2023 いい日旅立ち・西へ【24】DMV・行ったり来たり(その1)
前回の続き。
阿波海南駅でぶらぶらしていると、DMVがやって来て止まった。4年前、京都鉄道博物館で特別展示されていたものと同じ、緑色の車体である。8時09分発の甲浦経由、道の駅宍喰温泉行き103便には、私と同じ牟岐線の列車から降りたその筋の人が2人乗り込んだ。ここまでの風景はただのバスである。私はこの便には乗らず、道路から線路へのモードチェンジの様子を外から眺める。
扉を閉めて発車したバスは、道路と線路の境目に当たるインターチェンジへと進む。数年前までつながっていたはずの牟岐線のレールとこの先のレールは切り離されている。当然のことだが一般の鉄道とはまったく別のシステムであることを再認識する。
インターチェンジで停止して待つことしばし、バスの躯体が前側から持ち上がり、車体の下から鉄道用の車輪が出てきた。大きくのけぞった車体の運転席から運転士が出てきて足回りを点検し、再び乗り込んで発車となる。この間約2分。思ったよりも所要時間は短い。
DMVはのけぞったまま、阿佐海岸鉄道の鉄道線に入って走っていく。その姿は、今までにいろいろな鉄道の姿を見てきた私から見ても、ユーモラスというよりは何とも場違いな雰囲気で、言葉にならない。
DMVを見送って、駅から北の方へ10分ほど歩き、国道55号から少し東へ外れたところにある、阿波海南文化村に向かう。DMVの始発はここである。郷土博物館としてはずいぶん立派なたたずまいの施設の手前、駐車場の一角に、DMV乗り場が設けられている。次の便の出発は9時30分といくらか時間があり、9時の開館を待って文化村の中をくるりとひと回りする。地元の出土品や名産である海部刀などが展示されている博物館、「関船」と呼ばれる地元の祭りに出る船形だんじりの展示館などがあるが、気持ちはすでにDMVに向かっている。
9時20分頃に到着したDMVは、先ほど阿波海南駅で見た緑色の車両である。1時間ほどで1往復して戻って来たらしい。乗り込んだのは私ひとりである。予約優先のDMVに乗れなかったらまずいと、事前に乗車予約をしてやって来たけれども、これならば予約の必要はなかった。車内は普通のマイクロバスと同じであるが、運転席まわりにはこれでもかというほど機器類が詰め込まれている。9時30分、発車。
阿波海南駅で、遍路笠をかぶったヒゲの若者が一人乗車。予約はなかったらしく、「1列目以外で」と運転士に言われて車両中ほどに腰掛けた。すぐに発車して、インターチェンジにかかる。今度は車内からモードチェンジを体験する。
「モードチェンジ、スタート」の自動アナウンスの後、トンコトンコと鼓を叩く音に合わせて車体前方が持ち上がっていく。このBGMも京都鉄道博物館で聴いた記憶がある。「フィニッシュ」と乾いた放送で終了である。写真を見比べると、こころもち視点が上がっているのがわかるだろうか。ここから、この奇怪なマイクロバスもどきがレールの上を走っていくのである。
続く。
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コメント
こんばんは。
ご乗車になられたんですね!
凄い凄い。
詳細なレポート、雰囲気がよく伝わってきます。
新鮮です…チェンジモード後のトントコ音というのがユニークですね。
投稿: キハ58 | 2024/08/17 22:13
キハ58さん、ありがとうございます。
はい、乗ってきました。このトンコトンコの鼓の音は、地元の学生さんの演奏だそうですがなかなかの癒しです。肝心の乗客は少なく、この先が心配ではありますが。
投稿: いかさま | 2024/08/18 21:33