43歳・初沖縄【0】

　私が鉄道の魅力に目覚めて以降、28年あまりで、国内至るところに旅に出掛けた。けれどもその私が、47都道府県の中に唯一足を踏み入れていない県がある。


　それは沖縄県である。
　理由はいくつかある。まず第一に遠い。北海道からだとなお遠い。
　そして第二に、鉄道との縁が非常に薄い。
　太平洋戦争以前、沖縄には、那覇を基点に糸満・嘉手納・与那原を結ぶ県営鉄道が走っていたが、戦争の激化により運行を停止した。連合国軍の上陸により破壊された鉄道施設は、戦後の一時復活が検討されたものの、道路整備を基本とした復興計画により雲散霧消していた。


　ところが2003年に那覇空港と首里を結ぶ沖縄都市モノレール、通称「ゆいレール」が開業した。この当時私はちょうど鉄道熱が下がっていた時期であったが、のちにそれが回復、鉄道全線制覇を再び志すに至り、私は沖縄へ出向く必要に迫られた。ここまで来ると半ば義務感に駆られてのようにも思われるが、ともかく私はこのために、九州方面の鉄道の乗りつぶしと併せての沖縄行きを画策した。沖縄滞在時間は3時間あまりの予定であった。


　この話を嫁にすると、「馬鹿じゃないの」と怒られた。
　嫁自身も沖縄に行ったことはなく、行ってみたいと思っているのに、亭主は勝手に沖縄単独行きの計画を立てた。しかもモノレールに乗って帰ってくるだけだという。その挙動すべてが気に入らなかったらしい。私は会社などで同僚にも同じ話をしてみたが、全員が嫁の味方となり、私に共感する者はただのひとりもいなかった。


　その際の旅が、以前にもブログで紹介した、2011年夏の九州・四国方面の乗りつぶしである。その後のいくつかの旅を経て、西日本のほぼ全ての鉄道を制覇するに至ったが、ゆいレールだけが飛び地のように残った。沖縄行きは保留となり、嫁の意向もあって、できれば上の坊主が小学校を卒業することまでに家族旅行したいね、ということになった。


　その坊主はこの3月、卒業の歳を迎える。そして我が家は自然に家族旅行へという流れになった。2016年3月3日、私は家族とともに、人生初めての沖縄へと私は飛び立った。



　続く。



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