シャレにならない
どこかで一度くらいは見かけたことがあるであろう「熊出没注意」のステッカー。
北海道の安価かつ安直な定番土産として、今も土産物屋で売られている。
いわゆるひとつの「洒落グッズ」である。私自身、北海道へ来るまでは、熊や狐が平気で市街地に現れると本気で思い込んでいたくらいなのであるが、このところこれがシャレにならないような状況が続いている。
日常茶飯事というわけではないが、札幌市では山中を中心に、熊の目撃情報が毎年多く寄せられている。私の住んでいる南区は、背後に藻岩山をはじめとする深い山を抱えていることもあってその件数は多い。
ご存じのとおり、北海道に生息する熊は「ヒグマ」で、本州のツキノワグマと比べても体は大きく、獰猛だとされている。
その熊の目撃件数が最近増加している。
札幌市のまとめによると、住宅街に限らず市内における熊の目撃・痕跡情報件数は、平成22年123件、23年254件と増え、今年も今現在ですでに128件に及んでいる。例年、目撃情報の半数はこの時期以降のものであるから、今年も昨年並みのハイペースである。
南区に限定すると、22年82件、23年161件、24年今日現在89件となっている。
要するに目撃情報の3分の2は南区でのものである。
問題はそれだけではない。出没時期が年々早期化していることと、住宅地に近いところでの目撃情報の比率が増加しているということである。
以前の熊目撃情報は、登山者やキノコ狩りで山へ分け入った人によるものがほとんどであった。ところが昨年は、熊の餌となる木の実が不作だったらしく、餌を求めて住宅街まで降りてくると思われるケースが増加している。
「森のくまさん」の歌よろしく、森の中で出っくわす分には多分に宿命的なものであるが、昨年の10月下旬のように、私の自宅から徒歩5分の場所だとか、日々利用するバス停の近くだとか、御用達のパチンコ屋の駐車場だとかで熊が目撃されるとなると、笑うに笑えない。
今年は8月末から9月頭にかけて、国道230号線を横断する熊と自動車の接触事故も発生している。住宅街に近い公園や国道沿いのファミレスの前やでの目撃情報もある。これらはすべて我が家から車で10分圏内である。
さて、実際に熊の出没や痕跡が確認されると、「熊出没注意」と書かれた赤い看板が現地に掲げられ、注意を促す。小さなステッカーごときでは警告にならないのである。このような看板が事前に用意されている、というのがいかにも札幌チックではある。
地域によっては地元の猟友会が巡回活動などを行っているが、万一住宅街で発見された場合にまさか発砲するわけにもいかず、多分に威嚇の意味合いが強い。
市のホームページには、「ヒグマに出遭ったらどうするかを考える前に、出遭わないようにするにはどうしたらよいかを考えることが重要です。」(原文ママ)と書かれている。具体的には、山へ入るときには鈴や撃退スプレーを欠かさない、痕跡を見つけたら引き返す、生ゴミは当日の朝出す、などさまざま書かれているが、これだけ住宅街近くまで出てくるのであれば、立ち回りにも気を付けなければならない。夜間の目撃情報が多いようであるから、酔っ払ってタクシーを拾い損ねて歩いて帰る、などと言うのは論外であろう。
クマった話である。
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コメント
(^_^)/おはよーございます
ホント、洒落にならないですね
増え方も、倍々ゲームどころじゃないし・・・
ニュース等で取り上げられている住宅街での熊さん出没の話は、特別なのだと思ってました
京都でも、このところ住宅街に猪さんや熊さんが現れているらしいのですが、それでもやはり山の近くだったりします
それよりも、お猿さんの方が深刻のようです
比較的人口の多い地域にも最近出てきているので、子供やお年寄りが怪我をしていますから
どちらにしても、野生の動物が、そのものとして生きていく環境に無いと云うのを正さないと、人も動物も不幸ですね
投稿: tutatyan | 2012/10/15 07:27
猿も熊もキツネも狸もカモシカも…
最近は町まで下りてきて、騒がしいですが、
元はと言えば、彼らの住処を侵食し、食べるものを作ってきた野や山を開拓してしまった人間自身によることなのでしょうけど…
本当に、それで危険なことが起きてしまうのですものね…
どうぞ。気を付けてくださいね、
狸とイノシシの餌付け問題になったこともありましたね
なぜか、ジブリの平成ぽんぽこ合戦?の映像が頭に浮かびました。
ああ、とりとめないですね…
投稿: と~まの夢 | 2012/10/15 20:28
>tutatyanさん、と~まの夢さん
いつもありがとうございます。
餌が不足して住宅街まで熊が下りてくるということは、裏を返せば本来の熊のテリトリーだった場所にまで人間の住処が進出していったことのあらわれとも考えられますね。
30年ほど前の我が家近くの航空写真を見ると、私の家の辺りは広大な畑。周囲は山に囲まれていますが、その山を削るようにして、30年後の現在、住宅や道路がつくられています。古い写真は、いかに山を切り開く形で宅地開発が進められていったかをよく教えてくれますね。
動物と人間の関係式を一方的に破壊しておいて共存も何もあったものではないような気もしますが、未来志向で考えていかなければなりませんね。
なんだか中韓と日本の話みたいですね(笑)
投稿: いかさま | 2012/10/16 00:07