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2018/09/22

北海道胆振東部地震の後遺症【2】 物流と情報

 北海道胆振東部地震では、鉄道も大きな影響を受けたが、実はその前日、9月5日の未明に北海道の西を通過した台風21号も道内各地の線路に倒木被害をもたらしており、9月5日は多くの区間で終日運休となり、夕方になって運行を再開した一部の区間もダイヤが大幅に乱れた。
 そこへ地震の発生である。大規模停電の発生により電車区間はもちろん、信号や踏切なども機能停止したため、非電化区間も含めて北海道内すべての鉄道が終日運休となった札幌-旭川間の特急は5日から8日まで4日以上にわたって一本も走らず、札幌-新千歳空港間の快速「エアポート」も、5日の夕方に運転再開したのち、6日から7日午前にかけて運休。飛行機の欠航もあり、札幌市内には行き場を失った国内外の観光客があふれた。


 このことは収穫期を迎えた農産物の輸送にも大きな影響を与えた。震源に近い千歳線、室蘭本線(岩見沢-苫小牧)、石勝線では地震により軌道がずれるという直接的な被害を受けたが、これらはいずれも貨物輸送の動脈である。十勝方面からの貨物列車は1週間以上にわたって運休となり、比較的運転再開の早かった北見方面からの玉ねぎも、室蘭本線の不通で札幌貨物ターミナルを経由せざるを得ず、輸送に支障をきたした。大需要地である本州方面への農産物輸送の遅れは、おそらく皆さんの食卓にも影響を与えたことと思う。


 それでも今回の復旧は、路盤流失などこれまでの豪雨による災害に比べればはるかに早かったし、情報も的確だった。
 石勝線での特急炎上に始まる連続事故や、路線廃止問題が表面化して以降、JR北海道の情報提供はこれでもかというほど細かい。ホームページでは現場の被害状況や復旧に向けた課題、進捗状況など、細かな情報を逐一伝えていた。結果的に当初想定した復旧見通しに対し、実際の運行再開はそれよりも前倒しのペースで進んだが、そのことについて異を唱える人は少なかったのではないかと思う。


 そこへいくと電力の復旧に関する情報はかなりの混乱が見られた。一電力会社の供給エリア全体で長時間の停電が発生する、いわゆる「ブラックアウト」と言われる事象は、おそらく日本で初めての事態ではなかったかと思う。地震発生からブラックアウトに至る経緯や、苫東厚真火力発電所への過度の依存など、さまざまな問題が伝えられているが、私は専門家ではないのでそこには言及できない。問題はその情報提供の手順とルートである。


 地震以降、必死に発電所の復旧に取り組んでくれた北電の現場の人々に対しては感謝しているが、本来北電の口から語られなければならない被災状況や復旧見通しに関する情報は、すべて経済産業省からもたらされた。しかも誤った、あるいは予断を持った形でである。


 経済産業大臣は当初、まったく被害状況が見えない中で「数時間以内に復旧のめどを立てるよう指示した」と語った。北電が何らの情報提供をしない中での発言であり、実際にはブラックアウトまで高温で稼働していた苫東厚真火力発電所の設備は点検もできない状況であったはずで、これだけでも実情を無視した無責任な発言である。
 しかも悪いことに、一部のマスコミがこれを「数時間以内に復旧させるよう要請した」と報道したことで、私を含めた多くの道民に楽観的な予断を与える形になった。


 その後も経済産業大臣は「~を命じた」「~の指示を出した」と誇らしげに記者会見をしてみせたが、復旧見通しはだんだん後退していった。まず最悪の事態を想定した復旧見通しを示したうえで、状況が見えるにしたがって順次前倒しで作業を進めてきたJR北海道とはずいぶん様子が違う。
 プレッシャーを与えて作業を急がせる姿勢はある場面においては必要だろうとは思うが、不確かなものを前のめりに情報として提供すれば余計な混乱を与えることにしかならない。北電の情報提供の在り方にも問題があったであろうことは大いに想像がつくのだが、このあたり、政府と北電との間でしっかりとした意思の疎通があったとはどうにも言い難いようにも思えるのである。


 紆余曲折を経て、「1号機が9月末、2号機が10月中旬、4号機は11月」にまで伸びた苫東厚真の復旧は、実際には前倒しされ、9月19日に1号機が稼働、2号機も来週にも動く方向で準備が進められていると聞く。
 2割を目標としていた節電は、その後数値目標を取り下げて「需要1割減に向けた節電」に変わり、苫東厚真1号機が稼働した19日には「これまで通り無理のない範囲での節電」に緩和された。だがこれとて、北電のプレスリリースは慎重に言葉を選んでいるように感じられるが、行政から矢継ぎ早に届く文書を見ると「これまでのような節電は必要なくなりました」とはっきり断じている。


 苫東厚真が1号機のみしか復旧していない現在の供給能力では、地震発生前の水準を基準にするとピーク需要に対して供給余力は3~4%程度と誰が見ても綱渡りに近い状況である。北海道はこれから暖房需要が拡大していく季節を迎える。しかも老朽化した火力発電所(一番古いものは1968年だとか)がフル稼働している状況でこれを言い切る感性は恐ろしい。繰り返すが私たちが欲しいものは淡い期待ではない。正しい情報である。


 情報といえば、地震発生日の午前中、私は複数の知人から、「札幌市全域で6時間後に断水が始まる。復旧には2、3日かかる」というメールを受け取った。SNS上でもこの情報は広く拡散されたが、同日午後には報道によりデマだと判明する。実際のところ、液状化の被害を受けた清田区などでは1万戸余りが断水したものの、私の家では電気は来ないが水だけは止まることはなかった。


 似たような情報は札幌市だけでなく道内多くの自治体でも広まっていたようである。こうした不届きな情報を発信する方も発信する方だが、混乱の渦中にあった一般市民ならばともかく、事実確認をすることなく拡散した道内出身の国会議員と某野党の公式アカウントもあったという。与党も野党も揃って情報を粗末に扱い道民を振り回す。「ズレている」という言葉が非常にしっくりくる。



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コメント

おはようございます。
電力のこと、驚きました。数年前に米国で発生した時は、対岸の火事のように見えていたのですが、まさか・・・
トップページの写真、いいですね!
記念が2つ^.^/

投稿: キハ58 | 2018/09/22 09:25

師匠、記事の様子から察するには普通の生活に戻りつつあるようで安心しましたが…まだいろいろ不便な事あるでしょうけど
師匠は行政やお仕事に働きかけ
明るい北海道の未来を築きあげてゆく方だと弟子は
思ってますので今回の事を教訓とし大好き北海道を良い方に導いて下さるお一人となって下さるように願っています♪
私は影響力のある言葉を持ってないので苦手な牛乳を健康の為と少しでも協力の意味で北海道牛乳いただいてます♪
北海道さんまも心配でしたが安く都内でも購入出来そうでよかったですheart04
美味しい季節heartこの季節にいただこうと思ってます

投稿: ゆきぱんだ | 2018/09/23 05:18

 キハ58さん、いつもありがとうございます。
 北海道民としては、東日本大震災もそうですが、熊本、大阪と大きな地震が続く中、どことなく他人事のような感じで過ごしてきていたのだろうと思います。そのあたりがこうした事態に直面した時の稚拙さに表れているのでしょうね。


 トップの写真はもはや私の家宝となった品物です。作成者本人には断りなしですが、私がいただいたんだから大丈夫だろう、と勝手に解釈して載せています(笑)

投稿: いかさま | 2018/09/24 22:23

 ゆきぱんださん、いつもありがとうございます。
 この北海道は私ごときの力では何も動かないほど大きな大地ですが、今回のことは間違いなく教訓になりますね。北海道を陰から支える仕事の末席に連なる人間としては、なんとかいい方向に向けていけるように頑張らなきゃな、と思っています。
 おかげさまで道内でも品薄だった商品の出回りが少しずつ増えてきていますが、牛乳などは産地段階での生産量の低下などまだまだ厳しい状況が続いているようです。買い占めろ、とは言いませんが(笑)、たくさん消費していただければ、きっと北海道の農家さんの励みになるはずです。

投稿: いかさま | 2018/09/24 22:28

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