2023 いい日旅立ち・西へ【17】細かい話ですが(2) 広島電鉄の0.2km
前回の続き。
舞台は一気に本州・広島へ移る。新幹線で15時11分に広島へ着いた後は、15時15分発の山陽本線岩国行き普通列車に駆け込む。長らく国鉄型のお古が中心だったこの辺りの電車だが、ステンレスのボディに赤いラインをまとった227系電車の導入で一気に近代化した雰囲気である。下校時刻と重なった電車は高校生と地元客でほぼ満員。駅ごとに少しずつ下車客があるものの、3両編成では全員が座れる状況にはならない。15時42分着の宮島口で下車する。
駅前を横切る国道2号を渡って200mほど歩くと、正面に宮島へのフェリー乗り場がある。ターミナルに向かって右側がJR西日本宮島フェリー、左側が宮島松大汽船の乗り場になる。私がここを直近で訪れたのは6年前のことであるが、宮島松大汽船の乗り場に直結した大きな土産物屋の建物があって、広電宮島口駅は道路を挟んで西(JR宮島口駅)寄りに建っていた。
2022年7月、その土産物屋の跡地に広電宮島口駅が移設されて新駅となり、フェリー乗り場にほぼ隣接することになった。移設距離は50mほどで、鉄道乗りつぶしの記録上「付替」と整理するべきか扱いに迷ったのだが、迷ったときは乗っておくに限る。鉄道は生き物であり、高架化や駅移設などで線路位置が変わることはざらで、いちいちすべてに対応しているわけでもないのだが、線路が50mも横へずれるのならば乗っておいたほうがいい。記録上は、宮島ボートレース場(臨)-広電宮島口(旧駅)0.2kmを乗車済み区間の廃止、宮島ボートレース場(臨)-広電宮島口(新駅)0.2kmを新規乗車としておく。
真新しい駅舎に出札・改札口はなく、開放的な駅入り口から、大きなアーチ屋根に覆われた開放的なホームにそのまま進んで乗車する。低床化の進んだ電車ともあいまって、日本の路面電車も大変近代的な姿になったものだと思う。15時55分発の広島駅行き電車は、座席は半分も埋まらない状態で出発。200mほど真新しい道床が伸び、緩やかに右カーブすると、従来線に合流する。旧線のあったあたりは舗装が切れていてそれとわかるが、線路があった面影はない。
JR山陽本線よりも駅間距離が短く、途中駅でこまめに乗り降りがある。海岸線近くを走る車窓は楽しいが、広電阿品付近から立ち客も出て徐々に窓の外が見にくくなり、広電廿日市あたりまででかなりの混雑になった。もともと郊外路線だったため、一部の駅には高さのあるホームが残っている。現在宮島線を走る電車は、すべて市内線も走れる路面電車タイプに統一されており、郊外電車専用の高いホームは使用されていない。海外でよく見かけるLRTの雰囲気である。
16時32分着の広電西広島で下車。ここも開放的で近代的な雰囲気の駅である。かなりの混雑でしんどくなってきたのと、この先で市街地の道路上を走る広電は広島駅まで40分ほどを要するので、JRの電車で先を急ぐ。もともと己斐と言っていた広電西広島駅前の「KOI PLACE」~「コイプレ」と読むらしい~のおしゃれなテラスを抜けてJR西広島駅へ移動し、16時39分発の白市行き普通電車に乗る。こちらもよく混雑しているが、3両編成とはいえキャパの大きい227系電車ではまだ余裕がある。わずか10分で広島着。ここまで来たらお好み焼きでも食べて体を休めたいところだが、明日の行程上、もう少し先へ進んでおきたい。
広島からは、山陽本線を外れて17時03分発の芸備線三次行き普通列車に乗る。九州以来のキハ47形ディーゼルカーは、昔懐かしい通称「タラコ色」の2両編成。ボックスシートが半分以上撤去されて、ロングシート中心の車内は、学生を中心に立ち客も出て、都市近郊路線の雰囲気を出している。広島を出発し、山陽本線から分かれるとほぼ北に向かって走り、安芸矢口・玖村付近では太田川をはさんで可部線と接近する。玖村と次の下深川でまとまった下車があり、広島市最後の駅となる井原市と安芸高田市に入った向原でも学生が下車すると、車内は半分ほどの乗車率になった。
数人が下車した志和地で、行き違いのためおよそ8分の停車。小さな駅舎を抜けて外に出てみる。すっかり闇の中に沈んだ駅前には、迎えの車が2台ほど停まっているだけで、広島行きの列車から降りてきた客がその車に乗り込んで出発すると、ディーゼルカーのエンジンのうなる音だけが辺りに響いた。駅舎の前には顔出しパネルが置かれているが、何の説明書きもなく、侘しいを通り越して怪しい。
19時ちょうど、三次着。今日1日で熊本県の「みよし」から広島県の「みよし」までやって来た。この街に宿泊するのは、2011年以来2度目である。前回は、今は亡き三江線の列車で、やはり19時頃にたどり着いた。三次という地方都市に用事があるわけではないが、きわめて列車本数が少ない路線が集まるエリアで、ここに泊まらざるを得ない街というのが存在する。三次という街はそういう街だと思う。
2015年に改築され、ライトアップが美しい三次駅のロータリー脇に立つ雑居ビルに、お好み焼き屋が店を開けていた。広島ではお預けだったが、ここで巡り合えるとは有り難いことである。どちらかといえば家族向けだが、おひとり様用にカウンター席もある「たむ商店」で、広島焼きを堪能した。計画段階の行程より1時間早く三次に入ることができており、明日も早起きだからしっかり休んでおくことにする。
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コメント
毎年1月に開催される全国男子駅伝で登場する路線ですね。
駅が移設されるって結構あることなんですね、クリアし続けるって大変ですね。
投稿: しゅうちゃん | 2024/06/06 21:16
しゅうちゃんさん、ありがとうございます。
広島電鉄の広電井口駅や宮島口が駅伝の中継点になっているのですね。
今回、熊本・広島と、扱いに悩む終着駅移転が2か所あり、結局両方とも訪れてしまいましたが、中間駅などでもしばしばあります。どこまでを対象としてどこからを外すか、真剣に定義を考え始めると眠れなくなります(笑)
投稿: いかさま | 2024/06/10 00:08