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2024/06/16

2023 いい日旅立ち・西へ【19】木次線と三段式スイッチバック

 前回の続き


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 あらためて駅へ戻り、ホームへ上がる。広い構内の向こうの山裾には、詰所とおぼしき建物と、機関車の入替に浸かっていたのだろうか、短いプラットホームが草生してたたずんでいる。さらにその奥には転車台も動くことがないまま残っている。
 1995年当時の備後落合駅には、運転関係職員が数人いて、急行「たいしゃく」がそうだったように、この駅で夜明かしをする車両や職員がいた。駅は2年後の1997年に無人化され、2021年には夜間滞泊する列車もなくなった。


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 9時07分、木次線木次からの列車が到着した。この列車が折り返し木次行きになる。芸備線と同じキハ120形1両のディーゼルカーで、国鉄型ディーゼルカーの象徴である「タラコ色」をまとっているが、軽快な雰囲気の車両には不釣り合いに感じる。復刻、リメイクは結構だが、似合う、似合わないは別問題である。到着した列車から降りてきた数名の乗客は、全員が9時12分発の芸備線三次行きの列車に乗り換える。先ほど私が三次から乗って来た列車の折り返しである。その列車の発車を見送って、9時20分、こちらも発車。乗客は先ほどの青年と私だけである。


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 並行する芸備線の線路が上の方へ隠れていくと、木次線は複雑な谷あいを短いトンネルで抜けていく。並行する国道314号は、クネクネとカーブを描きながら,近づいたり離れたりを繰り返す。国道沿いに一瞬、28年前私を救ってくれた比婆山温泉の小さな建物が見える。
 次の油木を出て西城川の谷あいを登り、県境を越えて視界が開けると、駅前にスキー場がある三井野原。標高726mで、JR西日本で最も高い駅である。備後落合からすでに274m登っている。女性が1人乗って来た。駅を出ると、列車は大きく右にカーブして国道314号と離れる。車窓左手に赤い大きな三井野大橋が見えた。島根県に入って雨は上がり、青空も見えている。


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 木次線は反時計回りに弧を描き、短いトンネルをいくつも抜けながらゆるやかに下っていく。しばらくすると車窓左手にくるくると渦を描く道路橋が見える。通称「奥出雲おろちループ」である。この辺りはかつて道路事情も悪く、それが純然たるローカル線である木次線が国鉄改革の波を乗り越えて生き延びた理由なのであるが、1992年に「奥出雲おろちループ」が開通し、木次線の旗色は一気に悪くなった。不倶戴天の仇であるが、木次線の車窓のハイライトのひとつである。


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 さらに下っていくと、しばらくして左下方から線路がせり上がってきて寄り添い、雪囲いのシェルターの入口で合流する。列車はそのシェルターを抜けた先で停まる。その先の線路は行き止まりになっている。運転士が席を立ち、後方の運転席へ移動する。


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 ほどなく列車は逆方向に動き出し、シェルターの先で右方向に分かれる。先ほど通って来た線路が左上方へ消えていく。下り勾配をゆっくりと走っていくと、今度は右側から別の線路がせり上がってきて、並んで出雲坂根駅のホームに滑り込んでいく。


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 出雲坂根の標高は564mで、三井野原との標高差は162mに達する。両駅間の距離は直線だと1.2kmほどだが、当然鉄道が直線で越えられる勾配ではない。木次線はこの区間を6.4kmと大きく迂回しながら距離を稼ぎ、さらには全国的にも珍しい「三段式スイッチバック」で高低差を埋める。木次線の最大の見どころである。出雲坂根駅の2本のホームの先で線路は1本に合流し、ここも行き止まりとなっている。


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 旅客の乗り降りのない数分間の停車の後、列車はもう一度逆方向、つまり最初と同じ方向に向かって走り出し、ポイントを渡って左手の線路に移り、先ほど下って来た線路を右に分ける。アルファベットの「Z」の文字を裏返しにしたような形で行ったり来たりしたことになる。かつて木次線を走り広島と島根を結んだ急行列車も、ここでは行ったり来たり止まったりを余儀なくされていた。ここから木次線は日本海に向かってゆるやかに下っていく。


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 八川を過ぎると線路は比較的平坦になり、出雲横田で数人の客が乗り込んできた。私の今日の行程は、備後落合へ引き返して新見、岡山へ抜けることになっており、どこかの駅で引き返さなければならない。腹も減っている。木次まで行っても戻りの列車には間に合うけれど、20分ほどしか滞在時間がなく、食事をとるには短すぎる。途中の亀嵩は、駅舎内においしいそばの店が入っており、28年前にも私はここで列車を一本落としてそばを堪能したのだが、火曜日の今日は残念ながら定休日である。考えた末に私は、比較的町が大きそうな出雲三成で列車を降りた。


 続く。



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