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2017年11月

2017/11/28

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【11】 地鉄を乗り継ぎ宇奈月温泉へ

 これまでの経過は ⇒こちら


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 富山地鉄の乗り歩きはさらに続く。再び電鉄富山駅に戻ると、4番線まであるホームに、地鉄オリジナル、京阪電鉄、東急電鉄からの移籍車と出自が様々な電車が並び、電車見本市のようである。気持ちはダブルデッカーやテレビカーを連結した京阪車に惹かれるが、本線経由の上市行きで、残念ながら私の目指す方向へは行かない。


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 15時10分発の不二越・上滝線経由岩峅寺行きは、地鉄オリジナルの車両。転換式のクロスシートが並んでいるのは旅人としてはありがたいが、腰かけてみるとクッションはベコベコで落ち着かない。車齢38年の古い電車なのである。
 先ほど市内電車で立ち寄った南富山で学生中心に乗客が増え、後は駅ごとに減っていく。古めかしい駅名標が残る岩峅寺までは33分と、寺田経由よりやや早い。


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 神社風の瓦屋根の駅舎を持つ岩峅寺からは、寺田経由の電鉄富山行き電車で、つい2時間半ほど前に通った区間を行く。今度の電車は旧京阪車だが色が地鉄の新共通色に塗り替えられている。転換クロスシートに腰掛けると、こちらもやはりベコベコである。こちらは車齢はさらに古く、45年に達する。外観はきれいになっているが、車内はあまり手を加えられていないらしい。


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 本線との合流点である寺田で下車。本線と立山線がY字型に分岐する、ちょうどその中心にホームがある。そこに鎮座する建物が駅本屋かと思いきや、扉はすべてカギがかかっており、駅の外につながっている気配もない。もとは駅事務所兼待合室だったようだが、現在はただの物置になっている。
 本物の駅本屋は立山線ホームの外側にあり、「驛田寺」と右書きの旧字体で書かれた看板が残っている。1931年開業当時からの建物らしいが、リフォームされてすっきりした外観になっている。


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 次に私が乗るのは、16時29分発の特急「アルペン3号」である。立山始発の列車で、寺田で方向転換して宇奈月温泉へ向かう。立山線と本線宇奈月温泉方面を直接行き来できる配線になっておらず、どうやって折り返すのか興味がある。
 16時23分、立山線ホームに「アルペン3号」が入ってきた。地鉄オリジナルの電車だが、塗装は新しく塗り替えられている。下車客を降ろしたのち、ドアを閉めていったん本線の富山方面へと向かってポイントの先で停車。しばしののち、こちらへ向かって戻ってきて、今度は本線のホームに入った。時刻表上、列車は寺田に6分停車することになっているが、実際にドアを開けている時間は2回合わせて3分足らずである。


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 わずかな乗客を乗せた列車は、次の上市でスイッチバックして田園地帯を北に向けて走る。滑川から魚津にかけては、旧JR北陸本線のあいの風とやま鉄道と並走し、時折、線路の向こうに海も見え隠れする。
 魚津の先、石田を出ると右へ大きくカーブして再び内陸に入り、あいの風とやま鉄道をまたぎ、北陸新幹線をくぐる。この辺りから住宅が減り、再び田園地帯となる。下立口付近から線路は山の中へと分け入っていく。窓の外が急速に暗くなっていった。


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 17時25分、終点の宇奈月温泉に到着。100.7kmの富山地方鉄道をようやく全線走破した。駅舎はプレハブの仮駅舎で、山小屋風の本駅舎はエレベーター工事のため閉鎖されている。駅入口の前には温泉噴水が噴き上がっており、飛沫とともにほんのりと暖かい湯気が体を包む。


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 駅近くのホテル「フィール宇奈月」に旅装を解き、食事を求めて温泉街を散歩。食堂は見当たらず、インターネットで調べた「河鹿」へ。人気だという釜めし定食を注文し、炊き上がりを待つ間、おでんを何品かつまむ。
 ほぼ満員の店内は、ほとんどが温泉客のようで、みな釜めしを食べている。妙齢の女性ひとり旅らしき人もおり、一緒に飲みましょう、などと声を掛けてみようかと思ったが、酔いが回って朝寝坊をするようなことになっても困るのでやめておいた。釜めしは、うまかった。




 続く。



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2017/11/26

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【10】 富山地鉄を乗り歩く

 これまでの経過は ⇒こちら


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 立山黒部アルペンルートを通り抜けた後は、富山県内に残る未乗路線を一気に片付けていく。まずは富山地方鉄道である。93.2kmの鉄道線と7.5kmの軌道線、計100.7kmの路線網は地方民鉄としては最大級で、大手の東急・京急・京王・相鉄・京阪・阪神を上回る。
 乗りつぶしに持って来いの1日フリーパス(2,500円)を窓口で購入し、当初の基本行程より1本早い12時31分発の電鉄富山行き普通電車に乗る。雨はすっかり上がり、時折日差しも見える。


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 東急から来た中古ステンレス電車2両編成の車内は空いている。称名滝の下流に当たる常願寺川の谷あいを走る区間は乗降客も少なく、のんびりした雰囲気が漂う。
 不二越・上滝線が分岐する岩峅寺付近から住宅や田地が目立ち始め、乗客の出入りも多くなる。立山町の中心に近い五百石では学生が大量に乗り込み、立ち客はないもののロングシートがほぼ埋まる盛況になる。


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 本線に合流する寺田を過ぎ、日本一面積の小さい自治体である舟橋村を抜けると富山市。都市近郊鉄道の雰囲気が徐々に増してきて、13時36分、終点の電鉄富山に到着。JR富山駅に接した駅ビルから、北陸新幹線開業に合わせて新設された市内電車の富山駅電停へ向かうと、JR新幹線改札口からコンコースを挟んだ真正面に立派な乗り場が設けられている。


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 富山駅から市内電車1系統の電車に乗る。「サントラム」と呼ばれる3両連接の低床電車である。駅前ロータリーを抜けた交差点で本線に合流するまでのわずか100mほどの区間は、富山市が保有し、富山地方鉄道が運行を担当する「上下分離方式」の区間になっている。本線へ出ると、日中で交通量もさほど多くなく、電車は順調に市街地を抜けて走る。


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 安野屋の先で神通川を大きな橋で渡り、富山駅から15分ほどで終点の大学前に到着。富山大学の他、高校や運動公園がある文教地区である。折り返し南富山駅前行きの電車にもパラパラと乗客が乗ってきて発車。再び橋を渡って市街地に入った丸の内で下車。地名からもわかるように富山城址公園の目の前にあり、遠くに小さく模擬天守の姿も見える。ここで反対側のホームへ渡り、富山都心線を走る3系統の電車に乗り換える。


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 やって来たのは、シックな色合いの低床電車。サントラムよりやや丸みを帯びた車体で、「セントラム」の愛称がついている。富山駅発着のオタマジャクシ型の環状運転で、時計回りの一方通行という珍しい運行形態である。大学前への線路と別れて、模擬天守を左に見ながら石畳の単線を走り、市の中心部へと入って、商業施設が立ち並ぶグランドプラザ前で時間調整のため小休止。乗客が大きく入れ替わる。


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 西町交差点で左折して南富山からの本線と合流し、中町(西町北)電停で下車。富山駅方面行専用の電停である。西町電停が交差点を挟んで合流点の南北に離れているため、乗り換えの便を図って開設された新しい電停である。南富山駅前行きの西町電停は、信号をひとつ挟んだ100mほど南にある。
 5分ほど待ってやってきた南富山駅前行の電車は、先ほど私が丸の内で降りた電車だった。私が都心環状線を走っている間に、富山駅を経由してここまで走って来たらしい。見覚えのある運転士がちらりとこちらを見る。


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 商店街に混じって民家の姿が目立ち始める通りを南へ向かい、10分ほど走ると正面に鉄道線の線路が見えた。電車は右カーブしてその線路の横に入り、終点の南富山駅前電停に到着。不二越・上滝線の南富山駅に完全併設で、駅舎も兼用である。
 折り返しの電車で引き返す。2系統富山駅行きとなったサントラムの明るい車内は、学校帰りの女子高生でいっそう華やぐ。富山駅までは18分、14時54分に到着した。これで市内電車は完乗となったが、富山地鉄全体ではまだ半分に満たない。乗り歩きはまだまだ続く。



 続く。



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2017/11/23

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【9】 高原バス・ケーブルカー・称名滝

 これまでの経過は ⇒こちら


 室堂は立山・剱岳一帯の観光や登山の拠点である。立山連峰のひとつ、雄山山頂までは往復およそ4時間の登山コースだが、室堂平と呼ばれる周辺一帯にもみどころは点在している。北アルプスで最も美しいと言われるミクリガ池へは往復約30分で、遊歩道も整備されているので、最低でもこのあたりは眺めておきたいところである。


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 けれども、室堂ターミナルの3階から外へ出ると、雨が強さを増している。とりあえずミクリガ池方面へと歩いては見るものの、雨は時折強い風を伴って横殴りに顔をたたく。旭川から持参した貧相な折り畳み傘は見るも無残な姿となり、ミクリガ池の展望台にたどり着く前に私は引き返すよりほかなくなった。


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 とりあえず、池のほんの入り口辺りを眺めて引き返し、ターミナル付近に立つ「立山」と大書きされた石碑の前で、立山に来た痕跡だけは残しておこうと考えた。
 石碑の前には中国人観光客の団体が、数人ずつ交代で何枚も記念写真を撮り合っていた。多くの観光客が順番待ちの列をつくる中、いっこうに譲る気配がない。しびれを切らしたひとりの日本人の男性が大きな声を出すと、波が引くように引いて行った。この男性にシャッターを押してもらい、代わりに私もご夫婦のシャッターを押させてもらう。


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 せっかくの室堂平だがこれ以上する気力もなくなり、ターミナルへ入って1階へ降り、美女平行きの立山高原バスの列に並ぶ。
 10時40分発の便は、途中の天狗平・弥陀ヶ原などで乗降を扱う通常便と、美女平へ直行する臨時便各1台で、いずれもハイブリッドバスを使用している。直行便には私のほか、20人弱が乗り込んで、静かに発車した。


 立山連峰の中腹を、大きくカーブを描きながらゆっくりとバスは下っていく。アルペンルートを象徴する景色として知られる「雪の大谷」も、この時期は地肌をさらしている。そういえばミクリガ池周辺に残っていた残雪も、この雨で溶けてしまったと聞いた。早い年ならば、この時期にはもう雪が降っているというが、今年は遅いようだと運転手がアナウンスした。


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 天狗平、弥陀ヶ原などの景勝ポイントでバスは減速し、撮影時間を取ってくれる。雨はややおさまってきたようで、標高が下がったせいか少しずつ視界も晴れてきた。弥陀ヶ原からしばらく走ると、右手遠く、まだらな紅葉の山を白い帯が2本、はためきながら落ちるような滝が見えた。
 V字の左翼側が称名滝、右翼側がハンノキ滝という。称名滝は日本最大の落差(350m)を持つとされているが、どう見てもハンノキ滝の方が落差が大きく見える。落差500mのハンノキ滝は、雪解け時期や降雨後にしか現れないのだとかで、「参考記録」扱いのようである。これまで私の観光や散策を阻害してきた降雨が、ここに来て幻の滝を見せてくれたのだとすれば、これは唯一にして最大の幸運である。


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 室堂から23kmの道のり、約1,500mの標高差を45分かけて下り、標高977mの美女平立山ケーブルカーに乗り換え。20人ほどの乗客とともに、標高475mの立山駅まで下る。単線で途中2か所のトンネルをくぐり、中間で上りケーブルカーとすれ違う、ごく一般的なケーブルカーに見えるが、物資や資材を運搬する貨車を山麓側につないでおり、乗務員はそこに乗っている。


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 乗車7分、11時47分に立山に到着。観光ガイドなどでは、扇沢-立山間は最低でも6時間程度をみて余裕を持った行程を組むように、と書かれており、私の基本計画でも立山到着は13時過ぎ、場合によっては14時半頃まで余裕を見ていたのだが、悪天候が私を扇沢からわずか4時間17分でここまで連れてきてしまった。ちなみに観光などを考えずひたすら乗り継げば、3時間弱で駆け抜けることができるから、私としてはこれでも頑張った方だと言えなくもない。



 続く。



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2017/11/19

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【8】日本の鉄道最高地点へ

 これまでの経過は ⇒こちら


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 黒部ダムの堰堤を歩いて対岸のトンネルへ入り、しばらく進むと、立山黒部貫光鋼索線(黒部ケーブル黒部湖駅がある。ここからケーブルカーでアルペンルートを先に進む。ゆっくりと黒部ダムを見学したおかげで、当初想定の行程よりも1時間ほど遅れているが、余裕時間はまだある。


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 8時50分発のケーブルカーで出発。1969年の開業以来使用されているという車両の中は、この時間まだ空いており、乗客は20人ほど。上っていく先の線路はトンネルに覆われている。全線がトンネルの中にあるケーブルカーは全国でもここだけという。昨年乗車した青函トンネル記念館のケーブルカーも全線トンネル下のように感じたが、そういえばあちらは記念館側の駅が地上にあった。


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 トンネルの中ゆえ、景色は望むべくもないが、ぐいぐいと力強く昇っていく感覚は伝わってくる。中間地点で下りの車両とすれ違い、およそ5分で終点の黒部平駅に到着する。距離にすれば0.8kmと短いが、標高1,455mから1,828mまで373mを駆け上る。最大勾配587‰、平均勾配450‰はいずれも国内のケーブルカーでは第2位である。


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 黒部平駅の周辺は庭園として綺麗に整備されていて、展望台もある。いったん外へ出てみたものの、雨の向こうの景色は煙っていて何も見えず、即退散。先を急ぐ。
 9時10分発の立山ロープウェイ大観峰へ。全長1.7kmのロープウェイの途中には支柱が1本もない「ワンスパン方式」になっている。工事やメンテナンスも大変だろうと察するが、雪崩による支柱の倒壊を防ぐのが目的だという。この季節、紅葉に彩られた大パノラマが広がるはずなのだが、雨粒が叩きつける窓の向こうにはモノトーンの奥行きのない景色だけが映る。


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 標高2,316mの大観峰駅は山腹に設けられており、ほぼ乗り換えのためだけに設けられた駅のようであるが、屋上には展望台もある。一応登ってみたものの、辺りは霧がかかったように真っ白で、黒部平よりも状況は悪い。こちらも早々に撤収。黒部平、大観峰と、乗り継ぎを1本ずつ落として観光にあてる予定だったが、雨のおかげで当初予定からの遅れは30分まで縮まっている。


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 大観峰からは、アルペンルート2本目のトロリーバス、立山トンネルトロリーバス室堂を目指す。
 1階の乗り場から9時45分発のバスに乗る。バスは2台用意されているが、まだ空いている時間らしく、どちらも半分ほどが埋まった状態で出発した。全線がトンネル内となっているこの区間は、もともとディーゼルバスで運転されていたが、観光客の増加による増便への排気ガス対策として、1996年にトロリーバス化された。関電トンネルと比べれば歴史は浅いが、元祖の方が来シーズン一杯で店仕舞すると、日本に唯一残るトロリーバスとなる。車両そのものは関電トロリーバスと同じくらいの経年であり、今後の行く末が気にかかる。


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 途中区間で行き違いをおこなって、3.7kmの区間をおよそ10分、9時55分に室堂に到着した。立山観光の一大拠点となっていて、観光センターやバスターミナルを兼ねた駅舎は大きく、立派なレストランや土産品コーナーもある。標高2,450mの地点にあり、日本の鉄道最高地点である。もっとも、トンネルの中を走ってここまでたどり着いた身としては、あまり実感が沸かない。実感を得るには外に出てみるよりほかになさそうである。



 続く。



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2017/11/13

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【7】 自然と人工のコラボレーション~黒部ダム

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 黒部ダムは、関西電力がひっ迫する関西地方の電力供給を背景として1963年に完成させた水力発電専用のダムである。3,000m級の山々が連なる北アルプスに囲まれた黒部峡谷の中にあり、7年間の工期と513億円の建設費を要し、171名の殉職者を出した難工事となった。
 この辺りの経緯は映画「黒部の太陽」や、NHKテレビ「プロジェクトX」など、メディアでもたびたび伝えられえている。最近では「ブラタモリ」でも取り上げられており、ちょうど翌週にこの旅を控えていた私にはちょうど良い予習になった。


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 トロリーバスの黒部ダム駅から、湧水を飲みつつ220段の階段を上り、まずは高所から黒部ダムを一望できる展望台へと出る。残念なことに雨がしとしとと降っており、霧に煙って視界も良くないが、柔らかなWの字を描くダム堰堤と、その上流にあたる大量の水を湛えた黒部湖、そして下流側へ豪快に放水される様子が目に飛び込んでくる。
 ゆるやかに紅葉が進んでいる険しい峡谷がつくる自然の美の中にあって、黒部ダムの存在は異質の人工物だが、それゆえに多少の悪天候でも、この雄大さは存分に伝わってくる。


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 売店もある休憩所の横の野外階段を下る。階段の中腹あたりに放水観覧ステージが設けられており、ダム堰堤とほぼ同じ高さから放水の様子を見ることができる。
 この放水は観光放水と呼ばれ、ダム機能とは直接的に関係はないのだが、下流の水質を維持し生態系を保護するためにおこなわれているという。


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 野外階段をさらに降りると、新展望広場に着く。ここからは放水口にかなり近い高さから観光放水の様子を眺めることができる。ダム本体に這わされた点検通路も間近に見える。ダムの堤高は186m、ビル60階以上に相当するというから、高所恐怖症ではここの作業員は務まらない。
 毎秒10t以上の水が飛び出しては落下していく放水は、間近で見ると実に豪快である。この勢いが水力発電の出力を支えているのだろう、と、黒部ダム自体で発電をおこなっていると勝手に勘違いしていた私は感心したのであるが、実際の発電は、地中送水管を介して10kmほど離れた黒部川第四発電所(黒四)でおこなわれている。新展望広場に設けられた特設会場の展示で、私はうかつにも初めてその事実を知った。


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 階段を上ってレストハウスに行き、小休止した後、先へと歩みを進めるため、ダム堰堤を歩く。レストハウスから少し歩くとほぼ直角に左へ曲がり、あとは緩やかな右カーブが続く。
 長さ492mのダム堰堤は、黒部湖にそそぐ大量の水の圧力に耐えるため「アーチ式」と呼ばれるダムの形になっているが、両岸の基礎となる岩盤の弱さをカバーするため、この部分だけはダムの自重で支える形になっている。これが黒部ダムの堰堤が「W形」を描いている理由である。
 振り返ってレストハウス方向を眺めると、山の中腹に最初に立った展望台が見える。新展望台は堰堤より下にあって見えない。ずいぶんと高低差があるところを行き来したわけで、道理で足がパンパンになるはずである。


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 堰堤の中央付近まで来る。上流側の黒部湖は貯水量2億t。しかもこの水は1年で4~5回入れ替わるというから、黒部川の水量の豊富さがわかる。反対側に目をやると、はるか下方に一転して細くなった黒部川がやや早く下流へと流れている。川の勾配がにわかに急になり、かつくびれたこの地点の地形がダム建設に最適だったのだという。堰堤に立ってあらためて眺めると、この山奥にこの巨大な施設をたった7年で完成させたことの凄さと壮大さを感じずにはいられない。


 黒部ダムは、電力のひっ迫という必然性に迫られて、ここしかないという地理的必然性をもって建設された。関電トンネルを含む立山黒部アルペンルートの東半分はその副産物として生まれ、その結果として私たちは壮大な自然と人工のコラボレーション美を目にする機会を得た。
 黒部ダム、チャンスがあればぜひ再訪したい場所のひとつになった。できれば今度は晴天の日に、というのが本音ではある。


 続く。



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2017/11/09

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【6】 関電トンネルのトロリーバス

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 さて、肝心のトロリーバスの話。


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 出発7分前、7時23分頃に改札が始まり、乗り場に上がると、バスにしては風貌のややいかつい3台のトロリーバスが天井のポールを上げて客を待っていた。先頭車両の最前部を確保して、運転席周辺を眺める。ハンドルがついてパッと見では普通のバスと大差はないが、インパネ部のメーター類がすっきりしており、その横に電車のような電圧計がついている。前方を眺めると、アスファルトの道路脇には鉄柱が立ち、上空にはものものしく架線が張られている。


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 7時30分、ほぼ座席が埋まる程度に客を乗せた2台のバスで発車。静かな走り出しである。架線の張られた上り坂の道路を右へカーブしていくと、ほどなく関電トンネルに入っていく。ここから終点の黒部ダムまでは、ずっとトンネルの中である。トンネルの幅は狭く、バス1台がやっと通れるほどしかない。レールの上を走る電車ならばともかく、架線付きとはいえ運転手のハンドル操作で走るトロリーバスでは、操作を誤ればバスの車体がいつトンネル壁に接触してもおかしくない。けれども運転士はこともなげに狭いトンネル内を、時速50kmほどで安定して走っていく。


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 関電トンネルは、黒部ダムの建設に伴う長野県側からの資材運搬経路として建設され、1958年に貫通した。私は地学に疎いので詳しいことはよくわからないが、地質的にきわめて厳しい工事となったそうで、中でも大破砕帯と呼ばれるところは、大量出水に見舞われる難工事区間であったという。白い蛍光灯にほんのりと照らされたトンネルの中で、一部分だけ青い光に照らされた区間が大破砕帯である。バスは何事もなかったかのように通過していくが、水たまりの残る舗装道路にその痕跡を残している。
 そこを越えると間もなく県境。長野県から富山県に入る。全長5.4kmのほぼ中間地点に設けられたバスの行き違い地点を、始発ゆえ行き違うバスもなく素通りする。


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 乗車時間およそ15分ほどで、終点、黒部ダム駅に到着する。ここもトンネルの中で、ダムや展望台へ行くためには220段の階段を上ることになる。階段の中間には湧き水の給水所があり、冷たい水でのどを潤すこともできるが、昨日の土合駅以来階段づいており、破裂するのではないかと思うほど足が張っている


 日本でのトロリーバス導入は、主として戦後の都市交通の場面で進んだ。路面電車と比較してレールがない分建設費用が安価に抑えられるためである。しかし自動車の普及が進むにつれて、架線下しか走行できないトロリーバスの存在は、路面電車同様に道路交通の障害となり、次々と姿を消していった。
 その一方で、ほぼ同じ時期に関電トンネルの観光客向け運行開始に当たってトロリーバスが採用されたのは、全線トンネルで国立公園内を走るため、排気ガス対策や環境への配慮が優先されたためである。専用道路のため、自家用車などへの配慮も必要ない。同様の理由で、もともと一般バスで運行されていた大観峰-室堂間の立山トンネルバスも、1996年の車両更新に際し、トロリーバス化されている。


 けれども関電トロリーバスは、2019年の車両更新に際し、トロリーバス方式をやめ、充電式電気バスへ切り替えることを選択した。背景には電気自動車の普及と技術向上が進んでおりバスへの導入に障害がなくなったこと、トロリーバスと比べ地上設備が大幅に簡略化でき運行経費も圧縮できることなどがある。


 以前にも書いたが、関電トンネルトロリーバスは鉄道事業法に基づく「無軌条電車」である。関西電力は8月28日、鉄道事業の廃止を北陸信越運輸局に届け出た。
 トロリーバスの運行は来年、平成30年がラストシーズンとなり、ラストイヤーキャンペーンと称して様々なイベントが行われるという。登山客中心の普段どおりのトロリーバスに接する最後のチャンスかもしれない、と思ったのが、今年ここまでわざわざ足を運んだ理由のひとつである。来年になるとその筋の人がわらわらと訪れてくるかもしれない、そう思うと気持ちが乗らなくなる。私が言うのもおかしな話であることは重々承知しているが


 ⇒≪参考≫関西電力によるプレスリリース


 続く。



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2017/11/03

2017年秋 北陸・東海乗り歩き【5】 扇沢駅の名物ヒラ社員

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 明けて10月13日、金曜日。ちょうど6時に「竹乃家」を出る。残念なことに雨がしとしとと降っており、外は薄暗い。信濃大町駅前にあるバス営業所はちょうどシャッターを開けるところで、扇沢までの乗車券を購入する。他に客の姿はなかったが、発車時刻が近づくとぽつぽつと数人が集まってきた。


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 貸切バスタイプの扇沢行バスは、8人ほどの客を乗せて、6時15分、発車。先ほど散歩した駅前の商店街を通り、市街地を抜けて途中大町温泉郷に停まるが、この早朝に乗ってくる客はいない。大町温泉郷を過ぎるとにわかに山間へ入っていき、しずしずと進んでいく。所定40分のところ、5分ほど早い6時50分、関電トロリーバス扇沢駅に到着した。


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 今日これから辿るのは、立山黒部アルペンルートである。この扇沢から富山県側の富山地方鉄道立山駅まで、2本のトロリーバス、2本のケーブルカー、1本のロープウェイ、1本のバスで結んでいく。乗り鉄としての最大の目的はトロリーバスとケーブルカーであるが、途中にある有数の観光地も無視してスルーでは罰が当たる。この区間、いっさいの寄り道をしないで駆け抜けてしまえば最速3時間ほどであるが、私としては珍しく、中間で3時間ほどのバッファーを設けている。


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 扇沢駅にはすでに10人以上の客が、チケット売り場のオープンを待っていた。ここまで車で来たらしく、駐車場にはすでに車が止まっている。貸切バスの姿も何台か見える。皆登山風のいでたちで、いかにもその筋の人、という感じの客は私の他にはいない。7時にオープンした券売所で立山までの片道乗車券を求め、2階の改札へ上がる。ラッチ前にリュックを置いて順番取りをさせ、売店で求めたコーヒーを飲みながらしばしターミナル内を散歩する。


Dscn6571  7時20分頃になると改札前の列が伸び始めた。数十人が並んだ頃、駅員が弁当のワゴンを持って現れた。改札開始時刻の案内を兼ねつつ、改札までの数分間で弁当売りに精を出すこの人は、テレビなどでも紹介されて有名になった中里さん、ただのヒラ社員である。抑揚の少ないまくしたてるような軽い関西訛りの口調に、絶妙の間を挟みつつ、最後にはぼやきともとれるようなオチを決め、改札に並ぶ手持無沙汰な乗客たちの笑いを誘う。
 曰く、
「駅長さんとか呼ばれますけどね、ただのヒラ社員です。気楽でいいですよ。これ以上の降格はないですから。」
「トロリーバス、左右どっちが景色がいいか、よう聞かれます。どっちでもいいんです。ずっとトンネルですんで。


 朝から良質な漫談を聞いているような気分になるが、文字ではうまく伝わらないので、気になる方は現地を訪れるか、Youtubeで探していただければかなりの数アップされている。ちなみにこの日は5つほど売れたらしく、「昨日の始発は150人ほどいたんですけどねえ、ゼロだったんですよ」とまたぼやく。始発から発車のたびに繰り返すのだろうが、ご苦労なことだと思う。
 彼をキャラクターにしたストラップなどのグッズも発売されており、売上増やトロリーバスのアピールに少なからず貢献する優秀な社員だと思うが、ヒラ社員でなくなったら売りがなくなってしまうに違いない。本人は痛しかゆしというところだろうが、会社側はしめしめ、と思っているのではないか、と思う。



 続く。



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