2023 いい日旅立ち・西へ【22】芸備線から伯備線、そして一気に四国まで
前回の続き。
備後落合駅に集った3本の列車は、いずれもキハ120形ディーゼルカー1両だが、芸備線三次方面が広島、新見方面が岡山、木次線が出雲と担当が異なるため、それぞれに違う塗装をまとっている。芸備線新見行きはオレンジと赤の帯を巻いた「岡山色」である。
この普通列車で備後落合に別れを告げる。この先再度訪れる機会があるかどうかはわからない。木次線が存続を巡って揺れていることは前回書いたが、備後落合を挟んだ芸備線・備後庄原−備中神代間もまた存亡の危機にある。
JR西日本が公表した2022年度の平均通過人員によると、備後落合−東城間は20人/km/日とJR西日本で最も低い。東城-備中神代間も89人と100人に満たない。備後庄原−備後落合間が75人、木次線の出雲横田−備後落合間が54人と、3方向いずれも惨憺たる成績である。このままでは10年後には備後落合駅自体が鉄道路線図から消滅する可能性もある。陰陽連絡の拠点としての過去は儚くもかすみつつある。
新見行き普通列車には10人ほどの乗客があるが、いずれもその筋の人で、地元客と思われる人の姿はない。28年前にタクシーを呼んだ小奴可、立派な駅舎を持った東城と、比較的まとまった集落での乗り降りもゼロである。備中神代から伯備線に乗り入れて、16時02分、新見に到着。昭和の香りがぷんぷんとする駅舎を出ると、また霧雨が降っていた。
16時38分発の岡山行き特急「やくも22号」は、定刻より5分ほど遅れて到着した。自由席は半分以上が埋まっており、通路側の席を確保して、しばし睡眠にあてる。
381系元祖振り子式電車のデビューは、半世紀前の1973年である。第1陣の中央西線「しなの」からはもう20年以上前に引退し、後継の383系電車も置き換えが決まっている。1982年の伯備線電化時に増備された車両が中心の「やくも」も40年選手で、国鉄型特急電車最後の定期運用となっていたが、今年春には新型車両に置き換えられて、先日、定期列車から引退したところである。
終点の岡山にはやはり遅れて17時45分頃着。あわよくば乗り継ごうと思っていた17時42分発の快速「マリンライナー51号」には間に合わず、18時12分発の後続「マリンライナー53号」に乗って瀬戸大橋を渡り、19時11分、高松着。19時17分発の徳島行き特急「うずしお27号」に乗り継ぐと、わずか2両の列車は、16席だけの指定席を除く自由席は通勤客でほぼ満員である。途中駅での下車が想定以上に多く、20時27分に徳島に着く頃には乗客は半分以下になっていた。
もう時間も遅く腹も減っているが、もう一息。徳島20時30分発の阿南行き普通列車で先へ進む。芸備線以来のキハ47形2両編成である。初日から毎日、どこかでキハ47形が現れる。最終製造が1981年だからもう40年以上が経過しており、JR東日本・JR東海ではすでに全車が廃車となっている。JR西日本以西の3社では経年の高い車両から徐々に置き換えが進んでいるものの、まだ健在である。
車内は、意外と言っては失礼だが、この時間にしては混雑している。徳島県の人口は約71万人で、その3分の1超の25万人が徳島市に集中しており、人口7万人弱の阿南市がそれに次いでいる。
21時14分着の阿南駅に降り立つ。28年ぶりの駅舎は橋上型の立派なものに建て替わっていた。ホテルまでは徒歩10分ほどで、小さな居酒屋がぽつんぽつんと店を開けている寂しい通りを抜けていく。県道との交差点近くに「コメダ珈琲店」の看板が見えたが、夕食をとりに入る気分でもない。近くのコンビニエンスストアで弁当を物色してホテルにチェックインし、テレビをかけ流しながらぼんやりと食事をとった。明日の朝も早い。
続く。
ランキング参加中です。みなさまの「クリック」が明日への糧になります。よろしかったら、ポチッとな。
| 固定リンク | 7
「鉄道の旅人」カテゴリの記事
- 2023 いい日旅立ち・西へ【番外-1】近鉄特急「ひのとり」(2024.09.08)
- 2023 いい日旅立ち・西へ【28】結ばれなかった鉄路~阿佐線の夢(2024.08.25)
- 2023 いい日旅立ち・西へ【27】念願の室戸岬灯台へ(2024.08.18)
- 2023 いい日旅立ち・西へ【26】DMV・行ったり来たり(その3)(2024.08.04)
- 2023 いい日旅立ち・西へ【25】DMV・行ったり来たり(その2)(2024.07.28)
コメント
こんばんは。
中国四国地方の北南縦断ってほんとバラエティありますよね。
鉄旅の醍醐味を実感します^^
投稿: キハ58 | 2024/08/01 23:16
キハ58さん、ありがとうございます。
距離の割には非電化から電化、また非電化、会社またぎですので、確かにバラエティに富んでいますね。
北海道内ならば、ほんの少し前はこのくらいの距離を走っても、キハ261とキハ40にしか会えませんでした(笑)
投稿: いかさま | 2024/08/05 00:06