
 続く・・・・・・のか?



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2017/10/03

2009年世界の旅【81】ベルギー(2) がっかり名所のびっくりイベント

 これまでの経過は ⇒こちら。


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 退屈な小便小僧を眺めた私が踵を返しかけたところに、市の職員と思われる、作業着姿のおっさんが2人現れた。小僧を囲む柵を開けて中に入って行き、ひとりがしゃがみこんだ。直後に小僧の放っていた小便が止まったところをみると、ちょうどその辺りに水道の弁があるらしい。もうひとりの作業員は、小便小僧に向かって梯子を立てかけ、登っていった。何かをしている様子だが、背中に遮られて見えない。


Pb043991  作業員が梯子を降りると、姿を現した小便小僧は、何と赤い上着に紺色のズボンをまとい、ご丁寧に背中には水色のリュックサックまで背負っている。
 小便小僧といえば、常に全裸のイメージが非常に強いが、実はかなりの衣装持ちだそうである。衣装はグラン・プラスに面した「王の家(La Maison du Roi、市立博物館)」に保管されており、定期的にこうして着替えをさせてもらっているという。


Pb043979  見物客の姿が少しずつ増えている。作業員が小僧を旗のカーテンで隠す。近くにいた小柄な老紳士が、“もう少しここでお待ちなさい。この後、偉い人が来てセレモニーが行われますよ。”と教えてくれた。観客はさらに増え、テレビ局のクルーらしき一団も現れた。私はもうアントウェルペンはどうでもよくなった。


Pb043986  12時半になり、小僧の前の小さな交差点が人で埋め尽くされたころ、警察に囲まれて、町の偉い人と思われる一団が現れた。みな礼装に身を包んでいる。一団の中ほどにいる小太りの白髪の老紳士が中心人物らしい。彼が小僧を背に市民の前に立ち、演説を始めた。時々歓声とともに拍手が沸く。
 彼の演説が終わると、カウントダウンとともにカーテンが開かれ、先ほどの着飾った小便小僧が姿を現した。観客からひときわ高い歓声が上がる。除幕の祝いに、小便小僧が観衆へ向けて豪快に小便を放つと、観客は大喜びである。


Pb043976  誰からともなく合唱が始まった。何の歌かは全くわからない。しかし、町の偉い人らしき一団をはじめ、集まった観衆も声高らかに歌っているところを見ると、市や町の歌とか、「小便小僧の歌」といった、愛唱歌のようなものなのだろうと思う。ちょろちょろとしたたる小便が、歌のサビに合わせて何度も勢いよく飛んだ。


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 私はこの予期しなかったイベントを十分に堪能した後、チョコレートショップの店先で売っていたチョコバナナをかじりながら駅へ引き返し、13時40分発の列車でブリュッセル国際空港へと向かった。列車の側面をポップな落書きが無残に汚している。昨今日本でも同種の事件が報じられることが多いが、心無いことだ思う。


 ベネルクス三国としばしばひと括りにされるベルギーは、言語的にも地理的にもフランスとオランダの中間に位置しており、現在に至るまで文化の違いによる地域間対立が絶えないという話を取引先で聞いた。その一方で、欧州連合の主要機関がここを本部としているように、ブリュッセルという都市、あるいはベルギーという国そのものが、統合あるいは協調のシンボルであるとも言える。
 そうした緊張感の中にありながら、ベルギーと言う国は、グローテ・マルクトの夜、取引先との1日、そしてブリュッセルの喧騒と、私に不思議な安らぎを与えてくれた。私は、これまでほとんど印象のなかったベルギーと言う国がとてもいとおしくなった。


 空港の出発待合室ではテレビが放映されていた。そういえば今日の小便小僧にも、いくつかのテレビの取材クルーが来て、儀式の様子をカメラにおさめていた。私にはもはや見ることはできないが、この日のベルギーのTVニュースでは、儀式の模様とともに、カメラの前で口をポカンと開けて儀式を凝視する怪しげな東洋人の姿が映し出されたことであろう。




 延々と、続く。


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2017/10/01

2009年世界の旅【80】ベルギー(1) 世界三大がっかり名所~小便小僧

 これまでの経過は ⇒こちら。


 翌日、取引先の会社訪問と現地視察を終え、先方のセールスマネージャーが食事に誘ってくれた。私が宿泊するホテルのレストランで、のど越しの良いベルギービールを飲み、料理をつまみつつ会話を楽しむうち、マネージャーから、翌日ベルギー国鉄がストライキを予定していることを教えられた。数十年前の日本では当たり前だったストライキも、国鉄分割民営化を経てほとんど実施されることがなくなった。それゆえ、列車が動かない、という感覚が即座に理解できなくなっている。


 ブリュッセルへの代替交通機関はバスだというが、乗り換えが必要であまり実用的ではない。タクシーが一番だという。ブリュッセル国際空港までは50km以上あり、かなりの出費が予想されるが、ストライキでは仕方がない。無理にバスを利用して渋滞に巻き込まれたり道に迷ったりしては目も当てられない。当初予定では朝一番で取引先へあいさつに行く予定にしていたが、マネージャーからは、事情が事情なので寄ってもらわなくて構わない、車はこちらで手配しておく、との言葉をもらった。


 翌朝、私はタクシーに乗り、ウェステルローを出発した。水曜朝10時のグローテ・マルクト周辺には市が立っており、静かだった夜とはうって変わって賑やかだった。
 ところどころに大型のガラスハウスが立ち並ぶ農村地帯を抜け、タクシーはブリュッセルへ向かう。私は運転手にお願いして、国際空港ではなく、中央駅へ車を走らせてもらった。都心に近い中央駅まで行けば、10kmほど離れた空港までの交通手段は何がしかあるだろう。中央駅の目の前で車を止めてもらい、料金を払って降りようとすると、運転手から手で制された。先方からすでに料金を受け取っているようである。


Pb043948  ブリュッセル中央駅で確認すると、ストライキは延期されたようで、列車は正常運行している。中央駅から空港へは、およそ15分おきに走る列車で約10分である。朝取引先へ寄らず、タクシーで空港へ直行できたおかげで、3時間ほど時間に余裕ができた。私は駅構内の手荷物預かり所にスーツケースを預け、ブリュッセルの市街地へと散歩をしてみた。


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 坂道を下って市街地へ向かう途中のカフェで遅めの朝食。砂糖をまぶしたワッフルはカリカリとしていて、少し想像と違っていたが、温かいコーヒーによく合った。コーヒーを飲みながら時間の過ごし方を考えた結果、まずはブリュッセル名物「小便小僧」を見に行き、時間があれば列車に乗って、昨日通り過ぎただけのアントウェルペンへ行き、ノートルダム大聖堂を駆け足で眺めることにした。ノートルダム大聖堂は、名作文学「フランダースの犬」で、ネロ少年と愛犬パトラッシュが最期を迎えた場所である。


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 再び市街地へ向かって歩くと、市庁舎をはじめとするゴシック建築の数々に囲まれた広場へ出た。グラン・プラス(Grand Place)と呼ばれる、学校の運動場ほどの広さの、石畳に覆われた広場である。いわゆる大広場で、フランス語ではグラン・プラス、オランダ語ではグローテ・マルクトとなるらしい。市庁舎の屋根上に立つ、空を突かんばかりの塔がひときわ目を引いているが、行き交うたくさんの市民は、いちいち建物に目をやっている様子はない。見上げたりカメラを構えたりしているのは、みな大きな荷物を持った観光客風の人間ばかりである。


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 小便小僧をかたどったチョコレートを売る店が並ぶ通りを抜けた左手の角に、本物の小便小僧があった。4m四方ほどの角に、扇形に柵が設けられ、その奥の石造りの飾りの台の上に、ちんまりと立っている。小僧が左手でつかんだ自らの小僧からは、ちょろちょろと小便が流れている。おそらく50cmあるかないかの大きさだろう、あまりの小ささに驚く。
 像の後ろはすぐに土産物屋の建物になっており、風情も何もない。ビルに取り囲まれた札幌時計台どころの騒ぎではない。さすがは、シンガポールの「マーライオン」、コペンハーゲンの「人魚姫の像」と並ぶ「世界三大がっかり名所」に数えられるだけのことはある。
 私は踵を返して中央駅の方へ戻りかけた


 延々と、続く。


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