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2013/01/17

船旅ざんまい【5】太平洋フェリー「いしかり」(3)

Dscn1615船内から船外の風景へ目をやる。
19時ちょうどに名古屋港を出港する太平洋フェリーでは、出航後すぐに名古屋港の河口付近に架かる「名港トリトン」をくぐる。ライトアップされた3基の斜張橋が闇の中に浮かび上がる。幻想的な姿が、長旅の門出を祝ってくれる。

Dscn1629複雑な日本列島の海岸線をふんわりと囲むようにして運航されるフェリーからは、陸地が遠くに見え隠れする。日頃陸地側からしか見ることのない風景を、海側から眺めるというのもなかなか趣があってよい。
通常ダイヤであれば8時20分前後、房総半島の先端、犬吠埼に接近する。小高い丘の上には、風力発電の風車がにょきにょきと立っている。

Dscn165013時40分ごろ、進行方向左手遠くに、高い塔を3本持つ施設群が見える。
東京電力福島第一原子力発電所である。細部まで見ることはできないが、テレビのニュースで見慣れた建屋の雰囲気は伝わってくる。大平洋フェリーは、震災発生後、一時当該区域では海岸線から30km以上離れて迂回していたが、現在はそれほど離れてはいないようである。
ちなみに、「いしかり」は、2011年3月13日のデビュー予定であったが、震災による運休でデビューが遅れる波乱の船出であった。

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ところで、現在、大平洋フェリーは、名古屋-仙台-苫小牧間を3隻体制で運航されている。基本パターンは、「いしかり」「きそ」の2隻で名古屋-苫小牧間を隔日運航し、これに苫小牧-仙台の折り返し便「きたかみ」を加えて、仙台-苫小牧間では毎日運航となる。
名古屋便同士のすれ違いは、出航2日目の14時40分頃で、場所はおおむね宮城県相馬市付近の沖合である。4年前に乗船した「きそ」が、名古屋へ向けて、「いしかり」の左(西)側をしずしずと通り抜けていく。ちなみに、「きたかみ」とのすれ違いは深夜で、残念ながら確認できなかった。

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出航から21時間40分、16時40分に、「いしかり」は仙台港に入港する。エントランスホールへ様子を覗きに行くと、予想外に多くの乗客がここで下車するようである。係員の方に伺うと、本船の乗客は、名古屋-仙台間368名、仙台-苫小牧間380名だが、このうち名古屋-苫小牧間の通し客はわずか52人だという。
仙台港下船の客を降ろした船内では、清掃員が縦横無尽に走り回って船室やパブリックスペースの清掃に取り掛かる。この時間帯は大浴場、売店などはすべて休止。ちょうど日中時間帯のホテル・旅館のような雰囲気になる。

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さて、揺れもなく順調な航海を続けていたこの日の「いしかり」だったが、3日目の早朝、津軽海峡に近づくあたりでいくらか揺れた。窓の外を見ると風雪が強まり、下の方には波が白く跳ねているのが見える。
午前8時近くなって朝食を取りに行こうと誘ったが、嫁と長男は食欲を喪失して軽い船酔いモードに突入。鈍感きわまりないお父さんと下の坊主だけが6デッキのカフェでモーニングセットの朝食をとる。部屋に帰ると、酔い止め薬の包みが破かれて、錠剤が3錠ほど減っていた

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名古屋を発って40時間、1月6日の11時、定刻通りに、「いしかり」は苫小牧港に到着した。私は車両甲板に降りて2日ぶりに車のエンジンをかけ、ブリッジを通って下船した家族をターミナルで拾って札幌へと向かった。自宅まではものの1時間あまりであった。

このフェリーの感想がどのようなものであったか。
たいていこの手の体験をした後家族に感想を聞くと、お父さんだけが一人で盛り上がり、家族、特に嫁は特段の感慨も抱かない、というパターンが多いため、今回も何となく面と向かって感想を聞くのがためらわれていた。
けれども、先日友人が遊びに来た際、フェリーの写真を見せて、
これはみんなで乗ったら絶対に楽しいと思うよ。いつかフェリーで遊びに行こうよ
などと話しているのを見て、意外に好評だったことが判明した。
お父さんとしてはひとまず胸をなでおろす展開だったのだが、一方で子供たちの間ではさほど話題にならなかったことが若干残念なのであった。

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コメント

最初、2号の朝食、黒いのなんだろう?って考え込んで…
先生と2号の朝食メニュー逆じゃん!って思った(笑)

2号、しっかり日本人だね!渋いね!
だけどお茶じゃなくて牛乳なんだね!

投稿: むっち | 2013/01/17 22:57

いくらか揺れただけで済んで
いやな思い出が刷り込まれなくて
良かったですね

私の場合には、広い客室に置かれた
金属製の洗面器が右に左に2〜3m....

それ以来、金属製の洗面器がトラウマに 

投稿: buzzっち | 2013/01/17 23:37

>むっちさん
いつもありがとうございます。
なんだか他の食堂でも見かけないくらい、立派なおにぎりでした(笑)
言われてみれば確かに逆のような気もしますが、お互い納得ずくで食べているので、これでいいんです。
「おにぎりに牛乳」という謎の組み合わせも、坊主自らの強いリクエストだから、これでいいのです(笑)

投稿: いかさま | 2013/01/18 23:46

>buzzっちさん
いつもありがとうございます。

最初にどういう体験をしたかで、船旅の印象は大きく変わりますね。今回の船旅が家族にとって悪いものでなかったことはなによりです。次回につながりますから(笑)

それにしても、金属製の洗面器がそれだけ大幅に移動を繰り返すということは、相当揺れたんでしょうね。
○○用の洗面器だったのでしょうか(笑)
それでは間違いなくトラウマになりますね。

投稿: いかさま | 2013/01/18 23:49

私も太平洋フェリーのファンで、楽しく読ませてもらいました。「あるびれお」に2回乗船、「きたかみ」に1回乗船したことがあります。「いしかり」「きそ」に乗りたい…。相馬は福島県ですね。すれ違いは相当迫力がありそうですね。

投稿: satochann | 2013/07/11 14:30

>satochannさん
はじめまして。コメントありがとうございます。

私は太平洋フェリーは4回ですね。先代「きそ」B寝台、先代「いしかり」A寝台、「きそ」「いしかり」の1等それぞれ1回です。「きたかみ」とは縁がありませんでした。

「あるびでお」は「きたかみ」の先代に当たる船ですね。その体験は貴重だと思います。私が北海道に移り住んだ頃は、すでに「きそ」「いしかり」「きたかみ」の3隻体制が出来上がっていましたから…。

投稿: いかさま | 2013/07/12 00:31

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