JR北海道経営問題

2018/05/28

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【7】石北本線(その3)

 ここまでの内容はこちら。⇒その1 その2


Dscn6202  札幌・旭川と北見という10万都市を結ぶ都市間輸送、旭川・北見近郊の都市圏輸送を担いながら、利用は低迷し、さらに貨物輸送という問題を抱える石北本線。地形に阻まれて線形が悪いうえに、中間の人口が希薄、冬期間の除雪に多くの費用を要するというハンデの部分も含め、現在のJR北海道の路線が置かれている状況を非常によく象徴している路線であると言える。


 先述した国土交通省の全国幹線旅客純流動調査(2010年)で、札幌-北見間とほぼ等距離にある札幌-函館間の流動を見てみると、鉄道37.3%、航空3.3%、バス2.4%、自動車57.0%となっている。鉄道のシェアは1995年と比べて倍以上に増えている。JR北海道が「スーパー北斗」の運転を開始し、高速化と増発による攻勢に出た時期で、同じ時期に虻田洞爺湖から八雲まで順次高速道路が延伸されたにもかかわらず自動車のシェアが減少傾向にあることは興味深い。
 現時点では高速道路がさらに大沼公園まで延伸される一方、鉄道は当時と比べてスピードダウンしており、若干シェアが変動していると考えられるが、増発と高速化がシェア回復の切り札となることは間違いない。


 とはいえ、札幌-北見・網走間の総流動は1日5,000人にも満たないと考えられ、函館とはそもそものパイ自体が比較にならない。中間の沿線人口を考えても、函館方面と同等の投資をしてもそれに見合う効果は得られない。
 2000年に完成した宗谷本線・旭川-名寄間の高速化工事では、76.2kmに32億円(この他に特急用車両12両で21億円)が投じられ、同区間の最高速度は95km/hから130km/hに引き上げられた。現在は120km/hに抑えられているものの、ハイパワーのキハ261系が最速56分で結んでいる。投資効果としてはこの辺りが参考になるだろう。


 JR北海道の維持困難線区に対する直接的な支援には消極的な北海道だが、特急車両の導入については、宗谷本線高速化と同じ第三セクターを活用したリース方式による支援を表明している。あとは線路の改良だが、峻険な区間が多い石北本線では全線改良には多額の費用が掛かり、自治体の協力も得られまい。そこで比較的平坦な新旭川-上川と西留辺蘂-北見を部分的に高速化できないものか。この辺りまでで札幌-北見で20分程度の短縮は見込めそうである。


Sekihoku  それからもうひとつ、遠軽駅の移転とスイッチバックの解消を検討してはどうか。
 もともと旭川から北見方面に向かう路線は、名寄・紋別を経由して遠軽に達する、今は亡き名寄本線がメインルートであった。後から建設された石北本線は、そこに突っ込む形で遠軽に達している。遠軽駅が平坦地で他に分岐線もないにもかかわらず、不自然なスイッチバックになっているのはこのためである。これが解消されれば、最低でも5分程度、駅の位置によってはもう少し時間短縮効果がある。貨物列車の運行形態も改善される。
 スイッチバックを解消するためには最低でも1kmほど駅を移転させなければならず、遠軽町からは相当な反対があることも予想されるが、石北本線を今後も有効に活用していくために不可欠だと判断されればそれもやむを得ないのではないかと思う。


 こうした施策を積み重ねたとしても、札幌-北見間で、他の交通機関と比較して優位に立てる所要4時間に達するのは少々厳しいかもしれない。だが現状を放置すればジリ貧になることは目に見えている。旭川や北見の通学需要も、少子化が急速に進む現在、見通しは暗い。


2015081501  2016年3月、JR北海道は上川-網走間で普通列車の運転本数を削減するとともに、乗降客が極端に少ない4駅を廃止した。さらに将来に向けて、5つの駅と41か所の踏切を廃止する方向で検討を進めていると地元紙は報じている。
 鉄道を維持するためには、鉄道が本来の役割を果たせる部分に投資を集中し、機能が喪失した部分を思い切って合理化することも必要である。JR北海道本体に限った話ではなく、線区単位でも「選択と集中」という考え方は存在してしかるべきではないかと思う。


 いずれにしても、採算の取れない北海道の地方路線を維持していくためにはお金がかかる。それを民間たるJR北海道単独に負担させるのは理屈に合わない。それでも鉄道を、と声を上げるのならば、相応の負担は覚悟しなければならない。自治体か国かはこの際関係ない。
 高速道路の延伸工事は粛々と進んでいる。道路に突っ込む金があるが鉄道に突っ込む金はない、そう言うのならば、石北本線もさっさと廃止すればよい。大きな期待だけ背負わされながら、近代化から取り残され、日々1,000万円以上の赤字を垂れ流しながら肩身の狭い思いで走り続ける石北本線が気の毒である。



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2018/05/16

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【6】石北本線(その2)

 石北本線を巡るもうひとつの大きな問題は貨物列車の存在である。


 北海道の鉄道は、石炭をはじめとする貨物輸送と、地域の開発を目的として、人口希薄な地域にまで張り巡らされていった歴史を持つ。石炭が斜陽化する中、貨物輸送の柱となっていったのは農産物輸送である。今も農協の倉庫が駅の近くに並んでいるのはその名残である。
 モータリゼーションの進展により、農産物輸送における鉄道のウェイトは低くなった。国鉄分割民営化当時1,500kmを超えていたJR貨物の道内営業路線は、現在1,267.9kmと減っているが、それでも大量輸送が可能な交通機関としての鉄道貨物の役割はまだ大きい。その典型的な例が石北本線を走る通称「タマネギ列車」である。


 国内の玉葱生産量は2015年産でおよそ126万トンだが、その3分の2近くが北海道産。なかでも北見市を中心とする「JAきたみらい」だけでそのおよそ4割、30万トンあまりを全国に向けて出荷している。ピーク時の出荷量は1日1,000トンをはるかに超える
 輸送手段は6割がJRコンテナ、残り4割がトラック(多くは20tトレーラー)+フェリーである。トラック輸送は機動力と速達性においてJRを凌いでいるが、貯蔵性の高い玉葱においては、5t単位での納入が可能なJRコンテナの引き合いは強い。8月から4月にかけて、北見-札幌貨物ターミナルに「タマネギ列車」が設定されるのはこのためである。


 その一方で、JR貨物は2011年、この列車の廃止を打ち出した。理由は機関車の老朽化採算性の問題である。
 機関車の老朽問題は、当初線路規格の低い石北本線には新型ハイパワー機関車(DF200形)は走行できないとされていた故発生した問題であったが、試験運転の結果問題ないことが分かり、2014年以降正式に導入されて解消している。
 だが、ハイパワーのDF200形が投入されたにもかかわらず、タマネギ列車は遠軽でのスイッチバックが必要になる石北本線の特殊性から、「プッシュプル」と呼ばれる機関車2両で列車を挟んで運転する特殊な形態になっており、人手も費用も余計にかかる。季節波動性の高い農産物輸送ゆえ、機関車や乗務員の手配も困難である。


 また、強力な機関車が導入されたとはいえ、石北本線内の列車行き違い設備の状況から、最大編成長は11両に制限されている。5tコンテナ55個、275t分である。
 北見からの列車はこれらのコンテナに玉葱をはじめ地域の農産物を満載にして走る。ところが、札幌からの帰路に運ぶ荷物、いわゆる「帰り荷」は極端に少ない。以前1日3往復が設定されていたタマネギ列車が現在1往復しか運転されないのはこのあたりにも理由がある。列車に乗り切らないコンテナは北見からトレーラーで代行輸送されて、北旭川貨物駅で別の列車に継送される形になっている。


 こうした状況から、産地ではJR貨物が求める運賃の値上げを呑み、さらにはコンテナ68基を自ら調達してJR貨物に提供するなどの手を打ってきた。業界の協力を得て、農産物輸送用の段ボールを札幌地区の工場からJRコンテナで運ぶなど、帰り荷確保の涙ぐましい努力もしている。


 北見地区の玉葱生産量は増加傾向にあり、ただでさえ輸送力が逼迫しているが、最近ではそこにトラックドライバーの不足と物流コストの上昇が追い打ちをかけている。仮に貨物列車が廃止となれば、20tトレーラーに切り替えても14台〜15台の車両とドライバーを用意せねばならない。石北本線沿線では高規格道路の整備も進んではいるが、だからといって簡単に列車廃止、トラック輸送化ということにはならない事情がここにある。


 そしてもうひとつ、今回のJR北海道による「維持困難線区」の問題でにわかに注目を浴びたのが、JR北海道に対するJR貨物の線路使用料の問題である。


 JR貨物は一部の専用線を除いて自前の線路を保有しておらず、JR旅客各社の線路を拝借して列車を運転し、旅客各社に線路使用料を支払っている。
 国鉄分割民営化に際し、採算性が不安視されていたJR北海道・JR四国・JR九州の3社に「経営安定基金」を積み立ててその運用益を赤字補填の財源としたが、同様に赤字が予想されたJR貨物に対しては、これに代えて線路使用料の大幅な減免をルール化した。いわゆる「アボイダブルコスト・ルール」である。


 これは、「貨物列車が走らなかった場合に発生する費用」はすべて旅客会社の負担とし、JR貨物は貨物列車の走行により上乗せとなった費用分だけを線路使用料とするルールである。JR貨物が2016年度に民営化後初めて鉄道事業収支を黒字化したのは、JR貨物自身の自助努力による部分ももちろんあるが、アボイダブルコスト・ルールによる線路使用料の低減の力も見逃せない。


 石北本線のように旅客列車の本数が少ない区間では、重量の大きな貨物列車の走行による線路損傷のウェイトも大きい。こうした事情も踏まえてJR北海道としては線路の維持管理経費も含めて線路使用料を設定したいところだろうが、現状のルールでは不可能である。
 同様の事情を抱えている路線は他にもある。以前に取り上げた根室本線・滝川-富良野間も、北見に次ぐ玉葱の一大産地である富良野地区の農産物輸送に貨物列車を運行しているし、旭川・岩見沢方面からの貨物列車は札幌を避けるために室蘭本線・沼ノ端-岩見沢間を経由する。


 もっとも、アボイダブルコスト・ルールが、結果的にこれまで荷主に対する低廉な運賃を実現したことも見逃せない。
 
JAグループは、JR北海道に対しては石北本線の維持、JR貨物に対してはこれに加えて貨物列車の輸送力確保を訴え続けている。だが、JR北海道は路線維持の条件としてJR貨物に対し、「アボイダブルコスト・ルール」の適用除外を求めていくのは間違いない。そうなれば貨物列車が存置されても運賃はさらなる上昇が見込まれる。物流経費が上がれば北海道産農産物の価格競争力は低下する。値上げを認めなければタマネギ列車の将来はないだろう。一筋縄ではいかない問題がこの路線には横たわっているのである。


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2018/05/06

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【5】石北本線(その1)

Img_1027  今回、JR北海道が「維持困難線区」にリストアップした路線のうち、特急列車が定期運転される路線が2区間ある。宗谷本線・名寄-稚内と、石北本線・新旭川-網走である。
 宗谷本線は特急運転線区としての歴史はまだ20年に満たないが、石北本線は1964年10月、特急「おおとり」の運行開始以来50年以上の歴史を持っている。一時期は食堂車を連ねた9両編成のキハ80系ディーゼルカーが往来していた路線である。


 その区間が「維持困難線区」にリストアップされた。
 JR北海道によると、2016年度の輸送密度は、石北本線全線で980人/km/日となっている。うち新旭川-上川は1,229人、上川-網走は880人である。1975年が4,357人、国鉄末期の1985年が2,528人であったことから見ても、その落ち込み幅は大きい。
 それでも、鉄道ネットワーク・ワーキングチーム・フォローアップ会議は、石北本線を「北海道の骨格を構成する幹線交通ネットワーク」と位置付け、維持を前提とした検討を進めるべきであるとした。


 石北本線の役割としては、旭川・北見周辺での通勤・通学輸送と、札幌・旭川-北見・網走の都市間輸送がある。輸送量全体に占める特急利用客の割合は、旭川・北見近郊では半分に満たないが、中間の上川-遠軽では7~8割に達する。
 沿線で最も大きい北見市の人口は、2000年までは増加傾向にあったが、その期間も含め、石北本線の輸送量は減少の一途をたどってきた。2016年にJR北海道が発表した2015年度の特急列車利用状況では、減少傾向が続く各方面の中でも、石北本線だけが1991年度比で50%を切るという惨憺たるありさまである。


 札幌-北見間の営業キロは321.5km。この区間を特急「オホーツク」は約4時間半で結んでいる。この所要時間は国鉄時代からほとんど変わっていない。函館へはJR北海道自ら早くから高速化に取り組み、釧路・名寄方面では地元も出資した第三セクターによる高速化工事が実施され、いずれも新型車両の導入を得てスピードアップしている。


Sekihoku
 石北本線の場合は、北見峠、常紋峠という2つの険しい峠越えで線形が悪く、高速化工事のメリットが十分に得にくい環境にあった。このため、北見方面への高速化には一時、距離が長いながら平坦区間の多い北海道ちほく高原鉄道・ふるさと銀河線の活用も検討されたが、この場合、沿線人口のきわめて少ない上川-遠軽の存廃問題に発展する可能性もあった。
 結局、この案は日の目を見ることなく、ふるさと銀河線は2006年に廃止となり、石北本線はその後も高速化や新車導入とは無縁のまま現在に至っている。


 札幌-北見・網走には、高速バス「ドリーミントオホーツク号」が運転されている。札幌-上川間では道央自動車道・紋別自動車道を走り、上川-北見間は距離の短い国道39号線(石北峠)を経由する。総距離は約300kmと鉄道より短く、札幌ー北見の所要時間は4時間35分~5時間と、鉄道との差は小さい。運行本数でもバスは夜行便を含めて10往復設定されており、1日4往復、しかも2往復は旭川で乗り換えを強いられるJRは分が悪い。


 もうひとつ、新千歳-女満別には、70席余りの小型機ながら、日航・全日空合わせて1日6往復の航空便が就航している。所要時間は45~50分。空港アクセスなどの時間を含めても、札幌-北見は3時間以内で結ばれる。費用の点からはともかく、所要時間では鉄道は全く勝負にならない。300kmそこそこの距離の区間としては非常に珍しい。


 やや古いデータになるが、国土交通省の全国幹線旅客純流動調査によると、2010年の札幌-北見・網走における交通手段別のシェアは、自動車52.5%、鉄道21.8%、バス16.1%、航空9.5%となっている。函館・稚内・釧路など道内の他の長距離区間と比較すると、航空とバスの分担率が高く、特にバスの分担率は突出している。鉄道の分担率は最も低く、対稚内にも劣る。少なくともこの区間に関する限り、利便性、速達性その他において、鉄道の位置付けは非常に中途半端だといえる。


 鉄道においてよく言われるのは定時性、安定性であるが、一連の事故を経たJR北海道が安全輸送側に大きく舵を切ったことで、列車の遅れは常態化し、異常時にはあっさりと運休に踏み切るようになった。そのこと自体が間違っているとは決して思わないが、結果的に鉄道の強みは大きく減殺されている。
 加えて2016年の夏から秋にかけての豪雨・台風により、石北本線は複数の箇所で路盤の流失が発生し、長期の運休を余儀なくされた。空港の復旧が済めば飛行機を飛ばせる航空、迂回により運転を確保できるバスに対し、線路がなければ走れない鉄道の脆さを露呈したともいえる。


 高規格道路の延伸により、このままでは今後も石北本線は厳しい戦いを強いられることは間違いない。道はフォローアップ会議の意見を踏まえ、路線維持の方向性を前提として車両更新等にかかる費用の助成を打ち出しているが、運行に伴って発生する赤字や今後必要となる線路維持費用の負担をどうするかはまだ闇の中である。
 この区間を北海道における「骨格」「幹線」と位置付けるのであれば、それなりの施策が必要であるが、こと石北本線に関しては、もうひとつ大きな問題を抱えている。これについては、次回あらためて触れる。


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2018/04/16

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【4】根室本線(滝川-富良野-新得)

Furano
 石勝線の千歳空港(現在の南千歳)-追分、新夕張-新得が開業したのは1981年10月のことである。このとき、追分-夕張の夕張線のうち、それまで紅葉山と名乗っていた新夕張までの区間が石勝線に編入されて、札幌と帯広・釧路を結ぶ幹線の一部となった。


 根室本線・滝川-新得の凋落はここから始まった。石勝線の開業前、札幌と帯広・釧路を結ぶ特急・急行のメインルートは滝川・富良野経由だった。石勝線開業を機に、特急「おおぞら」の全3往復と、急行「狩勝」4往復のうち2往復が石勝線経由となった。2往復がかろうじて残った滝川経由の「狩勝」も徐々に縮小されて1990年に廃止、快速列車に格下げとなって、この区間から優等列車が消えた。


1991046  それでも、富良野という道内有数の観光地を抱えていたこの区間では、JR発足後、行楽シーズンを中心に「フラノエクスプレス」などの観光列車を運行するなど旅客獲得に向けた努力も続けられている。
 しかし残念ながら営業成績は精彩を欠いている。石勝線開業直前の1980年度、4,944人/km/日だった輸送密度は、石勝線開業後の1985年度には729人となり、2016年度には滝川-富良野が432人、富良野-新得は154人となっている。


 沿線の自治体のうち、赤平市・芦別市は空知総合振興局に属し、岩見沢・札幌への志向性が高い。富良野市と南富良野町は上川総合振興局管内で、旭川との流動が大きいが、観光客も含めて札幌方面への一定の流動もある。ただし、4市町とも人口は減少傾向にあり、特にかつての産炭地である赤平市・芦別市はここ30年で半減している。


 とはいえ、富良野は、富良野線沿線にある美瑛町と合わせて、雄大な北海道の自然を楽しめる観光地として人気が高い。昨今では中国などからの、いわゆるインバウンド客も増加している。私は仕事で富良野・美瑛周辺を行き来することが多かったが、ドライブインやj観光名所、列車内も含め、時期を問わずどうかすると日本人より中国人の方が多いのではないか、と感じることもしばしばだった。


 インバウンド客は「ジャパン・レール・パス」など割引率の高い外国人専用パスを利用する人が多く、JR北海道の収益への効果は微々たるものかもしれないが、滝川-富良野間の根室本線は、札幌・千歳を基点とした旭川方面への周遊ルートに組み込み、観光列車やフィーダーバスなどと組み合わせたニーズの取り込みは図れるのではないかと思う。
 また、札幌-富良野間には高速バスも1日10往復が運転されており、地元住民も含めて一定の流動があることを示している。JR北海道の示すとおり、地域における負担等も含め、鉄道を残していくための協議は進められてしかるべきだと思う。


Dscn1060  一方、富良野-新得間の状況は厳しい。南富良野町の人口は2,500人あまりしかなく、そのほとんどが富良野を指向している。新得は十勝総合振興局管内に属しており、富良野エリアとの日常的な行き来は限定的である。

 2012年9月、私はこの区間を、当時日本最長時間を走る普通列車だった2429Dで走破したことがある。滝川始発時点から1両きりのディーゼルカーの車内を埋め尽くした内外からの観光客は大挙して富良野で下車。その先は十数人の乗客が残るだけになり、しかもその半数は、最長鈍行列車そのものを目的にやって来た「その筋の人」であった。

 ⇒参考記事 滝川発釧路行き・2429Dの旅(2) 富良野→新得


 加えて、2016年秋の台風被害により、東鹿越-新得(厳密には上落合信号場まで)間は線路がいたるところで損壊して不通になっている。復旧には10億5,000万円を要することから、JRは復旧に消極的で、代替も含めた効率的な交通体系が必要だとしている。
 災害が経営の厳しい鉄道の命脈を断つのは今に始まった話ではないが、行き着くところは金の話である。国も道もその素振りは全く見せない。自治体にしたところで、新得町が関心を示すとは思えず、富良野市と南富良野町だけで負担する力はないだろう。


Img_1528  南富良野町の中心にある幾寅駅。高倉健が主演しヒット作となった映画「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台になった駅である。
 駅前にロケで使用されたディーゼルカーのカットモデルが鎮座しているが、現在、本物の列車は発着していない。この駅に再びディーゼルカーのエンジン音が響く日が来る可能性は限りなく低い。


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2018/04/09

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【3】札沼線末端区間

 札沼線は、札幌駅の隣、桑園から石狩当別を経て新十津川までを結ぶ路線である。もともとは新十津川から先、留萌本線の石狩沼田までを結んでいたが、1960年代後半からのいわゆる「赤字83線」のひとつとして、1972年に新十津川-石狩沼田間が廃止された。
 私の手元にある「時刻表」1964年8月号を見ると、桑園-石狩沼田を直通する列車が6往復、他に札幌-浦臼2往復、札幌-石狩当別2.5往復、浦臼-石狩沼田1往復が運転されているだけの純然たるローカル路線であった。


 現在の札沼線は、石狩当別の1つ先に新設された北海道医療大学と桑園の間が電化され、札幌口では日中でも20分間隔で電車が発着する都市型路線に変貌した。
 一方、北海道医療大学以遠は非電化で本数も激減し、石狩月形までが7.5往復、浦臼までが6往復。浦臼-新十津川間は2年前から1日わずか1往復の運転となっている。北海道医療大学-新十津川間の輸送密度は66人/km/日(2016年度)。1975年度から40年あまりでおよそ9分の1に減っている。桑園-石狩当別間が同じ期間で3倍以上に増えたのと対照的である。


 以上の状況から、JR北海道が維持困難線区として札沼線の末端区間を指定するのは必然であった。先日公表されたフォローアップ会議の報告書の中でも、この区間は12線区で唯一、「バス転換も視野に」と結論付けられている。
 これより前、2016年秋にはJR北海道から沿線自治体に対してバス転換の打診がすでに行われており、沿線自治体も鉄道存続を模索しつつも厳しい情勢にあることを認識している様子である。


 かつて岩見沢に勤務していた頃、私はこの沿線を営業でよく走り回った。石狩当別-新十津川の沿線は、水田を中心に野菜や果実を組み合わせた純然たる農業地帯で、沿線人口が非常に少ない。このエリアはほぼ平坦な地形で、全区間で並行する国道275号線の整備状況はよく、線形も悪くない。線路と国道は、月形町内と新十津川町内で500mほど離れるところがあるほかは、ほぼ「併設」に近い状態である。

Sassho
 空知総合振興局(昔の空知支庁)に属する月形・浦臼・新十津川の沿線3町の旅客流動は、振興局所在地である岩見沢と道内最大都市である札幌に向いている。
 この沿線から札幌方面へ向かう客は、バスや車で、石狩川をはさんだ東側を走る函館本線の駅へ出る方が利便性が圧倒的に高い。石狩月形からは岩見沢まで20km弱の道のりだが、北へ行くにしたがって2つの路線は接近し、新十津川から滝川へはわずか4kmほどである。一番近いところでは2kmほどしか離れていない。
 函館本線には30分ないし1時間おきに特急電車が走っている。札幌につながっているとはいえ、途中まで1日1往復ないし7.5往復の札沼線ではまったく勝負にならない。


 2018年2月16日にJR北海道から沿線自治体による「札沼線沿線まちづくり検討会議」に対して提案された新たな交通体系の案では、石狩当別(北海道医療大学)-石狩月形、石狩月形-浦臼、浦臼-新十津川の3ブロックに分けてバス路線を整備し、浦臼-奈井江、新十津川-滝川に運転されている既存バス路線と函館本線の連携による利便性確保も見据えている。一気通貫の代替路線が整備されないのは珍しいパターンだが、沿線自治体相互間の利用が極めて少ないこの路線の性格をよくあらわしているとも言える。


 ⇒JR北海道によるプレスリリースはこちら。


 「地域の皆様との協議をお願い申し上げたいと考えております」とプレスリリースは結ばれているものの、かなり突っ込んだ内容になっていることを見ると、沿線自治体との間では代替交通機関の整備に向けて水面下での打ち合わせがかなり進んでいるのではないかと思う。石勝線夕張支線と異なり、利害関係のある自治体が複数あることから、すんなりと話が進むとは思えないが、提案に沿ってブロックごとに自治体が個別交渉をおこなっていけば、案外早く結論がまとまる可能性もある。


Photo
 新十津川駅は現在、「日本一最終列車が早い駅」として話題になっており、コアな鉄道ファンの姿も散見されるようだが、JR北海道による特定日調査の結果は、5年間平均で1日の乗客数は4.2人。北海道医療大学より北の駅では、石狩月形(79人)、浦臼(14人)の他はすべて平均10人以下で、浦臼-新十津川間の中間駅は4駅とも1人以下という惨憺たるありさまである。
 もはや地域が鉄道という存在をほとんど当てにしていないことが如実に示されているが、一方でわずか1往復という列車の設定からは、JR北海道も地域住民の利用をまったく当てにしていないことがありありと窺える。実に気の毒な路線だというよりほかない。



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2018/04/03

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【2】石勝線[夕張支線]

Dscn1193  JR北海道が公表した維持困難線区10路線13区間の中で、いち早く廃線に舵を切ったのが石勝線の通称「夕張支線」、新夕張-夕張である。北海道の鉄道の中では比較的長い歴史を持つ部類に入るこの路線は、来年3月末限りで127年の歴史に幕を下ろすことが、先日地元自治体とJRの間で合意された。


Yuubari  夕張支線は、1892年に採炭を開始した夕張炭鉱の石炭を室蘭・小樽などの港を介して本州へ輸送するため、炭鉱の開発元である北海道炭礦鉄道(「北炭」。現在の北海道炭礦汽船)によって同年に開業された。
 夕張周辺ではその後も北炭及び三菱鉱業(のちの三菱石炭鉱業)により炭鉱の開発が進んだが、高度成長期以降のエネルギー政策転換や良質な海外炭の輸入増加、さらには頻発したガス爆発事故により、夕張炭は競争力を失っていく。1960年代からは炭鉱の閉山が相次ぎ、1990年の三菱南大夕張炭鉱を最後にすべての炭鉱が閉山し、小規模な採掘が細々とおこなわれるだけになっている。


 石炭産業が斜陽化する中、夕張市は採炭施設を買い取って観光施設化するなど、観光都市への脱皮を目指したがことごとく失敗。2006年に夕張市は財政再建団体となり事実上破綻した。人口の流出にも歯止めがかからず、1960年に116,908人に達した夕張市の人口は、2018年2月の段階では8,300人余りまで減少している。
 夕張支線は1990年の南大夕張炭鉱閉山で貨物輸送を廃止して旅客専用となり、炭鉱近くにあった夕張駅も二度の移転で市街地の手前、リゾートホテルに面する立地となった。だが沿線人口減少による旅客減は止まらず、2016年度の輸送密度はわずか80人/km/日となり、1日5往復の普通列車が走るだけとなっている。


 こうした状況を背景に、JRが維持困難線区を打ち出した際の夕張市の対応は素早かった。夕張支線の廃止は不可避と判断した夕張市は、具体的な線区の公表に先駆けて2016年8月から鉄道廃止を前提とした代替交通網の構築についてJRから派遣された社員を含めて協議を進めてきた。最終的には南清水沢地区に整備中の拠点複合施設の用地確保と7億5,000万円の拠出金を勝ち取って、夕張支線の廃線問題は決着を見ることになった。


 廃止区間にはこれまで並行する路線バスはなかったが、鉄道廃止後は夕張鉄道バスにより「南北軸路線バス」として、現在の鉄道の倍、10往復が運転される。沿線から外れた集落へは、デマンド交通やタクシー利用への補助などを活用したフィーダーサービスをおこない、最大限の利便性を確保する予定になっている。
 JRからの拠出金は、南北軸路線バスの初期整備と運行補助に充てられ、およそ20年間の運行を維持できるとしている。この条件は先に廃止になった江差線末端区間よりも好条件で、厚遇過ぎるとの批判もないわけではないが、JRにしても赤字解消の見込みのない路線についていち早く廃止に同意した所に対し、最大限の条件を提示するのは当たり前のことだと思う。夕張支線の赤字額は年間約1億6,000万円。廃止の時期が遅れればそれだけJRの台所事情も厳しさを増していく。


 夕張支線は、赤字解消が喫緊の課題であったJR北海道と、財政再建の途上にあって街自体をコンパクトにまとめていく必要性があった夕張市との利害が一致し、全区間が夕張市内に存在するため近隣自治体との調整や協議が必要なかったこともあって、迅速にこの問題に対応することができた。
 この勇気ある決断が夕張市の将来にとってどうだったのかは今後の展開を見ないと判断できないが、現時点を見る限り、少なくとも利便性向上の見通しもない鉄道にすがってズルズルと問題を引き延ばすよりはよほど良い決断なのではないか、と思える。


【参考】夕張市長による記者会見内容(30年2月20日・夕張市HP)



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2018/03/26

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【1】

 3月23日、JR北海道と夕張市は、石勝線の通称「夕張支線」(新夕張-夕張、16.1km)について、2019年4月1日付で廃止することで合意した。


 夕張支線は、先にJR北海道が公表した「JR単独では維持困難な10路線13区間」のひとつである。夕張市はこれにいち早く反応し、地域の交通再編への協力などを求める見返りとして廃止に前向きな姿勢を示してきた。夕張支線の詳細については後日あらためてまとめようと思うが、維持困難区間のひとつである夕張支線の廃止が決定したことは今後の他の区間の協議への転機になる可能性がある。


 2月11日付北海道新聞によると、北海道は10日、道内鉄道網の在り方に関する検討をおこなってきた「鉄道ネットワークワーキングチーム・フォローアップ会議」の報告書を公表した。これまで個別の路線の存廃については判断しないというあいまいな姿勢を続けてきたことで批判を受けてきた道が、今後の路線の在り方についての判断をオープンにしたことで注目されている。

 ⇒報告書の内容はこちら。(北海道交通政策局)


 報告書は、個別各路線の実態をふまえ、かなり踏み込んだ内容になっている。問題の焦点は、それらの区間の処遇である。座長を務めた岸邦宏北大教授は、「鉄路の存廃を優先順位や勝ち負けでまとめるべきではない」という主旨のコメントを公表しているが、各区間ごとの「鉄道網の在り方」の結びの表現を見ると、夕張支線を除く12区間を、路線維持に向けた優先度を軸に、以下のとおり5段階に分類しているのがわかる。( )内の数字は2016年度の輸送密度である。


1.「維持に向けてさらに検討を進めるべき」区間
宗谷本線 名寄-稚内 183.2km(364人)
石北本線 新旭川-網走 234.0km(980人)

2.「地域における負担等も含めた検討・協議を進めながら路線の維持に最大限努めていく」区間

富良野線 富良野-旭川 54.8km(1,545人)
釧網本線 東釧路-網走 166.2km(463人)
根室本線 釧路-根室 135.4km(457人)

3.「地域における負担等も含めた検討・協議を進めながら路線の維持に努めていく」区間
根室本線 滝川-富良野 54.6km(432人)
日高本線 苫小牧-鵡川 30.5km(462人)
室蘭本線 沼ノ端-岩見沢 67.0km(477人)

4.「他の交通機関との代替も含め、地域における検討・協議を進めていく」区間
根室本線 富良野-新得 81.7km(154人)
留萌本線 深川-留萌 50.1km(188人)
日高本線 鵡川-様似 116.0km(186人 ※2014年度)

5.「バス転換も視野に、地域における検討・協議を進めていく」区間
札沼線  北海道医療大学-新十津川 47.6km(64人)


Photo_2  この分類の根拠については資料を仔細に見ないと判然としないが、単に輸送密度や営業損失に限らない視点から分類されている。つまり「色」がついているわけで、これに関しては賛否両論があろうかと思う。
 また、2.以下の10区間については「地域における負担等も含めた検討」をうたっているものの、財源の手当てや拠出元についての言及はない。報告書の言を裏返せば、「幹線交通として維持すべき区間ではないから道としては負担しない。必要ならば地域で負担するべきだ」と言っているようにも聞こえる。


 道は国と自治体とのパイプ役になって財政支援を要請する一方、自らもJRに対して、第三セクターを活用した車両・設備の更新などに一定の支援を行う考えを示している。財政の厳しい道としてはこれが精一杯だとのアピールのようにも受け取れるが、そもそも「維持」が困難だと言っている線区に対しての投資支援はナンセンスである。おそらく特急列車など都市間輸送への支援を念頭に置いての施策であって、維持困難線区への対応は相変わらず他人任せな雰囲気が透けて見える。


 2月27日にはJR北海道の島田社長以下幹部が道議会に招致された。議員からは経営責任の追及、地域との議論を深めろとの非難が十年一日のごとく繰り返され、果ては高規格道路の整備と経営悪化の因果関係であるとか、経営安定基金の取り崩しを求めたりであるとか、勉強も将来ビジョンも足りていないような質問が飛び出した。
 そこには当事者意識も何もない。ここで議論を交わしている道議のうち、地元まで鉄道で行き来している人がどれくらいいるのだろうか、と、新聞を読んでいてそんなことばかりが気になった。



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2018/03/09

【新幹線札幌駅考】その3 「大東案」で決着へ

 北海道新幹線の札幌駅の位置をめぐる問題が、ここに来てようやく決着に向かおうとしている。


 ≪以前の記事はこちら≫

 新幹線札幌駅考
 その1  その2


Sapporo1
 2012年に認可された北海道新幹線の基本計画において、札幌駅のホーム位置は既存の1・2番線を活用することとされていた(認可案)。しかし、在来線のホーム減少に伴い、既存の列車本数を確保することが困難であるとして、JR北海道は2015年、認可案の他、現駅西側案東側案地下駅案を加えた4案を検討していることを明らかにした。


 地下案については巨額の建設費、西側案・東側案については在来線への乗り換えの不便さと市街地からの遠さなどから反対意見が多く、札幌市議会は2015年に認可案による駅設置を求める決議をおこなっている。
 しかし、2016年、JR北海道は、増加するインバウンド需要に対応した快速「エアポート」の増発を念頭に、在来線ホームが削減された場合の旅客列車への影響を試算し、認可案の実現は困難と報告した。このことが、駅再整備に当たっての先見の明のなさや、ホームの数に対する列車本数の処理能力の低さに対する多くの批判を生んだ。


 今年2月4日におこなわれた関係者による協議の席上、JR北海道は既存ホームの併設案(「認可見直し案」)と、東側案の修正版としてさらにホーム位置を東に移した「修正東側案(大東案)」の2案を提示した。鉄道・運輸機構のホームページにその内容が掲載されている。また、地元の北海道新聞や、専門紙の北海道建設新聞がこの内容を詳しく報じているので、そちらを参考にする。下手くそなイメージ図は参考程度ということで添付。


Sapporo2
 鉄道・運輸機構が推している認可案に修正を加えた「認可見直し案」では、当初計画通り既存の1・2番線の場所に島式1面2線の新幹線ホームを設置する。不足する在来線のホームについては、現駅北側に11番線ホームを増設して9線を確保するとともに、札幌駅構内の信号増設と改良、発寒-発寒中央間に退避設備の新設などにより影響を最小限に食い止めることが可能とした。JRの在来線や地下鉄南北線との乗り換え利便性が高い点は特に優位である。


Sapporo3
 一方「大東案」だが、既存ホームに支障しない場所まで東へ移動させ、相対式2面2線のホームを設置する。これにより在来線ホームは1番線を潰すだけで済み、11番線ホームを増設すれば10線が確保できる。在来線ホームと新幹線ホームが離れて乗り換え利便性が低下する一方、到着ホームと出発ホームを分離することで降車客と乗車客の動線を分離でき、専用コンコースの設置により混雑の緩和も期待される。


 工事費用は大東案の方が55億円ほど高くなるが、差額はJR北海道が負担するとしている。あと3年で資金が枯渇するかもしれないと言われている会社の発言とは思えないが、この点だけ見てもJR北海道が施設拡張性の高い大東案を強く推していることは明白である。


 大東案に対し、高橋北海道知事、秋元札幌市長はいずれも当初難色を示したが、JR北海道は2月9日、道・市に加え鉄道・運輸機構、国土交通省を交えた5者協議の席で正式に提案をおこなった。
 認可案を支持する決議をした札幌市議会の間では、外国人観光客が急増したことなどを背景に、広いコンコースが確保できる大東案に対する容認論が広がりつつある。これを受けて秋元市長も大東案に一定の評価を示し、高橋知事も2月21日の記者会見で大東案に賛意を示した。JRとともに基本計画に携わり、はしごを外された格好の鉄道・運輸機構だけが認可見直し案を推している状況である。


 私個人の思いとしては、在来線ホームと新幹線ホームは近接しているのが望ましいと思う。東京駅での京葉線と新幹線の乗り換えはオーバーにしても、渋谷駅での山手線と埼京線など、ひたすら長距離を歩く乗り換えにいい印象はない。札幌駅の場合、新幹線中央から特急列車が多く発着する5・6番線中央までは210mほどというが、運が悪ければ新幹線10両250m、在来線特急7両140mプラス乗り換え通路で500m近く歩くことになる可能性もある。地下鉄南北線や駅前通へのアクセスも悪い。


 赤字に喘ぐJR北海道としては、新幹線が運んできた乗客をいかに在来線列車に誘導し、輸送改善に寄与させるかということも重要な要素のはずである。だとすれば乗り換えの利便性はもっと重視されてもいいように思う。長距離バスや貸切バスに旅客が流れるようでは面白くない。

 また、JR北海道は在来線列車への影響をまだ気にしているようだが、仮に在来線のホームが9線、場合によっては8線に減ったとしても、先述の信号改良や退避設備の増強に加え、札幌-白石間の複々線を改良して最大限活用すれば、在来線ホームをもっと効率的に使えるようになると、私は今でも思っている。


 3月2日におこなわれた5者協議では、大東案における建設費、乗換対策、既存建物と新幹線線路の近接など、費用面や技術面から課題が提示されたが、JR北海道はいずれも解決可能との姿勢を貫いている。そこまで自信を持てるのならば、認可見直し案についても自信をもってもらいたいように思うのだが、そちらからは熱意はほとんど伝わってこない。
 駅位置に関する方向性は3月中にも決定されるとのことである。


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2017/05/18

JR北海道の決算と利用状況

 5月9日、JR北海道は平成28年度決算をプリスリリースした。


 ⇒JR北海道によるプレスリリースはこちら


 営業収入については、台風被害による減収があったものの、北海道新幹線の開業と札幌圏の利用増などにより55億円の増加となった。その一方、営業費用については、主として北海道新幹線に関する修繕費・減価償却費の増加などにより107億円増加した。
 これにより営業損益は前年より51億円悪化して498億円の赤字となった。これを補てんするのが、国鉄分割民営化時に積み立てられた経営安定基金の運用益なのだが、前年度に資産の評価益を一部実現させた反動により大幅に減少し、112億円減少した。その他の営業外損益も含め、経常損益は過去最大の188億円の赤字となった。


 今回のプレスリリースでは、合わせて各路線・区間ごとの輸送密度も公表された。28年度は8月下旬から9月にかけて北海道を襲った台風の影響により、10月ないし12月まで運休となった区間がある。このため、4~3月の通年実績と、台風被害による利用減の影響が出る9~12月を除く8か月間実績の2種類が公表されている。影響度合い等を加味しながら見てみる。


 北海道新幹線については、前年度から大幅に改善し、通年実績で5,638人/km/日と、前年度の海峡線実績比151%となっている。ただしこれについては、開業直後のフィーバーに下支えされた実績であり、年度後半になるにしたがって利用状況が低下してきていることは以前にも書いた。
 ⇒過去記事「北海道新幹線、満1歳の成績表」


 JR北海道が昨秋、「単独では維持することが困難な線区」として公表した、輸送密度2,000人/km/日の区間については、通年ベースでみると押しなべて前年度より輸送密度が減少している。増加が見られたのは、富良野線(富良野―旭川)と、廃線報道でお名残り乗車が増えた留萌本線(深川―増毛)のみである。石北本線(新旭川―網走)は、台風の影響を除いた期間の実績でも前年比14~15%の減少と、旅客離れは深刻である。


 一方、輸送密度2,000人以上の路線は、台風の影響を大きく受けた石勝線・根室本線(南千歳―帯広―釧路)を別にすると、おおむね前年並みから増加の傾向にある。特に札幌近郊の区間では顕著に増加しているが、その中にあって減少傾向を示している区間がある。室蘭本線・千歳線(室蘭―苫小牧―白石)と、函館本線(札幌―旭川)である。


 室蘭本線の場合、長万部―東室蘭では通年で3%程度の増加となっており、函館本線(函館―長万部)と併せて、新幹線効果が波及したとみることができる。しかし、対札幌の利用度が高まる室蘭―苫小牧では逆に3%の減少となっている。
 また、苫小牧―白石ではほぼ前年並みだが、新千歳空港―南千歳が前年比4%の伸びを示していることをふまえると、石勝線特急運休の影響を差し引くと、札幌対苫小牧方面の旅客は大きく減少していると考えられる
 

 函館本線(札幌―旭川)の場合は、特急依存度の高い石北本線や宗谷本線の利用減の影響を受けるが、この両線の減少分すべてが影響したとしても、差し引きでなお280人、この区間では輸送密度が低下していることになる。札幌都市圏の他区間の利用状況を考えると、特に札幌対岩見沢以遠の都市間輸送が減少していると推測できる。


 札幌―苫小牧・室蘭、および札幌―旭川はいずれも高速バスとの競合が激しい区間である。特に前者はSきっぷの廃止と割引切符の大幅な見直しによりJR特急の利便性が大幅に低下している。後者もSきっぷフォーの廃止により選択の自由は減殺された。両区間の利用減にこのことが少なからず影響しているのではないか、という気がする。
 北海道中央バスの29年3月期決算短信によると、具体的な数値の記載はないが、都市間高速バスの利用者は増加したという。私は単身赴任先の旭川と札幌の間を高速バスで移動する機会が多いが、昨年春以降、高速バスの混雑度が上がったように感じる。日曜の夕方など、1~2本程度積み残される頻度も高くなった。


 都市圏輸送と並んでJR北海道の旅客増の両輪となるはずの都市間輸送は、人口の札幌圏一極集中化が進む中で大幅な旅客増が望みがたい状況にある。さらに、安全対策強化の名のもとに実施されたスピードダウンや、車両不足を賄うための減便や区間短縮など、今後も厳しい状況に置かれるのは間違いない。地方ローカル線は言うまでもなく、2年目を迎える北海道新幹線も経営的には決して明るい立ち位置にはない。
 国鉄分割民営化から30年、当初から厳しい経営が予測されたJR北海道の今後の在り方が大きく問われる分岐点に来ているといっても過言ではないだろう。




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2017/03/27

北海道新幹線、満1歳の成績表

 昨年3月26日、北海道民の夢を背負って北海道新幹線・新青森-新函館北斗間が開業してから、ちょうど1年が経過した。


 26日JR北海道が発表した、開業から1年間の平均乗車率は32%。1日平均の利用客数は約6,300人で、当初目標の5,000人(平均乗車率26%)を3割ほど上回ったとしている。在来線として運行されていた前年度からの比較では7割増と、新幹線開業効果としては間違いなく出ていると言える。


 JR北海道は、平均乗車率26%を前提に、北海道新幹線の収支を年間約48億円の赤字と試算していた。仮に北海道新幹線の旅客運賃・料金の客単価を5,000円とすると、乗客数が想定を1,300人上回ったことで、1日当たりの増収額は650万円。単純計算でも1年で23億円の増収となり、費用の増加を差し引いても赤字圧縮にかなりの貢献をするのは間違いない。


 ただ、この1日当たり6,300人という数字。仮に全ての旅客が新青森-新函館北斗間を通し利用したとすると、輸送密度は6,300人/km/日。この数字は在来線の区分で言うと地方交通線レベル、すなわち単独での収支均衡が困難な区間に相当する。当然ながら新幹線区間の中ではぶっちぎりの最下位で、いわゆる「ミニ新幹線」区間の秋田新幹線(盛岡-大曲)をも下回る。


 JR北海道の過去のプレスリリースによると、3月26日~9月25日、開業後半年間の成績は、1日平均利用客数7,800人、平均乗車率39%であった。この数字を差し引くと、9月26日~2月28日の約5か月間の成績は、1日平均4,900人、乗車率は推計で25%程度となり、想定を下回る推移である。
 この期間には年末年始の帰省ラッシュも含まれるが、12月28日~1月5日の1日平均利用客数は6,678人で、開業後半年間の平均値にも遠く及ばない


 1月には単月の平均乗車率は19%まで下がっている。また3月16日にJR北海道が公表した2月末までの利用実績と今日の発表内容を照らし合わせて検証すると、1月以降、1日当たりの利用客数は4,000人を割り込んでいると思われる。この時期はもともと鉄道の利用者数が低迷する時期ではあるが、開業ご祝儀はほぼ去ったと考えて間違いない。しかもこの数字は、国鉄の第3次特定地方交通線に相当する。


 現在経営再建に向けたスリム化の途上にあるJR北海道だが、旅客単価も運行経費も高い北海道新幹線の成績がJR北海道の今後を左右するのもまた事実だろう。
 しかしながら、ここまでの数字を見る限り、北海道新幹線の置かれた状況は厳しい。札幌まで開業する2030年度には状況が好転する可能性もなくはないが、青函トンネル内でのスピードアップの目途が立たなければ、航空機との間での劇的なシェア移動は期待できない。当面は函館から道南地区を目指す観光客を主たるターゲットとした利用促進策を講じていくより他ない。かなり厳しい戦いが続くように思うのは私だけだろうか。


【参考記事】
北海道新幹線に思うこと【その1】 【その2】 【その3】
2016年3月JRダイヤ改正【1】北海道新幹線への不安
北海道の鉄道新時代へ~北海道新幹線開業
北海道新幹線 1週間の成績表
北海道新幹線 連休中の利用状況とJR北海道決算



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