2023 いい日旅立ち・西へ【25】DMV・行ったり来たり(その2)
前回の続き。
さて、無事鉄道モードになったDMVは、9時34分、阿波海南を発車。車体前方が持ち上がっている感覚は、遊園地の乗り物ほど強烈ではないにせよ感じられる。レールの上を滑るように、といいたいところだが、ディーゼルエンジン特有のびりびりと小さく震える感覚と、車体が軽いせいか横揺れも伝わってくる。阿佐東線を以前走っていた軽量ディーゼルカーのASA-100形の自重27トンに対し、マイクロバス使用のDMVの自重はわずか5.85トンである。しかも乗客はたったの2人である。
周囲に山もない、世にも珍しい短いトンネルを抜けて、海部着。高架上の駅である。鉄道仕様の旧ホームの手前側がDMV用に一段低くなっている。もともとは線路2本・ホーム2本の駅だったはずだが、反対の山側のレールとホームが一部撤去されて、そこに、阿波海南方面行きの、基本がバス仕様で進行方向左側にしか扉のないDMV用の低いホームが短く新設されている。予約客がひとり乗ってきた。駅の先には、お役御免となったASA-100形ディーゼルカーが、すすけた様子でぽつんと置かれている。
ここからは1992年に開業した新しい区間である。線形は比較的よく、短いトンネルが数珠つなぎになって、海岸線の少し内側を抜けていく。トンネルとトンネルの間では、いくつかの小さな島を伴った複雑な海岸の地形を垣間見ることができる。
最後のトンネルを抜けて、左手に小学校が見えると宍喰。阿波海南から乗ったひげ面の若者が下車する。ここはもともと単線だったが、海部同様、ホームの反対側にDMVの上り列車用のホームが新たに設けられている。ここも駅の先にかつての車両がとまっている。ASA-301形といい、廃線となった九州の高千穂鉄道から移籍してきた車両だとのこと。
宍喰を出ると、長いトンネルで一気に徳島県と高知県の県境を抜け、甲浦に着く。鉄道用の古いホームの前でいったん止まるが、このホームは現在使用されていない。ホームの先にインターチェンジが設けられており、ここで鉄道モードからバスノモードへの切り替えがおこなわれる。再びドンコドンコというBGMとともに、持ち上がっていた車体の頭が少しずつ下がりゴムタイヤが地面に接する感触がわずかに伝わって来た。もともとは高架橋がこの先でぶっつりと切れていたのだが、そこにハーフループのスロープが設けられ、DMVはそれを下って、駅舎の目の前に設置されたバス停にとまる。海部から乗った客が下車し、再び車内は私ひとりになった。
再び普通のバスに戻ったDMVは、甲浦駅周辺の住宅地の中を抜けて、国道55号に出る。海の駅東洋町での乗り降りはない。土曜・休日には1日1往復だけが、この海の駅東洋町で折り返して室戸岬方面へ運行されるが、あいにく今日は最も運転本数の少ない火曜日である。
トンネルを抜けて、国道沿いに設けられた道の駅宍喰温泉で終点となる。10時04分着。阿波海南から34分の旅であった。DMVは6分ほど停車して、阿波海南へ引き返していく。乗客はわずかだった。
道の駅には地元の名産品を中心にお土産品が並んでいるが、その中に、DMVを置いたジオラマがある。DMVの先頭には小型カメラが搭載されており、吹き抜けに面した2階に置かれたシミュレーターのようなものを操作すると、カメラの映像が正面に映し出される仕組みになっている。
土産物売り場で、阿南のホテルで受け取った地域クーポンを使ってDMVのクリアフォルダなどお土産を購入する。ポスター、のぼり、土産物と、沿線はDMV一色である。DMVにかける期待の高さの現れだと思うが、一方で気になることもある。今日は時間に余裕もあり、もう少しDMVの様子を見てみようと思う。
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