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2013/03/13

「周遊券」の記憶【1】 「東京ミニ周遊券」と昭和の残り香

以前のブログで触れた「周遊きっぷ」だが、私たち世代にとっては、「周遊きっぷ」以上に、15年も前に廃止になった前身の「周遊券」の方が馴染み深く、愛着がある。特に「ワイド周遊券」「ミニ周遊券」と呼ばれるレディメイド型の周遊券には、鉄道ファンならずとも、1度や2度はお世話になったことがあるのではないかと思う。

ワイド周遊券」「ミニ周遊券」は、全国の主要都市からの往復と、「自由周遊区間」と呼ばれるエリアでの乗り放題がセットになった周遊券であった。行きに使用する「A券」と、自由周遊区間、および帰りに利用する「B券」の2枚の券片からなり、有効期限は種類と発着地によって7~14日。行き帰りに使用できるルートは、発着地によって数種類用意されており、その中から任意のルートを選ぶ。いずれも往復および自由周遊区間では、急行列車の自由席を利用できた

ミニ周遊券」は東京、京阪神など比較的小さなエリアを対象とし、「ワイド周遊券」は北海道、九州、四国など広いエリアを対象としていた。「ワイド周遊券」では、自由周遊区間に限り、特急列車の自由席も利用できた

私が初めて「周遊券」を利用したのは、小学校5年生の夏休みである。
上野駅で大撮影大会を繰り広げた翌年の家族旅行だった。大垣と東京を結んでいた夜行普通列車、通称「大垣夜行」に乗りたい、とダダをこねた私のために、父は「東京ミニ周遊券」を用意し、私の夢を叶えてくれた。

名古屋発着の「東京ミニ周遊券」は、7日間有効で、当時の価格で1万円前後。ルートは東海道本線(新幹線を含む)経由、または東名高速バス経由に限定されていたが、往復して現地でちょこちょこ電車に乗るだけで元が取れた。新幹線や特急を利用するには別途特急料金が必要だったが、出張のサラリーマンなどにも愛用者が多かったと聞く。

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高校に上がった私が初めて利用したのも、「東京ミニ周遊券」だった。一般のきっぷの場合、学割は2割引だが、周遊券は3割引で、名古屋発着だと8,500円程度と、きわめてお得だった。
土曜日の「大垣夜行」で東京に向かい、当時所属していた趣味のサークルの集まりに出て、日曜日の夜行高速バス「ドリーム号」で帰った。当時、名古屋駅構内には「早川浴場」という銭湯があり、「ドリーム号」を降りた私はそこでひとっ風呂浴びてから中央線の電車に乗り、そのまま学校へ行った。

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私の高校時代、1988年から1991年にかけては、すでに国鉄は分割民営化されJRになっていたが、ところどころに国鉄時代、あるいは昭和時代の残り香のような情景が残っていた。コンピュータ発券ではなく「常備券」と呼ばれた周遊券しかり、ボックス座席で全席自由席の夜行普通列車しかり、無駄に広く薄暗かった名古屋駅とその構内に佇んでいた銭湯やクリーニング店しかり。

「早川浴場」は1991年、全席自由席としての「大垣夜行」は1996年、そして周遊券も1998年に姿を消した。名古屋駅のコンコースは明るくなり、駅舎も近代的な「セントラルタワーズ」に建て替えられて久しい。

けれども私は、アルバムを開いて当時のきっぷや写真を眺めるたび、こうした古びた情景と、学校の机の引き出しの中に教科書でなく「時刻表」を常備していた少々恥ずかしい青春時代の自分を思い出すのである。

続くよ。

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コメント

(^^)お早うございます
今日の記事全般に、とてもノスタルジックな空気を感じます
“電車の周遊券ひとつ”とは軽く扱えない、その中にはとても多くの想いが詰まっているんですね
そこには、いかさまさん個人の思い出も、世の中のその時代としての歴史もあって、それが上手く絡み合って昭和の時代が見えてきます
こう云う記事を拝見すると、私も若かりし頃何か熱中するものを持っていればよかったなぁ、と思います
こうして、いろんなお話を聞かせて頂くのが楽しみです、また、お願いしますネ(^_-)-☆

投稿: tutatyan | 2013/03/14 08:37

>tutatyanさん
いつもありがとうございます。
不思議なものですが、「旅」という非日常の生活と、その頃の「日常」の生活というふたつの相反する記憶はうまく絡み合って残っているような気がします。
強弱、メリハリのある音楽が強い印象を与えるようなものかもしれませんね。「旅」がなければその時期の記憶はもっと薄いかもしれませんし、逆に旅の印象が強すぎると、それ以外の記憶はやっぱり薄れてしまうような気もします。

そういう意味では、熱中できるものを持っていたというのは幸せなことだと思いますが、何しろ金がかかった(笑)。
爪に火をともすような生活をしてお金を貯めて旅に出たことが、「日常」側の自分にとって幸せだったかどうかは、正直よくわかりません(笑)

投稿: いかさま | 2013/03/16 08:28

廃止決定したミニ・ワイド周遊券、3月に買って翌4月に全部使って旅に出ました。九州、信州、北海道、東京。夜行の急行往復途上(九州だけ別料金を払ってましたが)『これが最後なんだ』と眠らずにいたのが昨日のことのようです。

投稿: サンライズ | 2013/03/20 17:02

>サンライズさん
ご訪問ありがとうございます。
周遊券もさることながら、「夜行急行」ももはや過去の遺産になってしまいましたね。交通手段の多様化は、古き良き時代の香りを消し去ってしまうものなのでしょうかね。

投稿: いかさま | 2013/03/21 00:41

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