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2018/09/15

北海道胆振東部地震の後遺症【1】牛乳と電気

 北海道胆振東部地震から1週間あまり。震源に近い厚真町をはじめ、道内全体で41人の方が亡くなる大きな災害となり、厚真町や鵡川町、門別町の一部などでは未だに水道が復旧しておらず、不便な生活を強いられている方がたくさんいる。


 その一方で札幌では、液状化などによる建物・道路等の被害が発生した清田区や東区・北区の一部を除くと、インフラも復旧し、ほぼ平穏な生活が戻った。けれども、納豆や豆腐、食パン、牛乳といった、いわゆる「日配品」の出回りはまだ少なく、数量制限付きでの販売だったりする。
 なかでも牛乳とその原料となる生乳については、本州にも少なからぬ影響を及ぼしており、新聞等で報道される機会も多い。


 北海道は生乳生産で全国の5割を超えるシェアを持っており、本州でこの時期流通する牛乳の3割強が北海道産の生乳を原料としている。
 今回の地震による大規模停電では、電源の復旧に長いところで2日以上を要したが、機械化の進む道北・道東の酪農地帯では搾乳作業ができない事態に陥った。
 乳牛は定期的に搾乳をしないと、乳が張って「乳房炎」を起こす。乳房炎は母体に免疫低下などの影響を及ぼし、他の疾病を引き起こしたり、最悪の場合は乳牛としての機能を果たせなくなる恐れがある。治療のために投薬をおこなえば、生乳の品質保持のために出荷が禁止されることになる。


 東日本大震災以降、大規模農家では自家発電機の普及が進んでいるが、まだ保有していない農家も多い。JAなどの協力も受けて急遽発電機の手配をおこない、懸命な搾乳作業がおこなわれた。
 ところが今度は搾った生乳の保管ができない。生乳は細菌の繁殖や変質を抑えるため、3~4度の低温で冷却しなければならない。しかし大半の乳業メーカーは停電により稼働停止し、生乳の受け入れができなくなった。日々生乳を出荷する酪農家の保管能力はそれほど大きくなく、自家発電の能力では生乳の冷却まで賄えないところが多い。出荷できずに廃棄せざるを得なかった生乳は数万トン規模に上るとされる。


 道内の乳業メーカーは、大半が8日までに操業を再開し、生乳の受け入れと牛乳・乳製品の製造を始めているが、数日にわたって生産・流通がストップした影響もあり、需要に対して供給が追い付かない状況が続いている。搾乳できずに乳房炎を発症した乳牛も多く、生産力の低下も懸念される。流通が正常化するためにはもう少し時間がかかりそうである。


 一方、その電力であるが、北海道電力の主力である苫東厚真火力発電所が3基とも稼働停止する事態が続いており、電力供給は綱渡りである。北電や政府、道は、地震発生以降、家庭・企業に対し、需要のコアタイムである8時30分~20時30分までの時間帯における2割程度の節電を呼び掛けた。


 けれども、実際の全道ベースの節電は10~15%程度で推移した。東日本大震災以降、泊原子力発電所の停止などもあって、私の会社でもすでにかなりの節電を進めている状況でもあり、2割の節電はかなりハードルが高い。エレベーターの半数以上を止め、事務室の日中完全消灯など、かなり不自由な状況まで取り組んでも、2割に届くかどうかというところである。北海道庁では5割の節電を実現したそうだが、逆に今までどんだけ電気使ってたのよ、と少々勘繰りたい気分になる。


 停止していた発電設備の再開など供給能力が少しずつ回復する中、当面は計画停電を回避できる見通しとなり、一律2割の節電要請は緩和されることになった。それでも苫東厚真火力発電所の復旧は、3基のうち一番早いもので9月末、一番遅い4号機はタービンの損傷もあり11月までかかると言われている。気温が下がり、暖房用電力の使用が増える時期に向けて、需給はいよいよタイトになる。


 北電からは「需要量1割減に向けた節電の協力」をお願いされている。使いたいところに使えない不便さはあるが、最低限の生活、また北海道の農業生産を守るためには当面我慢をしなければならない部分もある。
 むしろ電気が使えるというそのこと自体の有難さをいやというほど再認識した今回の地震の後遺症の中で、懸命の復旧作業を続ける北電の現場の方々には感謝をせねばならないと思う。

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コメント

こんにちは!
酪農家の方々の事を
思うと、本当に気の毒でなりません。
供給が十分にまわるように
なってからは
牛乳をもっと積極的に飲んで
牛乳離れを食い止める一助になるくらいしか
私にはできませんが・・・。

厚真の人たちの事を思うと、
納豆が食べられないくらい
どうってことないですね。

いかさまさんの言う通り
復旧工事に努力されている
北電はじめすべての人たちに
感謝したいです。

投稿: monna | 2018/09/16 08:12

これだけ大規模に長期間、停電したのは初めてではないかな?
3.11でさえ、私の所は停電無しでしたからね。
オラ、どう考えても北電の考えが甘いような気がします。大きな設備に集中すれば安く電気を作れるけど、何が起きるか判らない現代において、それは大きなリスクを伴うことを忘れていたってことだよね。
毎日食べてるヨーグルトを買いに行ったら、北海道地震の影響とのことで入荷していませんでした。

投稿: しゅうちゃん | 2018/09/18 16:40

 monnaさん、コメントありがとうございます。
 このコメントを書いている今日現在も、牛乳の入荷量はまだ完全に回復していませんね。搾る量も加工体制もまだ万全ではなく、学校給食向けが優先されてもいるようですので、もうしばらくは我慢です。
 私は秋から冬にかけて牛乳を飲むとおなかに来てしまう人なので影響は少ないですが、子供たちにはたくさん飲ませたいと思っています。牛乳離れも言われる今日この頃、生産が回復した暁にはmonnaさんもいっぱい飲んでくださいね(笑)

投稿: いかさま | 2018/09/22 02:03

 しゅうちゃんさん、コメントありがとうございます。
 北電にとっても今回の事態が想定外だったのだろうと思いますが、大きな災害が連続して起こっている昨今の状況を考えると、国民の生活を支えるインフラにとって「想定外」で片付けることは許されない世の中になりつつあるように思います。
 私には難しいことはわかりませんが、約550万人に向けた需要のために、全道くまなくカバーできる発送電設備を維持しなければならない北電にとっては合理化は不可避だったのでしょう。意外とJR北海道の問題と同根なのではないか、という気もしてきます。

 ヨーグルトについてはご迷惑をおかけしております。優先順位の高い飲用乳向けの需給が落ち着いてくると、いずれ加工乳製品の生産も回復すると思いますが、産地からは生乳の生産量が落ちているという報告もちらほら聞こえてきます。もう少し時間がかかりそうですね。

投稿: いかさま | 2018/09/22 02:09

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