2023 いい日旅立ち・西へ【20】出雲三成の「奥出雲そば」
前回の続き。
10時48分着の出雲三成で列車は4分ほど停車し、出雲横田行きの普通列車と行き違う。5日前の11月23日までは、この列車と同じダイヤで、トロッコ客車をつなげた「奥出雲おろち号」が運転されていた。旅客数の少ない木次線では貴重な集客力のある観光列車だったが、車両の老朽化を理由に運行終了となった。タッチの差でお目にかかることができなかったのは残念である。
駅舎の中には地元農産物や加工品が並ぶ「仁多特産市」がオープンしており、何人かの客の姿も見える。無人駅のきっぷ委託販売もおこなっているようである。
備後落合行きの列車までは1時間30分ほどあり、食事タイムとしてはちょうどいい。昼食には早いが、早起きしてコンビニのパンだけで腹を満たしていたから、十分空腹である。
スマホの情報を頼りに、駅から10分ほど歩いて、出雲三成駅とは斐伊川を挟んだ対岸の集落の中にある「吾妻そば」を訪れる。11時開店の店内にはすでに地元の方と思しき夫婦の先客がいる。テーブル席に案内され、とろろそばを食べる。冷たいそばにたっぷりとろろが乗っており、つゆをかけて食べるそばは、少し柔らかめだがおいしく、あっという間にどんぶりが空になった。1,140円也。
列車の時間までまだしばらくあるので、遠回りしながら駅へ戻ろうとすると、雲行きが怪しくなってきた。あっという間の天気の変化である。斐伊川にかかる橋を渡る頃には小雨が降り始め、少しずつ降り方が強くなる。国道314号まで急ぎ足に歩き、三成トンネルに避難。交通量は多くないが、時折ごうごうと音を立ててトラックが走るトンネルの出口近くまで来ると、外には大粒の雹がぱちぱちと道路にたたきつけるように落ちている。しばらくトンネル出口で待つが、おさまる気配はない。仕方なく100mほど先のコンビニエンスストアまで全力疾走で向かう。顔が痛い。
コンビニのホットコーヒーで暖をとるうち、ようやく小雨模様に戻ったので、足早に出雲三成駅へ戻る。駅周辺には、春に話題になったドラマ「VIVANT」のロケ地があり、できれば覗いてみたいと思っていたのだが、この天気では散策もおっくうである。
12時28分発の備後落合行きは、キハ120形ディーゼルカーを2両つないでやって来た。10数人の乗客は、そのほとんどが木次線そのものを目的にやって来たと思われる「その筋の人」である。途中、そば屋が定休日の亀嵩から4人ほど乗客が増えた。
12時50分、出雲横田着。ここで21分の長時間停車となる。まだ小雨がぱらついている駅の外へ出ると、出雲大社に倣った注連縄が見事な神社風の駅舎は、隣の便所までもありがたい造りである。駅前にはこの付近が生誕地とされる稲田姫(クシナダヒメ)の石像も建っている。
普段であればこうした長時間停車の場合、駅周辺をふらりと散歩して列車に戻るのだが、今日の私は列車には戻らない。ここから少しお遊びをしてみようと思う。
続く。
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