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2012/06/07

札幌市電の将来像

Arashi010今月発行された「広報さっぽろ」の6月号に、「路面電車とこれからの札幌」という特集記事が掲載されている。これによると、市電のより一層の活性化を目指して、(1) 環状運転化 (2) 新型低床車両の導入 が、2015年春をめどに進められることが決まった。

札幌市電は、最盛期の昭和40年頃には11路線(7系統)が運転されていたが、現在では、西4丁目(地下鉄大通駅の近く)-西15丁目-中央図書館前-すすきの間の、3路線(1系統)だけがひしゃく形で残っている。

今回の計画では、すすきの-西4丁目間を駅前通(地下鉄南北線の真上)経由で結び、環状運転化する。狸小路付近に停留所も設けられる。新設区間は道路の両端に線路を設けて乗降客の便を図るという。
この区間は、1973年に廃止となった西4丁目線の一部に相当し、およそ40年ぶりの復活となる。二度手間でもったいない話であるが、時代の変化である。

また、新型車両の導入とともに、平成27年以降、停留所のバリアフリー化も進められることになっており、札幌の近代的な街並みを旧態依然とした姿で走り続けてきた札幌市電も、ようやく近代化への第一歩を踏み出す。

札幌に限らず、昭和40年代から50年代にかけての路面電車の衰退は、モータリゼーションの進行の中、道路を塞ぐ路面電車の存在が邪魔になったことに起因している。また、特に大都市では地下鉄へのシフトを進める中で、競合する路面電車を見返りに廃止してきたということもある。
けれどもその一方で、広島や長崎の路面電車のように、自動車の軌道式への乗り入れを禁止することで路面電車の運行を確保してきた都市も、ほんの少しだが存在した。

平成の世に入り、高齢化が進行すると、階段の上り下りをしなくても乗り場に辿り着ける路面電車再評価され始めた。過度なモータリゼーションの抑制や、環境負荷低減の効果もある路面電車の復権が各地で始まり、電車や停留所のバリアフリー化、軌道緑化や路線の延伸などにより、見違えるような姿になった都市も少なくない。

ヨーロッパやアメリカにおいては、このような路面電車復権の動きはもっと早くから始まっており、路面電車・地下鉄・郊外電車やその他の交通機関と有機的に結合しているところもある。
次回以降のブログでは、路面電車に限らず、私がこれまでに見てきた国内外のいろいろな都市の交通事情をご紹介していきたいと思っている。

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