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2023/09/26

2023・JR北海道の「今」【2】進む世代交代、進まない世代交代

 JR北海道が発足して37年目、そのうち私が時を共に過ごして33年目になる。様々な課題を抱えて赤字が膨らみ苦境に喘いでいるが、これだけの年数が経過すると、車両の世代交代はゆっくりではあるものの着実に進んでいる。


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 今年3月のダイヤ改正をもって、特急「オホーツク」「大雪」で運用されていたキハ183系と、特急「北斗」で運用されていたキハ281系の2種のディーゼルカーが運用を外れ、廃車となった。
 キハ281系は、昨年9月にも記事に書いたが、1994年に特急「スーパー北斗」でデビューして以来、一貫して函館-札幌で運用されてきた車両である。最高速度130kmで、最速列車は途中東室蘭だけ停車の2時間59分運転で、表定速度は並み居る電車特急を抑えて国内在来線トップだった。一連の事故やトラブルの影響で最高速度は120kmに制限され、停車駅の増加と北海道新幹線開業によるルート変更で、末期は最速3時間34分と輝きは失われたが、1990年代、JR北海道が最も輝いていた頃の看板列車であり、その存在は「にわか北海道民」の私としても非常に誇らしかった。


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 キハ183系は、1979年に登場した国鉄型車両である。私が北海道に来た1991年当時、「北斗」「おおぞら」「とかち」「オホーツク」と北海道内のディーゼル特急列車はすべてキハ183系による運転であった。それだけにひときわ愛着は深い。
 大別して登場当時の「スラント形」と呼ばれる非貫通タイプの前期型と、貫通扉がついた後期型に分かれる。エンジン出力を強化したタイプをはじめ新製時の仕様や改造によって多様なタイプが存在し、「ジョイフルトレイン」と呼ばれた「ニセコエクスプレス」「クリスタルエクスプレス」「ノースレインボーエクスプレス」もキハ183系の仲間である。新型車両への置き換えにともない徐々に淘汰が進み、2018年以降は運用列車が「オホーツク」「大雪」のみとなった。最後の1年はJR発足当時の塗装に塗り替えられたが、先頭車・グリーン車の各1両だけというのがいかにも現在のJR北海道の状況を示している。


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 キハ183系の引退により、JR北海道に定期運用される国鉄時代からの車両は、キハ40形・キハ54形による普通列車のみとなった。ステンレス製で国鉄末期製造のキハ54形は別として、キハ40形も新型ディーゼルカーH100形への置き換えが進んでおり、JR北海道発足時に157両が承継されたものが60両あまりまで減少している。資金力ではるか上を行くJR東海などとは比較すべくもないが、着実に世代交代は進んでいる。


 一方で気になるのは、世代交代が進まない「人材」の部分である。
 2013年9月に函館本線大沼駅で発生した貨物列車の脱線事故は、JR北海道のレール検査データの改ざんをはじめとする保線作業の杜撰さをあぶりだす契機となったが、この事故から10年が経過した現在、社員の流出が深刻化している。全体で6,000人ほどの社員のうち4%近い232人が中途退職しており、そのうちの約4割、94人が保線を含む電気・工事部門である。車掌などの運輸部門を含めると単年度で150人の現場社員が会社を去ったとされており、路線廃止などの影響を考慮してもきわめて深刻な状況である。


 国鉄末期からJR初期にかけて新規採用が抑制されたことにより、現場レベルでの技術の継承が進まなかったことが2013年の事故の一因とされているが、今度はそもそも列車を動かすために必要な人材そのものが確保できなくなる危機に直面していると言っていい。昔は鉄道と言えば安定した職場の最たるものと言われたが、ことJR北海道に関する限り、一連の事故を契機として経営の悪化が表面化したことや、そもそも夜間や除雪などの重労働があること、道内全域での異動があることなどが、若年層の社員の離職や新卒採用の困難の要因となっていると、9月18日の北海道新聞は伝えている。


 何年か前にJR北海道の課長級の社員の方々と酒を飲む機会があったのだが、その際にこんな話を聞いた。
 JR各社は、いわゆる「鉄道マニア」の就職を拒む傾向があった。民営化により総合企業への脱皮を目指すJR各社では、鉄道に偏重した思想の人間を採用することは、鉄道事業の効率化・合理化と事業の多角化を進めていくうえで会社の成長を阻害する要因になると考えていた節があったようである。
 それは当時、北海道内での就職先として高い人気を誇る一方で閑散ローカル線の廃止を進めていたJR北海道でもそうだったし、おそらく本州三社などは今でもそういう傾向にあるのではないかと思う。しかしその結果、本業の鉄道が厳しい局面になった時、鉄路を守る視点から真に鉄道のことを考えられる社員がいないという事態を招いたという。


 鉄道マニアの全てが見境なくローカル線廃止絶対反対を謳っているわけではない。むしろ冷静な視点と蓄積した知識から今後の鉄道のあり方を考えている人だってたくさんいる。
 「いかさまさん、今から来てくれるのならば即採用ですよ」という先方の言葉は社交辞令にすぎないと思う一方で、100%冗談であるようにも受け止められなかった。けれども、私にも今の会社に対する恩義もあるし、単身火中の栗を拾いに行ったところでどうなるものでもない。どうせなら25年前に「採用」の二文字を聞きたかったが、所詮は当時の私の力とアピール力の不足がすべてである。



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