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2020/04/17

JR北海道の苦悩と札沼線末端区間の廃止繰り上げ

 経営難による苦境にあえぐJR北海道。新型コロナウィルス感染拡大による影響は、その深刻な状況に拍車をかけている。
 4月14日、JR北海道は、全社員の2割に当たる1,450人を対象に、5月1日から7月23日までの期間、1人当たり月数日の一時帰休を実施する方向で労働組合と協議を進めていると発表した。鉄道会社での一時帰休はきわめて稀である。


 新型コロナウィルスの感染拡大が北海道内で進行し始めた2月以降、JR北海道の都市間列車の利用状況は大幅に悪化している。海外からの観光客は私たちの目にもはっきり分かる形で減少しており、2月の利用者は在来線特急で前年比73.2%。鈴木直道知事が緊急事態宣言を発した以降急激に悪化し、3月は8日までの平均で前年比30.2%となった。旅客減による収支への影響は、3月末までで47億円と推計されている。これはJR北海道の年間鉄道収入(平成30年度)の6.6%に相当する。


 こうした情勢を踏まえて3月23日から気動車特急の編成減車と、札幌―旭川・東室蘭での電車特急の減便が実施された。減便対象は4月6日からは札幌ー函館・帯広にも拡大されている。
 だが、感染拡大の収束が見えない中で、5月16日以降、札幌ー新千歳空港の快速「エアポート」も1日16本が減便されることになった。3月14日のダイヤ改正で満を持して32本を増発、毎時5本化されたばかりの「エアポート」減便は衝撃的だが、インバウンドはおろか国内航空旅客も激減している現況では致し方ない。


 JR北海道は社員の雇用を維持するために、国の雇用調整助成金を活用して一時帰休を実施、さらには経営危機のためすでに行われている役員報酬の自主返上の拡大、執行役員・管理職の給与の一部の自主返上も検討中とのことである。北海道の「足」を守ってくれる人々がこういう状況に置かれてしまうことについては非常に悲しいことである。新型コロナウィルスという見えない敵によって会社の屋台骨が大きく揺らぐ状況になってしまっているが、支えようにも私の会社自身も道内外への出張自粛、不急不要な旅行も自粛するようにとお達しされており、身動きが取れない。何とか耐えてほしいと祈るばかりである。


 JR北海道に関しては、もうひとつ大きなニュースがあった。
 5月7日付で廃止が予定されていた、札沼線・北海道医療大学ー新十津川間については、4月3日のプレスリリースで、旅客密集による新型コロナウィルス拡散リスクを防ぐため、普段は1日1往復しか走らない浦臼ー新十津川間を2往復に増便の上、5月2日から6日までは全席指定で運転すると公表していた。仮にも生活路線である(はずの)この区間を全席指定で運転とは、地元客への配慮はどうなっているのかと訝しんだものの、すでに4月1日から代替バスの運転も始まっており、大きな支障はないと考えられたようである。


 ところが、4月7日の7都府県への緊急事態宣言と12日の北海道・札幌市の緊急共同宣言を受けて状況が一変した。
 これまでの例から考えても、廃止路線の最終運行日には、鉄道ファンが大挙して押し寄せる。「廃線商法」というと聞こえが悪いが、鉄道廃止という出来事は、鉄道会社にとってはそれまで赤字に苦しめられてきたその路線でひと稼ぎする最後のチャンスでもある。ところが、新型コロナで「三密」を避けるように、と言われている昨今、狭い車内に大量の鉄道ファンがひしめき合うのは「三密」以外の何物でもない。これを回避するための全席指定策ではあったが、鉄道ファンが押し寄せるのは列車内だけではない。駅や沿線にもおびただしい数のファンが訪れる。


 こうした状況を危惧したのか、JR北海道は4月15日、この区間の最終運行日を繰り上げ、4月24日にすると発表した。加えて「できる限り町外からのご乗車、来駅、沿線での写真撮影等をお控えくださいますよう」とのお願いを出すに至った。不測の事態の場合には最終運行を繰り上げる場合がある、とも付記されている。
 鉄道ファンの中には、ごく一部であるが「葬式鉄」と呼ばれる常軌を逸した一派が存在する。東京―北海道間の飛行機が減便になったとはいえ飛んでおり、列車も走っている状況であれば、道内のみならず全国からそういう連中が緊急事態宣言を無視して動き回らないとも限らない。対象地域からの来道を控えてほしいという鈴木知事の真摯なお願いも水泡に帰す可能性がある。そういう状況を私はひそかに危惧していた。


 それが昨日(16日)、緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大されるに至り、JR北海道はわずか1日で方針を転換、「不測の事態」に至ったとして、最終運行を今日、4月17日の新十津川発10時の列車に繰り上げた。あと20日ほどあったはずの廃止までの時間は、今この記事を書いている時点でたった9時間になってしまった。あまりに急で残念なことではあるが、今の状況を考えた時、JR北海道のこの決断は是としなければなるまい。
 85年にわたるこの区間の鉄道の歴史は、今日、幕を下ろすことになる。鉄道の余命まで奪った新型コロナウィルス、その収束に向けた出口は未だ見えない。



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鉄道の旅人」カテゴリの記事

コメント

今は第3次世界大戦(コロナ戦争)みたいなもので、歴史の教科書に載る頃には、「当時は・・・」って語られるんだろうなあと思ってます。
これを機会に出勤の必要性がなくなったとか、ハンコ文化の変革が現れたとか、30年後くらいには当たり前になることの始まりとなればいいと自分は思います。
その前にまず安心できる日々が戻ることを祈ります。

投稿: かわうそくん | 2020/04/17 18:29

TVニュースで金曜日の様子を知りました。
地元の方で最終列車見送られて、何よりです!
駅で出会った駅長犬?に再会でき嬉しかったです^^
・・・世界中で自然が息を吹き返している…声だけSDGsではない地球の声なのですかね。

投稿: キハ58 | 2020/04/19 15:37

 かわうそくんさん、ありがとうございます。
 ペスト、スペイン風邪と100年おきに繰り返される脅威の感染症になってしまいましたね。私の会社でも交代勤務のシフトが敷かれましたが、仕事の仕組みややり方を根本から変えるひとつの契機になるような気がします。
 緊急事態宣言から2週間。なんとか落ち着いてくれるようにとそればかりを祈っています。

投稿: いかさま | 2020/04/22 23:02

 キハ58さん、ありがとうございます。
 新聞の写真などを見ると、それでもこれだけの人が集まったということに一抹の不安を抱かないこともないのですが、これが連休中だったら、と思うとゾッとします。
 これまでの経験に全くない時間を過ごしている今、ひたひたと迫ってくる感染への恐怖もありますが、行き過ぎた便利な生活を見直すタイミングなのかもしれません。

投稿: いかさま | 2020/04/22 23:05

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