« 2020年8月 | トップページ | 2020年10月 »

2020年9月

2020/09/26

コロナ下のJR北海道【1】

 新型コロナウィルスの感染拡大は、3月以降、外出に関する制限が出されたことで、主な交通機関に大きな影響を及ぼしている。通勤・通学列車はコロナ前と比較していくらか空いている実感が得られる程度だが、顕著なのは都市間を結ぶ列車やバス、飛行機などである。私は先月初旬に仕事で函館へ往復したのだが、新幹線と結んで混雑するはずの函館本線の特急「北斗」の乗車率は終始3割ほどであった。


 鉄道会社はいずこも新型コロナウィルスの影響を大きく受けている。JR各社の2019年度の決算は各社とも減収減益となった。8月に発表された2020年度第一四半期の状況では軒並み赤字で、あのJR東海すら836億円の営業赤字となった。前年同期は2,063億円の黒字(これもとんでもない数字だが)から一気の暗転である。JR東海の旅客営業収入は9割以上が新幹線だが、その稼ぎ頭の第1四半期の乗客数が前年比16%ではいかんともしがたい。


 JR北海道も状況は同様である。2019年度の連結経常利益は前年マイナス24億円の135億円の赤字と過去最大を記録した。鉄道運輸収入は第3四半期までの利用客の増加、10月1日の運賃改定、全般的なコスト低減による改善分、25億円を、第4四半期だけで食い尽くして通年では前年比5億円のマイナスとなった。新型コロナによる影響額は鉄道事業関連だけで42億円に上るとされている。JR北海道の年間の鉄道運輸収入の5%に相当する。


 全国的な緊急事態宣言の影響を受けた2020年度第1四半期は、3線区を除きほぼすべての路線で営業損益が前年同期から大幅に悪化している。ちなみに改善した3線区とは根室本線・富良野~新得、留萌本線と札沼線(北海道医療大学~新十津川。4月廃止)という、いわゆる「赤色線区」ばかりだから話にならない。例年赤字額の筆頭である北海道新幹線は前年同期比15億円悪化の約35億円の赤字。輸送密度が前年同期の1割にも満たないのだから仕方がない。524人/km/日の輸送密度は日高本線・苫小牧~鵡川間とほぼ同等である


Dscn7299 Dscn1128 
 だがこの四半期で収支の足を最も引っ張っているのは札幌圏である。札沼線・函館本線の輸送密度は53~56%、インバウンド客減少の影響をもろに受ける千歳線は前年比40%と悲惨な状況で、前年ほぼトントンだった収支は約55億円の赤字と北海道新幹線を超える。JR北海道全体の営業損益が219億円の赤字だから、札幌圏はその4分の1を占めている計算になる。


 コロナ下で「密」な環境をなるべく回避しなければならない状況の中、テレワークなどへの対応も進んで特に通勤列車の混雑が緩和されているというのは利用者側からすればありがたい話ではあるが、運賃・料金収入を得て旅客を運んでなんぼの鉄道会社にとっては経営の根幹を揺るがす事態である。JR北海道の島田社長は9月16日の定例記者会見で、上半期の旅客運輸収入が前年同期比で約200億円の減少となる見通しを示した。前年同期比半減に近い数字である。


 JR北海道は、北海道独自の緊急事態宣言を受けて、全国に先駆けて3月23日から特急列車の減便・減車を実施し、3月ダイヤ改正で毎時5往復に増発したばかりの快速「エアポート」についても5月16日から増発分の運休に踏み切った(7月1日以降通常運転に復帰)。利用客の減少度合いから考えれば供給過剰ではあるが、旅客の移動の実態や利便性を考慮すれば、利用客が半減したからと言って本数を半分にできるわけではない。おまけに軌道から車両まで自前の鉄道会社はそれだけで日々固定費を必要とする。第1四半期の実績では、旅客営業収入119億円の減少に対し、費用は16億円の減少にとどまっている。


 JR北海道では2018年以来、赤字額が高水準にある環境下で早ければ2022年度に運転資金が枯渇すると言われている。国は鉄道建設・運輸施設整備支援機構からの貸付資金の2020年度分返済額、約29億円の返済を1年間猶予する方針であることが、先ごろ地元新聞で報じられた。一時的にJR北海道の収支に寄与することは間違いないだろうが、問題はそのあとである。返済猶予はすなわち問題の1年先送りに他ならない。コロナの影響がいつまで続くかは不 透明な状況であり、仮に終息したとしても、本州ほどではないが札幌の主要企業でもテレワークは拡大傾向にあり、輸送実績が元の数値に戻る保証はない。鉄道をはじめとする交通機関の今後の在り方が問われる状況になっている。




ランキング参加中です。みなさまの「クリック」が明日への糧になります。よろしかったら、ポチッとな。

にほんブログ村 鉄道ブログへ にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道旅行へ 鉄道コム

| | コメント (0)

2020/09/01

1990年春・九州一周の旅【10】路面電車で長崎一日散歩

 前回の続き


 オランダ村を出た私は、所定50分のところ2時間20分バスに揺られて佐世保駅に行き、快速「シーサイドライナー15号」と長与経由の普通列車を乗り継いで20時01分、長崎に到着した。諫早での待ち時間に予約しておいた出島近くの古びたビジネスホテルは1泊3,700円の安さで部屋も狭いが、どうせ寝るだけだから何の問題もない。荷物を置いて路面電車に乗り、崇福寺近くの「自由飛行館」で夕食。当地出身のさだまさしが経営するレストランで、現在は日中のみ営業のカフェとなっているが健在である。


1990040201 1990040203  
 4月2日月曜日、ホテル近くの出島電停から長崎電気軌道1系統の路面電車に乗った。築町(現:新地中華街)電停で3系統の終点、蛍茶屋へ行き、電車案内所で1日乗車券を購入。新中川町まで引き返してシーボルト記念館を目指すがあいにくの休館日だったため、次の新大工町から賑橋(現:めがね橋)へと歩を進め、眼鏡橋を見る。1634年以来の歴史を持つ眼鏡橋は1982年の豪雨で半壊の憂き目に遭ったが、翌年復旧されている。橋のたもとには人力車が客待ちをしている。乗るほどの持ち合わせはないが、300円払えば記念撮影をさせてくれた。


1990040206 1990040209  
 西浜町から5系統の電車で終点の石橋まで行き、引き返して大浦天主堂に立ち寄った後グラバー園へ行った。高校生300円の入園料を払って園内へ入ると、「動く歩道」が設置されており、2本乗り継いで一番高いところへ上ると旧三菱第2ドックハウスがある。1896年建築の船員宿泊施設を移築したものだそうだが、西洋建築の影響を受けた建物は一帯の風景によく合っている。建物の正面は広い池になっていたが、最近の写真を見ると池が狭められて通路になっている。30年も経つとこうした施設も姿を変えるものらしい。


1990040215 1990040217  
 旧オルト住宅から日本に現存する最古の木造洋館とされるグラバー住宅へと歩くと、青い空に色とりどりの花が鮮やかである。グラバー住宅の庭からは長崎湾を一望することができ、港を行き来する船の姿が見える。対岸には三菱重工の造船所がある。これより13年後、私は偶然この庭から豪華客船「ダイヤモンドプリンセス」の進水式を眺めた。今年2月、新型コロナウィルスの集団感染で話題になった船である。


Img_20200819_0002 1990040233
 2時間ほどで園内をひと回りし、電車の停留所に向かう途中で、昨日オランダ村に私を拉致したKSさんとばったり再会した。前日のしこりが若干ありバツが悪いが、これからグラバー園に入るという彼女と二言三言話して早々に立ち去った。オランダ坂を経由して1系統の電車で赤迫へ行き、引き返して松山町(現:平和公園)で下車し、平和公園~浦上天主堂~原爆資料館とめぐって最後に「一本足鳥居」の前に立った。山王神社の参道に4基あった鳥居のうち現存する唯一の鳥居だが、原子爆弾による爆風で片方の足が吹き飛び、以来75年片足で立ち続けている。こうした遺構を目の当たりにすると、やはりいろいろなことを考える。私は少々重い足取りでホテルへと戻り、そのまま引きこもって夜を過ごした。


1990040221  ところでこの日、オランダ坂のたもとにある東山手十三番館に立ち寄った。19世紀末の建築とされる外国人居留地の洋館はカフェになっており、雰囲気がよさそうだったので覗いてみたのだが、入口に「高校生以下お断り」の看板がある。お断りと言われると覗きたくなるのが心理で、スリッパに履き替えて店内に入り、メニューを受け取ると一番安いコーヒーが1,500円。今更撤退するわけにもいかず注文する。唐津焼のカップに入ったドリップコーヒーは確かに美味しかったが、ドトール7杯分はいかにも高価にすぎる。
 しかも怪しげな雰囲気を察したか、「大学生ですか」とマスターに尋ねられて「はい」と答え、「どちらの?」と畳みかけられて思わず「北大です」と夢うつつを口にした私は、その1年後嘘を真実に変える離れ業を演じることになる。
 その後カフェは閉店となり、2007年にこの建物は長崎市に買い取られて登録有形文化財となった。オープンスペースとなった東山手十三番館の一角では再びカフェが営業されているが、コーヒーは350円のようである。


 続く。



ランキング参加中です。みなさまの「クリック」が明日への糧になります。よろしかったら、ポチッとな。

にほんブログ村 鉄道ブログへ にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道旅行へ 鉄道コム

| | コメント (0)

« 2020年8月 | トップページ | 2020年10月 »