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2018/05/06

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【5】石北本線(その1)

Img_1027  今回、JR北海道が「維持困難線区」にリストアップした路線のうち、特急列車が定期運転される路線が2区間ある。宗谷本線・名寄-稚内と、石北本線・新旭川-網走である。
 宗谷本線は特急運転線区としての歴史はまだ20年に満たないが、石北本線は1964年10月、特急「おおとり」の運行開始以来50年以上の歴史を持っている。一時期は食堂車を連ねた9両編成のキハ80系ディーゼルカーが往来していた路線である。


 その区間が「維持困難線区」にリストアップされた。
 JR北海道によると、2016年度の輸送密度は、石北本線全線で980人/km/日となっている。うち新旭川-上川は1,229人、上川-網走は880人である。1975年が4,357人、国鉄末期の1985年が2,528人であったことから見ても、その落ち込み幅は大きい。
 それでも、鉄道ネットワーク・ワーキングチーム・フォローアップ会議は、石北本線を「北海道の骨格を構成する幹線交通ネットワーク」と位置付け、維持を前提とした検討を進めるべきであるとした。


 石北本線の役割としては、旭川・北見周辺での通勤・通学輸送と、札幌・旭川-北見・網走の都市間輸送がある。輸送量全体に占める特急利用客の割合は、旭川・北見近郊では半分に満たないが、中間の上川-遠軽では7~8割に達する。
 沿線で最も大きい北見市の人口は、2000年までは増加傾向にあったが、その期間も含め、石北本線の輸送量は減少の一途をたどってきた。2016年にJR北海道が発表した2015年度の特急列車利用状況では、減少傾向が続く各方面の中でも、石北本線だけが1991年度比で50%を切るという惨憺たるありさまである。


 札幌-北見間の営業キロは321.5km。この区間を特急「オホーツク」は約4時間半で結んでいる。この所要時間は国鉄時代からほとんど変わっていない。函館へはJR北海道自ら早くから高速化に取り組み、釧路・名寄方面では地元も出資した第三セクターによる高速化工事が実施され、いずれも新型車両の導入を得てスピードアップしている。


Sekihoku
 石北本線の場合は、北見峠、常紋峠という2つの険しい峠越えで線形が悪く、高速化工事のメリットが十分に得にくい環境にあった。このため、北見方面への高速化には一時、距離が長いながら平坦区間の多い北海道ちほく高原鉄道・ふるさと銀河線の活用も検討されたが、この場合、沿線人口のきわめて少ない上川-遠軽の存廃問題に発展する可能性もあった。
 結局、この案は日の目を見ることなく、ふるさと銀河線は2006年に廃止となり、石北本線はその後も高速化や新車導入とは無縁のまま現在に至っている。


 札幌-北見・網走には、高速バス「ドリーミントオホーツク号」が運転されている。札幌-上川間では道央自動車道・紋別自動車道を走り、上川-北見間は距離の短い国道39号線(石北峠)を経由する。総距離は約300kmと鉄道より短く、札幌ー北見の所要時間は4時間35分~5時間と、鉄道との差は小さい。運行本数でもバスは夜行便を含めて10往復設定されており、1日4往復、しかも2往復は旭川で乗り換えを強いられるJRは分が悪い。


 もうひとつ、新千歳-女満別には、70席余りの小型機ながら、日航・全日空合わせて1日6往復の航空便が就航している。所要時間は45~50分。空港アクセスなどの時間を含めても、札幌-北見は3時間以内で結ばれる。費用の点からはともかく、所要時間では鉄道は全く勝負にならない。300kmそこそこの距離の区間としては非常に珍しい。


 やや古いデータになるが、国土交通省の全国幹線旅客純流動調査によると、2010年の札幌-北見・網走における交通手段別のシェアは、自動車52.5%、鉄道21.8%、バス16.1%、航空9.5%となっている。函館・稚内・釧路など道内の他の長距離区間と比較すると、航空とバスの分担率が高く、特にバスの分担率は突出している。鉄道の分担率は最も低く、対稚内にも劣る。少なくともこの区間に関する限り、利便性、速達性その他において、鉄道の位置付けは非常に中途半端だといえる。


 鉄道においてよく言われるのは定時性、安定性であるが、一連の事故を経たJR北海道が安全輸送側に大きく舵を切ったことで、列車の遅れは常態化し、異常時にはあっさりと運休に踏み切るようになった。そのこと自体が間違っているとは決して思わないが、結果的に鉄道の強みは大きく減殺されている。
 加えて2016年の夏から秋にかけての豪雨・台風により、石北本線は複数の箇所で路盤の流失が発生し、長期の運休を余儀なくされた。空港の復旧が済めば飛行機を飛ばせる航空、迂回により運転を確保できるバスに対し、線路がなければ走れない鉄道の脆さを露呈したともいえる。


 高規格道路の延伸により、このままでは今後も石北本線は厳しい戦いを強いられることは間違いない。道はフォローアップ会議の意見を踏まえ、路線維持の方向性を前提として車両更新等にかかる費用の助成を打ち出しているが、運行に伴って発生する赤字や今後必要となる線路維持費用の負担をどうするかはまだ闇の中である。
 この区間を北海道における「骨格」「幹線」と位置付けるのであれば、それなりの施策が必要であるが、こと石北本線に関しては、もうひとつ大きな問題を抱えている。これについては、次回あらためて触れる。


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コメント

昨年久しぶりに全線乗りました。峠、線形、確かにですね。
狭い日本なのに市街地の点在が多い日本、しかも都市部集中で点在のスケール感が出てこない・・・道路・橋・水道・インフラ全部で考えていかないといけないのでしょうね。

投稿: キハ58 | 2018/05/07 23:23

 キハ58さん、いつもありがとうございます。
 お返事が遅れまして申し訳ありません。
 石北本線の上川-遠軽-留辺蘂あたりの線形の悪さと沿線集落の乏しさは、道内でも有数ではないかと思います。キハ183系の特急が大きな唸り声をあげながら峠を越えていく風景は、趣味的にはたまらないものがありますが、現実は厳しいと思います。特に道路との共生は今後どう考えていくか、重要な問題ですね。

投稿: いかさま | 2018/05/16 00:09

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