滝川発釧路行き・2429Dの旅(5) 白糠→釧路→?
続き物、第5回。
白糠からは釧路都市圏に入ってくるが、この時間帯から釧路へ向かう客は少なく、西庶路、庶路と乗客の動きはない。沿線には荒涼とした雑草地が広がり、夕暮れ空ともあいまって寂莫とした雰囲気が漂う。途中駅の長いホームは使われなくなって久しく、国鉄時代のままの古い駅名標が打ち捨てられるように立っていたりする。
庶路を過ぎると釧路市に入り、周囲に製紙工場や飼料工場の大きなプラントや倉庫が目立ち始める。釧路港を擁する臨海工業地帯である。その最寄である大楽毛では、貨物列車・普通列車との行き違いのため、12分と最後の小休止。学生や勤め帰りとおぼしき乗客が20人ほども乗り込んできて、2429Dは最後の賑わいを見せる。
新大楽毛、新富士とその工業地帯の中を進み、目の前に市街地が広がってきた。
17時39分、308.4kmを駆け抜けた2429Dは、定刻に遅れることなく、終点、釧路駅2番ホームにゆっくりと停止した。8時間02分。ほぼ一般企業の就業時間に匹敵する時間を駆け抜けた普通列車の終業時間である。
正確には把握できないが、滝川から釧路まで全線をたどり続けたその筋の人は、私を含めて少なくとも7名。
全区間を走破した乗客には、その区間に有効な乗車券を改札口で提示すれば、「乗車証明書」が渡される。記念になることは間違いないが、ただの普通列車に対して何か場違いなようにも見える。
落合での停車時間中、運転士に聞いた話では、6~9月は観光客やその筋の人の姿が多く、おおむね今日のような乗客分布になるという。夏休み期間には学生が減る代わりに、自転車をかついだ旅行者の姿が増える。逆に10月を過ぎてしまうと観光客や酔狂な客の姿は消え、今回混雑していた滝川-富良野間も静かになるらしい。
ところで私は、釧路までたどり着いた後は、のんびり銭湯にでも浸かって夕食をとり、夜行バス「スターライト釧路号」で札幌へ引き返す計画を立てていた。
ところが「スターライト釧路号」は満席。いろいろと当たった結果、唯一確保できた別の夜行バスを利用するため、私は釧路からさらに普通列車に揺られることになった。
-旅そのものはまだ続く(笑)-
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コメント
こんにちは
長旅、お疲れ様でした o(_ _)oペコッ
ひとつの列車で、朝から夕方までの表情の変わりようが面白いです㋧
列車の旅も終わりの方に近づくと、何となく此方も黄昏てました
JRの普通列車って、地元の生活に添った普段着の部分と、他所からの
お客さんを迎えるお澄ましをした部分が有るんでしょうね
だから、単なる普通列車に全区間乗車した事に、そしてその「乗車証明書」
には価値があるんだろうな
景色も、やっぱり北海道は広々としてイイですね♪
投稿: tutatyan | 2012/09/15 12:57
>tutatyanさん
いつもありがとうございます。
同じ長時間でも、特急や夜行列車と違い、乗客が途中で幾度も入れ替わる普通列車の旅は、表情豊かで楽しいですね。
こういう長距離を走る普通列車はかなり少なくなり、乗る機会もめったにありませんが、たまにはいいものだな、と思います。
これが休日や学校休み期間だと、かなり雰囲気も変わるのでしょう。
一見非効率とも思えるこんな列車を残したうえに、「乗車証明書」までつくってPRするJR北海道の遊び心も感じます。
ぜひ北海道へも遊びにいらしてください。
投稿: いかさま | 2012/09/17 00:59