滝川発釧路行き・2429Dの旅(2) 富良野→新得
前回の続き。
富良野で観光客がごっそりと姿を消した2429Dには、代わって地元の用務客とおぼしき乗客が10名ほど乗り込んだ。増結作業が終わって車両が2倍に増えたが、乗客はほぼ3分の2に減り、それが2両に分散して座るから、車内は嘘のように落ち着いた雰囲気になった。私のボックスも私だけになる。
この一帯は水稲だけでなく、メロンやスイートコーン、そして玉葱などの一大産地である。玉葱はちょうど収穫時期に入っていて、至るところで忙しく動く収穫機械の姿を見ることができる。びっしりと玉葱を詰めて、青いシートでカバーされた鉄製のコンテナがずらりと並ぶ様子は、畑の広さとも相まって壮観である。
上りの釧路発滝川行き2522Dとすれ違う山部を過ぎると、農村風景は途切れ、列車は山間へと入る。金山を過ぎると、空知川の上流に造られた金山ダムと、かなやま湖の巨大な姿が見える。湖岸に最も接近するあたりに東鹿越駅があるが、観光客など当てにしていない、といった風情でたたずんでいて、なにか世間離れしている。
南富良野町の中心にして、映画「鉄道員(ぽっぽや)」の幌舞駅として登場した幾寅を過ぎ、12時10分、落合に到着。狩勝峠越えに向けて10分余りの小休止となる。用務客は、走行中と変わらず車内で物憂げに過ごし、その筋の人々はホームに出て、写真を撮ったり車掌と会話したりして時間を過ごす。
12時21分発車。キハ40の速度が目に見えて落ち、エンジンの唸り声はひときわ大きくなる。小さなトンネルを5本ほど抜け、新狩勝トンネルの手前で信号待ちのためいったん停止する。新狩勝トンネルへ入ってすぐの上落合信号場が、根室本線と石勝線の合流点になっており、石勝線方面へ向かう上り特急の通過を待つためである。
新狩勝トンネルを含むこの区間は、1966年に勾配緩和のため設けられた。これにより、かつて「日本三大車窓」に数えられた狩勝峠の雄大さは失われたと言われる。
けれども、峠を越えて南向きから大きく左にカーブして北向きとなり、畜産試験場の牧草地を抜ける付近の風景は、はるか遠く望む新得の市街地とも相まって、美しい。
下り勾配となった峠道を軽やかに下り、12時49分、新得着。定刻より3分ほど遅れている。石勝線特急は、線路整備のため減速運転を継続中で、その遅れが全般的に波及しているようである。臨時列車に使われるのか、お座敷車両のキハ183系が出迎える新得では、乗務員が交替した。
-つづく-
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