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2015/03/29

2015春 関東の鉄道乗りつぶしの旅【2】足尾銅山と鉄道の「聖地」

 

 通洞駅は旧足尾町の中心、すなわち銅山の最寄り駅である。
 足尾銅山の最盛期には人口38,000人を超え、宇都宮に次ぎ県下第2位を誇った足尾町は、鉱毒事件の影響と生産合理化により徐々に人口が減少し、1973年の銅山閉山以降は過疎化が一気に進行した。2006年、人口が3,200人まで減少した足尾町は、周辺自治体と合併し、現在では日光市の一部となっている。

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 通洞駅から早足で5分ほど坂道を下ると、「足尾銅山観光」がある。820円の入場料を払い、駆け足で見学する。ステーションで待つトロッコ列車は15分間隔で運転されているが、乗客は私のほかにもう1人だけ。3両連ねたトロッコの前には牽引車が付き、数百m先の中間駅まで下る。そこで牽引車は切り離され、トロッコだけが坑道を利用したトンネルの中へと吸い込まれていく。

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 トンネルへ入るとものの数百mで降車場。ひどくあっさりしたトロッコ列車に驚きながらも下車する。奥には坑道が続いているが、降車場のすぐ先で鉄格子に阻まれ、先へ進むことはできない。見学通路は、降車場から手前へ引き返し、別の坑道を迂回して戻るルートになっている。背の高い私でなくても、大人ならばかがまなければ進めないほど低い坑道は、作業環境としては劣悪であっただろう。時代に応じた作業員のスタイルを模した人形が飾られている。

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 早足で歩くと5分ほどで外に出た。先ほどトロッコで通った中間駅に接した広場である。見学できる坑道の長さはほんの数百mといったところだろうか。400年にわたって掘り続けられた足尾銅山の坑道は、先ほど車窓から眺めた選鉱場よりもはるかに奥へ向かって、幅方向・高さ方向に広がっている。坑道の総延長は1,200mを超えるというから、銅山観光はほんのさわり程度、ということになる。

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 再び通洞駅へ戻り、12時59分発の間藤行き列車に乗って終点を目指す。
 住宅街を右手に見ながら足尾を過ぎ、渡良瀬川の支流、松木川を渡ってしばらく走ると終点の間藤駅に着く。ホーム1面だけの無人駅で、小さな駅舎が建っている。線路はホームの先100mほどのところで途切れている。かつて線路はここから1.9km先の足尾本山まで伸びていたが、銅山の閉山とともに休止となっている。

P2256740_2  この間藤駅は、私たちのような「乗り鉄」にとってはある種の「聖地」である。
 鉄道の「完乗」という趣味に市民権が与えられたのは、宮脇俊三氏の「時刻表2万キロ」という本のヒットがひとつののきっかけである。その宮脇氏が国鉄全線完乗を果たしたのが、当時国鉄足尾線だったこの線の、この間藤駅なのである。1977年5月28日のことである。

鉄道が好きになったわけ【1】 「時刻表2万キロ」(宮脇俊三)

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 無人の駅舎の中には、「時刻表2万キロ ここは間藤 終着駅」というポップとともに、「時刻表2万キロ」の足尾線の章や雑誌類のコピー、直筆原稿、年表などがささやかに飾られていた。
 もっとも当の宮脇氏自身は、最後の1線が足尾線、それも末端の足尾-間藤間だけということが不本意であったようで、「時刻表2万キロ」の文面にもそれが窺える。けれども、駅舎に置かれていた大学ノートには、宮脇氏の昔日の残像を求めて集まったファンの、たくさんのメッセージが残されていた。


 私自身もこれまで幾度も記したように、宮脇俊三氏や種村直樹氏という鉄道作家の著作を通じて鉄道趣味の世界に足を踏み入れてきた。宮脇氏は2003年、種村氏も昨年泉下の客となられたが、私の鉄道趣味は細々とながら続き、今、両氏と同じように「完乗」を目指して乗り歩きを重ねている。

Dscn4492  駅前を走る県道に面して機械部品の工場があり、足尾本山方面に向かって住宅が並んでいたが、人影はなく静かだった。
 私は無駄に長いホームを行ったり来たりしながら、この駅に降り立った宮脇氏の姿を思い浮かべた。それは数年後、どこかの駅のホームで最後の1線を乗り終えたときの私の姿なのかもしれなかった。


 続く。

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コメント

いかさまさんの完乗のホームはどこになるのかしらねえ?

投稿: 姉さん | 2015/03/29 22:31

>姉さんさん
こんばんは。いつもありがとうございます。
実は完乗のホームは、ひそかに思い描いている駅があるのです。が、うまくいくかどうかの保障もありませんし、直前まで内緒にさせていただきます(笑)

投稿: いかさま | 2015/03/31 23:02

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