オレンジカード雑感
JR各社が、「オレンジカード」を来年3月末をもって販売終了することを発表した。
http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2012/121204-1.pdf
近距離乗車券用のプリペイドカードとしてオレンジカードが登場したのは、1985年(昭和60年)のこと。電電公社(NTT)のテレホンカードより数年遅れであった。
当初は首都圏限定だったが、ほどなく全国に広がり、国鉄の各鉄道管理局がそれぞれにアイデアを絞って、さまざまな図柄のカードを発売した。
1987年の国鉄分割民営化以降は、JR各社による増収の一環として、オレンジカードの販売数量は大幅に増加した。当時のこうした記念品としては「記念きっぷ」が多かったが、オレンジカードはそれにとって代わり、車両や列車などをシリーズ化したカードも発売されるようになった。
とりわけオレンジカードの販売に熱心だったのは、JR北海道とJR九州だったようだ。駅はもちろん、特急列車の車内でも、弁当や飲み物の売り子以上に頻繁に車掌が現れて乗車記念カードの販売に精を出し、「車掌の本業がおろそかになる」とか「押し売りだ」などという批判が新聞や雑誌に掲載されたこともある。
そこまで熱心だった理由はいくつか考えられる。
ひとつは、オレンジカードは全国共通で使用することができたこと。
自社で発行したオレンジカードが他社管内で使用された場合は、運賃精算の際、いくばくかの手数料が発行会社に支払われるようになっていたらしい。遠来の旅行客がカードを記念に購入し、東京や大阪などで使用されれば手数料収入が増える。これを当て込んだJR北海道・JR九州などが販売に躍起になったようである。
また、仮に自社管内で使用されたとしても、当時はバブル景気まっただ中の高金利時代。前受した運賃に対して発生する金利も、それなりの金額になったはずである。
もうひとつ。当時、テレホンカードやオレンジカードは、ファンの間で蒐集や取引の対象となっていた。国鉄時代のカードや、オリジナルデザインカードなどの未使用品は、かなりのプレミアがついて取引されていたという。記念切手や硬貨の類と同じ世界観である。
実際の使用を伴わずにカードが所蔵されれば、本来使われるべき前受運賃がそのまま利益として各社の手元に残ることになる。こうした、いわゆる「まるもうけ」に相当する利益が、かなりの金額に上ったという。
私は未使用のカードを保存するほど気力も金もなかったが、使用後のカードは、国鉄時代のものや、全国各地で購入して使用したカードが、それなりに残してある。カードにデザインされた車両ひとつをとってみても、当時の様子をよく反映しているし、あらためて眺めてみると感慨深い。117系電車が名古屋地区の快速列車の主力車両だったり、今は亡き寝台特急「富士」の運転区間が東京~宮崎だったりする。
時代は変わって今日、プリペイドシステムの主役は、「Suica」「Kitaca」などに代表される、電子マネー機能を備えたIC乗車カードになった。JR四国を除く各社で導入されており、来年春には、私鉄も含めた10種類のカードで相互利用が開始される。利便性の高さはオレンジカードの比ではない。
プリペイドカードの先鞭となったテレホンカードも、携帯電話の普及により、使用できる公衆電話そのものが急速にその数を減らしている。私たちが若かりし頃想像だにしなかった、
「テレカ? オレカ? はぁ? 何それ」
という時代の到来が、もう目前に迫っている。
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コメント
(^_^)/おはよーございます♪
お久しぶりです o(_ _)oペコッ
プリペイドカード全般に言えることなんでしょうね
私は、JRはあまり使わないのですが、何かの記念にと貰うのは、オレンジカードが多かったです
阪急とか京阪が行動範囲の中にあって、そのプリペイドカードはよく買ってました
そういえば、以前はよく駅でカードの特設売り場なんかがあって、いろんなデザインのを売ってましたが、最近見なくなりました
電子マネーもイイですが、やっぱり形になって残っていく方が私に合ってます
投稿: tutatyan | 2012/12/06 02:16
>tutatyanさん
ご無沙汰しました(笑)毎度ありがとうございます。
磁気式プリペイドカードの良さは、デザインが多様で凝っていて、実用的に使用できてかつ記念に残る、というところにあったと思っています。
改札でなく、駅のコンコースなんかでよく売っていましたよね。
「Suica」や、北海道の「Kitaca」なども、発売開始時とか記念の時には特殊図柄のデザインのものもあったようですが、半永久的に使える、というカードの性質上、記念にはなりにくいですよね。
時代の流れと言えばそれまでですが、どこかさびしい話に聞こえます。
投稿: いかさま | 2012/12/06 23:55