愛すべき怪物番組「笑点」への思い【episode-4】
さて、今日はもうこの話しかないだろう(笑)。
私が物心ついた頃から、ずっと「笑点」で与太郎を演じ続けて来た林家木久扇師匠が、昨年夏の24時間テレビで勇退を表明し、放送歴58年を迎える怪物番組は、3年続けて大喜利メンバーが交代するという、かつてない新陳代謝を迎えた。
⇒愛すべき怪物番組「笑点」への思い【episode-3】+α
前々回、そして前回のメンバー交代は、幾らかのヒントがあり、しかも若手実力者の目星もある程度ついていたから、後任の推理も理論的にできた(外れたが)。今回は皆目見当がつかなかった。
まず大前提として、木久扇師匠の与太郎キャラは誰がどうやっても引き継ぐことは不可能である。だとすればわざわざ息子に引き継いで世間の批判を浴びるのは政治家のようでつまらない。それに、与太郎に代わるポンコツキャラが定着しつつあることもある。
所属団体については、前々回が三平(落語協会)→宮治(落語芸術協会)、前回が円楽(円楽一門会)→一之輔(落語協会)とあまり考慮されていないから参考にはならないが、人数のバランスからすれば落語芸術協会のメンバーが入ることは今回も考えにくい。となると、今回も「成金」メンバーが入る可能性は低く、私が前回予想した4人を軸に他の可能性も探ることになる。ここから絞り込むのは困難である。
そろそろ女流、と考えれば、蝶花楼桃花師匠が筆頭候補だが、本人はわりと最近の独演会の制作発表会で強く否定していた。もっとも、宮治師匠も一之輔師匠も加入の際はかなり強い箝口令が敷かれていたというから、100%信用するわけにはいかない。ただ、女流だとしても、最近では林家つる子師匠とか立川小春志師匠とか元気のいい真打も増えてきている。そういうわけでいろいろ考えてはみたものの、しまいに面倒くさくなって考えるのをやめることにした。
で、結果、新メンバーは立川晴の輔師匠となった。私が前回予想した5人のうちの一人であるが、正直今回はないと思っていた。なにしろまさかの落語立川流である。入るのならば前回、または前々回に入っていてもおかしくなかった。そういう意味では私は、「笑点」は立川流をメンバーに加えるつもりはないのだろうと勝手に合点していたのである。
「笑点」を立ち上げたのは故・立川談志師匠である。けれどもブラックユーモア路線を走る談志師匠とそれ以外のメンバーとの対立によりメンバー総入れ替え、そして談志師匠の司会降板を経て、以降一門の落語家は笑点の大喜利メンバーにはなっていない。
そうした中、立川生志師匠と晴の輔師匠が、「BS笑点」を中心に若手大喜利のメンバーとして、番組との縁を細くとも保ってきた。特に晴の輔師匠は、若手大喜利での宮治師匠との共演も多い。そして今回の起用である。司会を除けば大喜利メンバーは、落語協会2、落語芸術協会2、円楽一門会1、落語立川流1と、東京の4協会のメンバーが揃った。バランスもいい。ルックスも若々しくて良い。
とはいえ晴の輔師匠は私と同じ1972年生まれ。「キムタク・マツコ世代」である。元気者の宮治師匠を最年少の位置に置いたまま、風貌フレッシュな先輩を新メンバーを入れたというのはなかなか絶妙である。私は高座を見たことはないが、立川志の輔門下で育てられた腕と実力は確かなものなのだろう。
そして何より、私と同い年ということは、当然ながら私と同じ時代を歩き、同じ視線で「笑点」と触れ合って来た世代である。そういう人が大喜利のメンバーに座るということは、年齢や経験年数がさらに若い一之輔師匠・宮治師匠が加入した時とはまた違った、深い感慨と根拠のない期待感を私に与えてくれている。
さて、56年の笑点出演歴を持って勇退した木久扇師匠。「新メンバーは誰ですか」との問いに「山田隆夫じゃないですか」とすっとぼけ、最終出演となった3月31日の最後には「また来週!」と大ボケをかましたと思いきや、新メンバーの案内役と称してちゃっかり今週も黄色い着物で登場するという、過去の勇退メンバーにはなかった離れ業を演じた。恐るべき与太郎、とてつもない人である。
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