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2018/12/25

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【9】札沼線末端区間廃止決定とJR北海道の現況

Photo  JR北海道は12月21日、札沼線・北海道医療大学-新十津川、47.6kmの廃止を届け出た。同区間は2020年5月7日をもって廃止となることが決定した。JR北海道の閑散区間廃止では、石勝線支線(新夕張-夕張)に次ぐ決定である。


 以前の記事の中でも触れた、JR北海道の2017年度の線区別収支と利用状況によると、この区間の輸送密度は前年度からさらに9人減の57人/km/日と、各区間の中ではぶっちぎりの最下位である。営業費用の減少と区分の見直しにより、営業損益は若干改善したものの、3億1,400万円の赤字となっている。


 この区間に対し、JR北海道は代替交通機関の整備と損失補てんのために、総額約18億円の支援をおこなう。鉄道運営の赤字の6年分に相当する金額で、うち約15億円は今後20年間にわたって支出される。この数字は沿線自治体にとっては「満額回答」ともいえる回答だが、その一方で支援する側のJR北海道は、国からの財政支援を受けてなお、2022年には資金ショートに陥るとされており、何とも不思議というか、アンバランスな話である。


 ちなみに、JR北海道全体での輸送密度は、2016年度と比較して79人減の5,122人/km/日となった。線区別にみると、札幌を中心とする4方向(札幌-苫小牧、岩見沢、北海道医療大学、小樽)の近郊輸送がいずれも前年を上回っている。また、石勝線・根室本線(南千歳-帯広)、根室本線(滝川-富良野)、富良野線が前年を上回っている。これらは、前者の場合は一昨年の災害による長期運休の影響からの回復、後者はインバウンド需要増加の影響によるところが大きいのではないかと思う。


 これ以外の路線は軒並み前年から輸送密度は減少している。北海道新幹線が前年比2割減となったことは前にも書いたが、この影響を受けた函館本線・室蘭本線などの接続線区にも大きな影響を与えている。このこと自体は予想されたことではあるが、どうにも腑に落ちないのが、存廃問題を突きつけられた13区間のうち、先に挙げた根室本線(滝川-富良野)と富良野線を除く11区間で軒並み低下していることである。


 11区間のうち3区間は、廃止が決定した札沼線(北海道医療大学-新十津川と、災害による運休、バス代行が続く根室本線(富良野-新得)、日高本線(鵡川-様似)である。いずれも輸送密度が200人/km/日を下回っており、置かれている状況そのものが、鉄道以外の手段による代替が可能だということを暗黙の裡に示している。


Dscn0029  問題はこれ以外の8区間である。宗谷本線(名寄-稚内)で約3%、石北本線(上川-網走)で約7%の減少は、合理化のための特急系統分割の影響も受けていると考えられるが、それ以外の区間も少ないところで約3%、留萌本線や根室本線(釧路-根室)に至っては3割以上の大幅減となっている。全体人口も、鉄道の主たる利用者である通学需要も減少傾向にある背景は理解できるが、それはそれとして減り過ぎである。存続に向けた地元の思いが伝わってこないように感じるのは私だけだろうか。


 先ごろ発表された2019年3月のJR北海道ダイヤ改正の概要では、北海道新幹線の青函トンネル部の速度向上により、東京-新函館北斗の最速所要時間が4時間を切ることになった。しかし、4分程度の短縮がシェアの引き上げ、収支改善につながるかどうかは疑わしい。函館市中心部まではアクセス列車に乗り換えて4時間半近くかかる状況は変わらず、札幌方面への接続も相変わらず悪い。降雪等による遅れの影響をほとんど受けない下り列車でも、乗り継ぎ時間は最短16分、最長では42分にもなる。「新幹線接続特急」とは言い難い。


Dscn1185  また、石勝線・追分-新夕張で、普通列車の半分を削減し、1日上下5本となる。比較的乗降の多い追分・新夕張に停車する特急を増加させることで一部をカバーするが、普通列車は通学等に絞った最小限の運転となる。この区間は3年前の普通列車大量削減の際にも対象となっており、3年前との比較で普通列車は3分の1になった。こうした区間が、今後ますます増えてくる可能性もある。


Dscn6266  鵡川以遠の災害運休が続く日高本線については、沿線7町長による協議会で、日高門別-様似間95.2kmの廃線を受け入れ、鵡川-日高門別間20.8kmについては、鉄道による復旧を引き続き求めていく方針で合意したと先日報じられた。
 しかし、のちに浦河町長が「あくまで全線の復旧を求めていく考え」と述べるなど、方向性は定まり切っていない。加えて、鵡川-日高門別では先日の地震の影響で線路設備に新たな損傷が確認された。この区間だけでも復旧には2年の工期と5億円の費用がかかるとされ、ハードルはさらに一段高くなった。


 札沼線が「満額回答」を得て廃止を受け入れたことは、これ以外の対象路線の交渉にも少なからず影響を与えると思われる。協議を引き延ばせば、それだけ経営が悪化するJR北海道の財布の紐が固くなる可能性も否定できない。それならばなるべく早く、と、沿線自治体が動き出す可能性もある。
 
沿線自治体もJR北海道も厳しい現実を突きつけられている。年が明ければ石勝線支線の廃止も迫る。引き続き今後の動きからは目が離せない。

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コメント

今期から、外国人向けの「北海道レールパス」や大人の休日倶楽部会員向けの「大人の休日倶楽部パス」による収入の計上方法が変更されました。従来は、JR北海道が想定していたモデルルートを利用したと仮定して線区別の収入に計上していましたが、今回からはより詳しい利用状況を調査し、各線区への計上方法が見直されました。理由としては、フリーパスの発売数が増加したことで、収入に与える影響が大きくなってきたことが挙げられます。

結果、札幌、小樽、富良野など道央圏での利用が多く、道東・道北方面の利用が当初の予想以上に少ないという実態が分かってきました。やはり主要な玄関口となる札幌や新千歳空港から遠い・時間がかかる場所は不利なのでしょう。これは新幹線効果が落ち着いた道南方面も同じです。

富良野や小樽・ニセコ方面などが前年度から利用を伸ばす一方で、網走や釧路方面のローカル線は大きく落ち込みました。鉄道による観光地めぐりがしづらいなどの理由から、フリーパスによる利用者がJR北海道の想定を大きく下回っていたようです。

確かに、札幌から釧路・網走・稚内へは特急でも4〜5時間はかかるので、レンタカーでも気軽に行けるとは言えない場所です。そもそも札幌や新千歳空港から直通する手段がない地域もあります。女満別、帯広、釧路、中標津といった地方空港の存在も痛手になっていると考えられます。観光が生命線なのに、肝心の観光客が来てくれない…というより鉄道でそこを訪れるのが難しいというのは、JR北海道にとって致命的と言えますね。

投稿: 龍 | 2018/12/25 17:01

 龍さん、いつもありがとうございます。
 人口の減少や少子化など、基礎的な乗客数が増加しない以上、観光客の動向がJRの利用状況を変えるといっても過言ではない状況なのだろうと思います。そう考えた時に、やはり核である新千歳空港から比較的近いところにある観光地が、北海道への入門編として、日本人にも外国人にも手頃ということなのでしょうか。
 龍さんのコメントからも、結局のところ観光客の入込促進効果は飛行機が軸であって新幹線はその役割を果たし切れていないという図式が浮かび上がってきます。道東や道北には魅力的な風景がたくさんあるのですが、そこへの足としてJRが活用できる状況にないという事実。先日、五能線を旅して、鉄道と風景のコラボレーションを目の当たりにしてきただけに、残念でなりません。

投稿: いかさま | 2018/12/31 23:00

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