30周年記念。【2】
またまた多忙でブログから離れているうちに、3月も終盤になった。北海道も気温が上昇して雪解けが一気に進んだ。郊外の市街地ではまだ残っている雪も、都心部ではすっかり融けて春の装いである。
このところ春の訪れが以前より早くなったような気がする。確かに今でも4月5月にとんでもなく雪が降ったりすることはあるけれど、雪解けは今よりもずっと遅かった記憶があるし、4月は桜、という固定観念のあった本州人の私にとって、泥水の混じり合ったシャーベット状の雪が行き交う車を汚し、時に歩道を歩く私たちに向かって豪快に飛んでくるような4月の町はとても衝撃的だった。
1991年3月、受験からおよそ10日後、思いもよらず合格通知を手にした私は、3月11日の「北斗星1号」で、再び札幌へと向かっていた。入学手続とアパート探しのためである。
幸運にも直前に入手できたB個室寝台「ソロ」で、車内販売のうなぎ弁当を食べて腹痛を起こし、フラフラになってたどり着いた札幌で入学手続を済ませた私は、アパート探しのために父が合流するまでの2日余りをどう過ごそうかと考えて、旭川経由で網走へと向かった。どこかで「ちょうど網走近辺に流氷が接近している」という話をどこかで耳にしたためであった。
夜遅くにたどり着いた釧網本線北浜駅に近い「網走原生花園ユースホステル」に泊まり、翌朝、同室の仲間たちと北浜駅へ向かった。北浜駅は「オホーツク海に一番近い駅」として名高く、駅のホームのすぐ奥は海だった。「接近している」という情報にもかかわらず、風のいたずらで流氷は海岸線から遠く離れて見えなかった。けれども、その後に乗った釧網本線の釧路行き列車の中から、斜里近辺だったろうか、鈍いグレーの空と海の境目に、白い流氷の集団が見えた。流氷とは女心のようなもの、と誰かが言っていたが、今になると実によくわかる。
翌日、千歳空港で父と合流し、大学生協で紹介された3軒のアパートをめぐるうち、吹雪模様になった。おそらく午後6時近かったと思うが、3軒の中から決めた北19条のアパートへ向かう頃にはすでに日は落ちていた。道路にはまだ雪が残り、除雪の行き届かない歩道は車道から数十センチ高くなって、非常に歩きにくかった。そこへ顔面に叩きつけるような吹雪である。私と父は「死ぬ―!」「遭難するー!」と絶叫しながらアパートへ向かって歩いた。地下鉄北18条駅からわずか5分足らずの距離なのだが、とてつもなく長く感じた。
1991年の2月から3月にかけての1か月間は、私にとってこれまでに経験したことのない全くの異文化への扉を開けた時期になった。もちろん、その種のカルチャーショックは、実際に北海道に住むようになってその後も何度となく襲ってくるけれども、あの時期のことはわりあいに細かなことまで鮮明に覚えている。
この文章を私は、今日の昼、北18条駅に近い喫茶店で書いた。窓の外は、30年前の3月と異なり道路に雪はほとんどないし、建物の姿もずいぶん変わった。整然と整理された区画の中でどこか雑然としたたたずまいだった北18条駅近辺の雰囲気はずいぶんあか抜けたけれども、何かの折にここへ来るたび、私は30年前の厳しい吹雪の中、上着の襟を立てて前かがみになって父と歩いたことを思い出すのである。
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コメント
Dear,いかさまさんへ;
こんにちは。コチラのブログ仕様が変わってみなさんと交流しづらくなってしまいましたね。自分のアーカイブとして書いている身としては、まあぼちぼちと無理なくやっていけたらと思っています。コロナ禍でSNSも元気がない人が多いのでしょうが、いかさまさんは元気そうでよかったです。カラ元気も出せなくなったらヤバイけど。その時は北海道は温泉もいっぱいあるからご家族でソーシャルデイスタンスを保ちつつゆっくりしてきたらどう?案外リフレッシュできますよ。
投稿: poem | 2021/03/22 16:15
poemさん、お返事が遅くなってしまいまして申し訳ありません。
いかさま、おかげさまでカラ元気です。仕事の方で大きなプロジェクトを複数抱えてしまいまして、忙しいことこの上ない状況です。
家から車で20分も走ると札幌の奥座敷、定山渓温泉なのですが、その少し手前にある小金湯温泉には時々出掛けます。大きな風呂で手足を存分に伸ばすのはストレス解消にはいくばくか貢献してくれていますよ。
投稿: いかさま | 2021/04/12 00:07