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2018年5月

2018/05/30

2009年世界の旅【89】フランス(1) 消えた手帳と狭い部屋

これまでの経過は ⇒こちら。


 列車の中で私は時計の針を1時間進めた。イギリスとフランスの時差は1時間、私の時計は14時台をスキップして一気に15時になった。


 ロンドンから2時間27分の旅の終点は、パリ北駅(Gare du Nord)。行き止まり式の地上ホームは自然光が差し込んで明るく、ミラノ中央駅やロンドン・パディントン駅同様、櫛歯のようにホームがずらりと並んでたくさんの列車が休んでいる。駅の案内放送の、女性がささやくようなチャイムの音も懐かしい。


 簡単な入国手続きを受けてコンコースへ出ると、大学時代のバイトの後輩、S君が直立不動で待っていてくれた。今日、明日と私の案内を引き受けてくれている。S君は北大を卒業後、フランスに渡り、現在、パリの大学で研究を続けている。アムステルダムのJ君も含め、私たち3人は同時に同じバイト先にいた仲間である。


 数年ぶりの再会を祝し、まずは駅コンコースにあるカフェでお茶を飲みながら、今日・明日の行動予定について確認することにした。事前のやりとりで、私はS君に、世界遺産のモン・サン・ミッシェル(Mont Saint-Michel)に行きたい、という希望だけは伝えてある。S君はその希望を軸に、行動予定を考えてきてくれているらしい。


 S君が教えてくれる行程をメモしようとして、上着のポケットの中に手を突っ込み、私は背筋がすっと寒くなるのを感じた。ポケットに入れておいたはずの手帳が消えており、ボールペンだけが残っている。この話は以前にブログで書いた。

「いかさまトラブラー【6】忘れ物・なくし物編(4)」


08101038  気分はそぞろであるが、悩んだところで手帳が飛び出してくるわけでもなく、私たちは北駅からメトロ(地下鉄)4号線の電車に乗った。ロンドンのチューブ同様小さな車体だが、こちらは角張った電車で、札幌市の地下鉄と同様にゴムタイヤで走行する。おまけに手動ドアである。
 前年の経験から、乗換駅のシャトレ(Chatelet)のホームに電車が止まるやいなや、ドアについているノブをくるりと半回転させると、ドアがバガン、という音とともに開いた。他のドアからはすでに客がばらばらと降りている。


 1号線に乗り換えて1駅、ルーヴル・リヴォリ(Louvre Rivoli)駅で下車。ひとつしかない出口を出て、S君の案内に従って歩くと、ほどなく今日から3日間の宿、「ベスト・ウェスタン・プレミア・ルーヴル・サント・ノーレ(Best Western Premier Louvre Saint Honore)」という長ったらしい名前のホテルにたどり着いた。2車線の狭い道路に面したホテルで、店やビルに挟まれて狭苦しげに建っている。
 フロントで、例によってバスタブつきの部屋を所望するが、満室らしい。明日になれば空くとのことだが、部屋をいちいち移動するのも面倒だから遠慮しておいた。インターネット接続は、やはり有料である。


Pb084211  小さなエレベーターに乗って2階へ行くと、エレベーターホールの周りに数室あるだけの、非常に小さなつくりである。
 指定された部屋のドアを開け、中へ入って驚いた。これまで宿泊してきたどのホテルの部屋よりも小さい。昨年宿泊したパリ東駅近くのホテルと比べても、3分の2程度の広さしかない。3泊7万円と、これまでの宿泊料の中では最も大きな金額を投資しているが、日本の1泊5,000円のビジネスホテルにも劣る。ルーブル美術館・オペラ座至近という立地条件ではこの値段でも「下」ということか。あまりの狭さに言葉を失った。


 かろうじて確保できたスーツケースの置き場で荷物を広げ、ビジネスバッグの中も含めて手帳がないことを再確認する。それからパソコンを取り出し、S君の助けも借りながら、ロンドンのホテル、バーバリーショップと思い当たる節にSkypeを使って片っ端から電話する。結果はいずれもそれらしき落し物はないとの返事である。セントパンクラス駅だけは、遺失物の電話受け付けは行わないらしいので、Eメールで遺失物の照会をしておく。
 これまで苦手にしてきた電話でのやり取りであるが、自分でも驚くほどスムースにできている。英語力の向上というよりは、人間、危機的状況に陥れば、案外、このくらいの力は発揮できるのかもしれない。



 延々と、続く。


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2018/05/28

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【7】石北本線(その3)

 ここまでの内容はこちら。⇒その1 その2


Dscn6202  札幌・旭川と北見という10万都市を結ぶ都市間輸送、旭川・北見近郊の都市圏輸送を担いながら、利用は低迷し、さらに貨物輸送という問題を抱える石北本線。地形に阻まれて線形が悪いうえに、中間の人口が希薄、冬期間の除雪に多くの費用を要するというハンデの部分も含め、現在のJR北海道の路線が置かれている状況を非常によく象徴している路線であると言える。


 先述した国土交通省の全国幹線旅客純流動調査(2010年)で、札幌-北見間とほぼ等距離にある札幌-函館間の流動を見てみると、鉄道37.3%、航空3.3%、バス2.4%、自動車57.0%となっている。鉄道のシェアは1995年と比べて倍以上に増えている。JR北海道が「スーパー北斗」の運転を開始し、高速化と増発による攻勢に出た時期で、同じ時期に虻田洞爺湖から八雲まで順次高速道路が延伸されたにもかかわらず自動車のシェアが減少傾向にあることは興味深い。
 現時点では高速道路がさらに大沼公園まで延伸される一方、鉄道は当時と比べてスピードダウンしており、若干シェアが変動していると考えられるが、増発と高速化がシェア回復の切り札となることは間違いない。


 とはいえ、札幌-北見・網走間の総流動は1日5,000人にも満たないと考えられ、函館とはそもそものパイ自体が比較にならない。中間の沿線人口を考えても、函館方面と同等の投資をしてもそれに見合う効果は得られない。
 2000年に完成した宗谷本線・旭川-名寄間の高速化工事では、76.2kmに32億円(この他に特急用車両12両で21億円)が投じられ、同区間の最高速度は95km/hから130km/hに引き上げられた。現在は120km/hに抑えられているものの、ハイパワーのキハ261系が最速56分で結んでいる。投資効果としてはこの辺りが参考になるだろう。


 JR北海道の維持困難線区に対する直接的な支援には消極的な北海道だが、特急車両の導入については、宗谷本線高速化と同じ第三セクターを活用したリース方式による支援を表明している。あとは線路の改良だが、峻険な区間が多い石北本線では全線改良には多額の費用が掛かり、自治体の協力も得られまい。そこで比較的平坦な新旭川-上川と西留辺蘂-北見を部分的に高速化できないものか。この辺りまでで札幌-北見で20分程度の短縮は見込めそうである。


Sekihoku  それからもうひとつ、遠軽駅の移転とスイッチバックの解消を検討してはどうか。
 もともと旭川から北見方面に向かう路線は、名寄・紋別を経由して遠軽に達する、今は亡き名寄本線がメインルートであった。後から建設された石北本線は、そこに突っ込む形で遠軽に達している。遠軽駅が平坦地で他に分岐線もないにもかかわらず、不自然なスイッチバックになっているのはこのためである。これが解消されれば、最低でも5分程度、駅の位置によってはもう少し時間短縮効果がある。貨物列車の運行形態も改善される。
 スイッチバックを解消するためには最低でも1kmほど駅を移転させなければならず、遠軽町からは相当な反対があることも予想されるが、石北本線を今後も有効に活用していくために不可欠だと判断されればそれもやむを得ないのではないかと思う。


 こうした施策を積み重ねたとしても、札幌-北見間で、他の交通機関と比較して優位に立てる所要4時間に達するのは少々厳しいかもしれない。だが現状を放置すればジリ貧になることは目に見えている。旭川や北見の通学需要も、少子化が急速に進む現在、見通しは暗い。


2015081501  2016年3月、JR北海道は上川-網走間で普通列車の運転本数を削減するとともに、乗降客が極端に少ない4駅を廃止した。さらに将来に向けて、5つの駅と41か所の踏切を廃止する方向で検討を進めていると地元紙は報じている。
 鉄道を維持するためには、鉄道が本来の役割を果たせる部分に投資を集中し、機能が喪失した部分を思い切って合理化することも必要である。JR北海道本体に限った話ではなく、線区単位でも「選択と集中」という考え方は存在してしかるべきではないかと思う。


 いずれにしても、採算の取れない北海道の地方路線を維持していくためにはお金がかかる。それを民間たるJR北海道単独に負担させるのは理屈に合わない。それでも鉄道を、と声を上げるのならば、相応の負担は覚悟しなければならない。自治体か国かはこの際関係ない。
 高速道路の延伸工事は粛々と進んでいる。道路に突っ込む金があるが鉄道に突っ込む金はない、そう言うのならば、石北本線もさっさと廃止すればよい。大きな期待だけ背負わされながら、近代化から取り残され、日々1,000万円以上の赤字を垂れ流しながら肩身の狭い思いで走り続ける石北本線が気の毒である。



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2018/05/16

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【6】石北本線(その2)

 石北本線を巡るもうひとつの大きな問題は貨物列車の存在である。


 北海道の鉄道は、石炭をはじめとする貨物輸送と、地域の開発を目的として、人口希薄な地域にまで張り巡らされていった歴史を持つ。石炭が斜陽化する中、貨物輸送の柱となっていったのは農産物輸送である。今も農協の倉庫が駅の近くに並んでいるのはその名残である。
 モータリゼーションの進展により、農産物輸送における鉄道のウェイトは低くなった。国鉄分割民営化当時1,500kmを超えていたJR貨物の道内営業路線は、現在1,267.9kmと減っているが、それでも大量輸送が可能な交通機関としての鉄道貨物の役割はまだ大きい。その典型的な例が石北本線を走る通称「タマネギ列車」である。


 国内の玉葱生産量は2015年産でおよそ126万トンだが、その3分の2近くが北海道産。なかでも北見市を中心とする「JAきたみらい」だけでそのおよそ4割、30万トンあまりを全国に向けて出荷している。ピーク時の出荷量は1日1,000トンをはるかに超える
 輸送手段は6割がJRコンテナ、残り4割がトラック(多くは20tトレーラー)+フェリーである。トラック輸送は機動力と速達性においてJRを凌いでいるが、貯蔵性の高い玉葱においては、5t単位での納入が可能なJRコンテナの引き合いは強い。8月から4月にかけて、北見-札幌貨物ターミナルに「タマネギ列車」が設定されるのはこのためである。


 その一方で、JR貨物は2011年、この列車の廃止を打ち出した。理由は機関車の老朽化採算性の問題である。
 機関車の老朽問題は、当初線路規格の低い石北本線には新型ハイパワー機関車(DF200形)は走行できないとされていた故発生した問題であったが、試験運転の結果問題ないことが分かり、2014年以降正式に導入されて解消している。
 だが、ハイパワーのDF200形が投入されたにもかかわらず、タマネギ列車は遠軽でのスイッチバックが必要になる石北本線の特殊性から、「プッシュプル」と呼ばれる機関車2両で列車を挟んで運転する特殊な形態になっており、人手も費用も余計にかかる。季節波動性の高い農産物輸送ゆえ、機関車や乗務員の手配も困難である。


 また、強力な機関車が導入されたとはいえ、石北本線内の列車行き違い設備の状況から、最大編成長は11両に制限されている。5tコンテナ55個、275t分である。
 北見からの列車はこれらのコンテナに玉葱をはじめ地域の農産物を満載にして走る。ところが、札幌からの帰路に運ぶ荷物、いわゆる「帰り荷」は極端に少ない。以前1日3往復が設定されていたタマネギ列車が現在1往復しか運転されないのはこのあたりにも理由がある。列車に乗り切らないコンテナは北見からトレーラーで代行輸送されて、北旭川貨物駅で別の列車に継送される形になっている。


 こうした状況から、産地ではJR貨物が求める運賃の値上げを呑み、さらにはコンテナ68基を自ら調達してJR貨物に提供するなどの手を打ってきた。業界の協力を得て、農産物輸送用の段ボールを札幌地区の工場からJRコンテナで運ぶなど、帰り荷確保の涙ぐましい努力もしている。


 北見地区の玉葱生産量は増加傾向にあり、ただでさえ輸送力が逼迫しているが、最近ではそこにトラックドライバーの不足と物流コストの上昇が追い打ちをかけている。仮に貨物列車が廃止となれば、20tトレーラーに切り替えても14台〜15台の車両とドライバーを用意せねばならない。石北本線沿線では高規格道路の整備も進んではいるが、だからといって簡単に列車廃止、トラック輸送化ということにはならない事情がここにある。


 そしてもうひとつ、今回のJR北海道による「維持困難線区」の問題でにわかに注目を浴びたのが、JR北海道に対するJR貨物の線路使用料の問題である。


 JR貨物は一部の専用線を除いて自前の線路を保有しておらず、JR旅客各社の線路を拝借して列車を運転し、旅客各社に線路使用料を支払っている。
 国鉄分割民営化に際し、採算性が不安視されていたJR北海道・JR四国・JR九州の3社に「経営安定基金」を積み立ててその運用益を赤字補填の財源としたが、同様に赤字が予想されたJR貨物に対しては、これに代えて線路使用料の大幅な減免をルール化した。いわゆる「アボイダブルコスト・ルール」である。


 これは、「貨物列車が走らなかった場合に発生する費用」はすべて旅客会社の負担とし、JR貨物は貨物列車の走行により上乗せとなった費用分だけを線路使用料とするルールである。JR貨物が2016年度に民営化後初めて鉄道事業収支を黒字化したのは、JR貨物自身の自助努力による部分ももちろんあるが、アボイダブルコスト・ルールによる線路使用料の低減の力も見逃せない。


 石北本線のように旅客列車の本数が少ない区間では、重量の大きな貨物列車の走行による線路損傷のウェイトも大きい。こうした事情も踏まえてJR北海道としては線路の維持管理経費も含めて線路使用料を設定したいところだろうが、現状のルールでは不可能である。
 同様の事情を抱えている路線は他にもある。以前に取り上げた根室本線・滝川-富良野間も、北見に次ぐ玉葱の一大産地である富良野地区の農産物輸送に貨物列車を運行しているし、旭川・岩見沢方面からの貨物列車は札幌を避けるために室蘭本線・沼ノ端-岩見沢間を経由する。


 もっとも、アボイダブルコスト・ルールが、結果的にこれまで荷主に対する低廉な運賃を実現したことも見逃せない。
 
JAグループは、JR北海道に対しては石北本線の維持、JR貨物に対してはこれに加えて貨物列車の輸送力確保を訴え続けている。だが、JR北海道は路線維持の条件としてJR貨物に対し、「アボイダブルコスト・ルール」の適用除外を求めていくのは間違いない。そうなれば貨物列車が存置されても運賃はさらなる上昇が見込まれる。物流経費が上がれば北海道産農産物の価格競争力は低下する。値上げを認めなければタマネギ列車の将来はないだろう。一筋縄ではいかない問題がこの路線には横たわっているのである。


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2018/05/06

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【5】石北本線(その1)

Img_1027  今回、JR北海道が「維持困難線区」にリストアップした路線のうち、特急列車が定期運転される路線が2区間ある。宗谷本線・名寄-稚内と、石北本線・新旭川-網走である。
 宗谷本線は特急運転線区としての歴史はまだ20年に満たないが、石北本線は1964年10月、特急「おおとり」の運行開始以来50年以上の歴史を持っている。一時期は食堂車を連ねた9両編成のキハ80系ディーゼルカーが往来していた路線である。


 その区間が「維持困難線区」にリストアップされた。
 JR北海道によると、2016年度の輸送密度は、石北本線全線で980人/km/日となっている。うち新旭川-上川は1,229人、上川-網走は880人である。1975年が4,357人、国鉄末期の1985年が2,528人であったことから見ても、その落ち込み幅は大きい。
 それでも、鉄道ネットワーク・ワーキングチーム・フォローアップ会議は、石北本線を「北海道の骨格を構成する幹線交通ネットワーク」と位置付け、維持を前提とした検討を進めるべきであるとした。


 石北本線の役割としては、旭川・北見周辺での通勤・通学輸送と、札幌・旭川-北見・網走の都市間輸送がある。輸送量全体に占める特急利用客の割合は、旭川・北見近郊では半分に満たないが、中間の上川-遠軽では7~8割に達する。
 沿線で最も大きい北見市の人口は、2000年までは増加傾向にあったが、その期間も含め、石北本線の輸送量は減少の一途をたどってきた。2016年にJR北海道が発表した2015年度の特急列車利用状況では、減少傾向が続く各方面の中でも、石北本線だけが1991年度比で50%を切るという惨憺たるありさまである。


 札幌-北見間の営業キロは321.5km。この区間を特急「オホーツク」は約4時間半で結んでいる。この所要時間は国鉄時代からほとんど変わっていない。函館へはJR北海道自ら早くから高速化に取り組み、釧路・名寄方面では地元も出資した第三セクターによる高速化工事が実施され、いずれも新型車両の導入を得てスピードアップしている。


Sekihoku
 石北本線の場合は、北見峠、常紋峠という2つの険しい峠越えで線形が悪く、高速化工事のメリットが十分に得にくい環境にあった。このため、北見方面への高速化には一時、距離が長いながら平坦区間の多い北海道ちほく高原鉄道・ふるさと銀河線の活用も検討されたが、この場合、沿線人口のきわめて少ない上川-遠軽の存廃問題に発展する可能性もあった。
 結局、この案は日の目を見ることなく、ふるさと銀河線は2006年に廃止となり、石北本線はその後も高速化や新車導入とは無縁のまま現在に至っている。


 札幌-北見・網走には、高速バス「ドリーミントオホーツク号」が運転されている。札幌-上川間では道央自動車道・紋別自動車道を走り、上川-北見間は距離の短い国道39号線(石北峠)を経由する。総距離は約300kmと鉄道より短く、札幌ー北見の所要時間は4時間35分~5時間と、鉄道との差は小さい。運行本数でもバスは夜行便を含めて10往復設定されており、1日4往復、しかも2往復は旭川で乗り換えを強いられるJRは分が悪い。


 もうひとつ、新千歳-女満別には、70席余りの小型機ながら、日航・全日空合わせて1日6往復の航空便が就航している。所要時間は45~50分。空港アクセスなどの時間を含めても、札幌-北見は3時間以内で結ばれる。費用の点からはともかく、所要時間では鉄道は全く勝負にならない。300kmそこそこの距離の区間としては非常に珍しい。


 やや古いデータになるが、国土交通省の全国幹線旅客純流動調査によると、2010年の札幌-北見・網走における交通手段別のシェアは、自動車52.5%、鉄道21.8%、バス16.1%、航空9.5%となっている。函館・稚内・釧路など道内の他の長距離区間と比較すると、航空とバスの分担率が高く、特にバスの分担率は突出している。鉄道の分担率は最も低く、対稚内にも劣る。少なくともこの区間に関する限り、利便性、速達性その他において、鉄道の位置付けは非常に中途半端だといえる。


 鉄道においてよく言われるのは定時性、安定性であるが、一連の事故を経たJR北海道が安全輸送側に大きく舵を切ったことで、列車の遅れは常態化し、異常時にはあっさりと運休に踏み切るようになった。そのこと自体が間違っているとは決して思わないが、結果的に鉄道の強みは大きく減殺されている。
 加えて2016年の夏から秋にかけての豪雨・台風により、石北本線は複数の箇所で路盤の流失が発生し、長期の運休を余儀なくされた。空港の復旧が済めば飛行機を飛ばせる航空、迂回により運転を確保できるバスに対し、線路がなければ走れない鉄道の脆さを露呈したともいえる。


 高規格道路の延伸により、このままでは今後も石北本線は厳しい戦いを強いられることは間違いない。道はフォローアップ会議の意見を踏まえ、路線維持の方向性を前提として車両更新等にかかる費用の助成を打ち出しているが、運行に伴って発生する赤字や今後必要となる線路維持費用の負担をどうするかはまだ闇の中である。
 この区間を北海道における「骨格」「幹線」と位置付けるのであれば、それなりの施策が必要であるが、こと石北本線に関しては、もうひとつ大きな問題を抱えている。これについては、次回あらためて触れる。


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2018/05/01

2009年世界の旅【88】ユーロスターでフランスへ

 これまでの経過は ⇒こちら。


 11月7日、土曜日。ホテルをチェックアウトし、オックスフォード・ストリートに面したバス停で何度も系統番号と経路を確認してから、10系統、キングス・クロス(King’s Cross)駅行きのバスに乗った。地下鉄の方が確実性は高いが、途中1回の乗り換えが必要になり、重い荷物を持っている身には少々しんどい。2台分のボディをつないだ連節バスは、10分ほどでユーストン(Euston)通りに出て、セント・パンクラス(St Pancras)駅に着いた。


 大英図書館に近いこの一帯には、ロンドンのナショナル・レイルのターミナルのうち3つが近接している。昨年マンチェスターへ行く際に利用した、近代的で平べったい造りのユーストン駅。立派な時計塔を持っているが背丈が低く、武骨なアーケードに囲まれているキングス・クロス駅。そしてロンドンとパリ・ブリュッセルを結ぶ国際特急「ユーロスター(Euro Star)」が発着するセント・パンクラス駅である。


Pb074195 Pb074193 
 本体イングランド中東部への列車のターミナルであるセント・パンクラスは、ひときわ背の高い褐色のゴシック建築の駅舎を擁しており、遠くからでも非常に目立つ。英仏海峡トンネルの開通以来ウォータールー(Waterloo)駅発着だったユーロスターが、ロンドン近郊の高速新線開通とともにセント・パンクラス駅発着に変更されたのは2007年のことである。ユーロスターの発着ターミナルは、ユーストン通りから、そのゴシック駅舎に沿って少し奥へ入った場所にあった。ガラス張りのモダンな新駅舎である。


Pb074196  駅舎の中に入ると、コンコースは広く、自然光を取り入れつつ、控えめに灯された照明が柔らかな高級感を演出している。ヨーロッパ大陸各国と同様、改札口はないが、その代わりに空港と同じような出入国検査場があって、パスポートや乗車チケットのチェックを受ける必要がある。


Pb074197  前年ヨーロッパに来た際、当初予定ではパリからロンドンへ、「ユーロスター」を利用する予定であった。けれども、出発の1か月前に英仏海峡トンネルで車両火災が発生し、「ユーロスター」も運休となったため断念した経過がある。
 1年越しの夢だった「ユーロスター」は、両端の機関車を含めた10両編成の列車が2本連なる、20両の長い編成である。ロンドンとパリという、ヨーロッパの二都を結ぶ特急列車の貫録だろう。1等車の入口には女性係員が立って、チケットのチェックをしている。チケットを見せると、無機質な笑みを浮かべた。


Pb074205  1等車の車内は、淡いベージュを基本にした落ち着いた色合いの雰囲気で、2人掛けと1人掛けのリクライニングシートが通路を挟んで並んでいる。6割ほどの座席が埋まっており、私の座席は、進行方向に向かって右側の1人掛け。幸運なことに進行方向向きの座席である。「ユーロスター・イタリア」もそうだったが、車両の真ん中を境にして座席の向きが変わる「集団見合い式」の座席配置になっている。日本の鉄道と異なり、座席を回転させることができないため、運が悪いと半分の確率で後ろ向きに座らなければならないことになる。


 12時29分、発車。まだ完成して2年の新線のせいか、列車が徐々に高速になっても、大きな揺れはほとんどない。ロンドンの市街地を抜けて10分ほども走るうちに、周囲にはほとんど建物が見えなくなり、牧歌的な風景になった。景色としては単調である。


Pb074202 Pb074203 
 出発して30分ほどすると、飛行機の機内食のような昼食が、私の前に運ばれて来た。私がそれに手をつけようとすると、ちょうど列車がトンネルに突っ込んだ。英仏海峡トンネルである。全長50.5kmの海底トンネルは、青函トンネルよりも数km短いが、海底部分に限って言えば37.9kmと青函トンネルよりも長い。
 このトンネルをくぐり、次に地上に出る時は別の国である。私は軽く興奮した。けれども、その一方で、トンネルの中の景色ほどつまらないものはない。トンネルに入ってしまえば、英仏海峡トンネルも青函トンネルも、ただひたすらコンクリートの壁が続く闇の中であることに変わりはない。このタイミングで食事を運んでくるとは何とも心憎い配慮である。私がそれをゆっくりと食べ終わるとほぼ同時に、列車はトンネルを抜け、フランスの穀倉地帯へと出た。この間、20分強であった。


 延々と、続く。


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