2023 いい日旅立ち・西へ【26】DMV・行ったり来たり(その3)
前回の続き。
道の駅宍喰温泉から、低い民家が並ぶ住宅地を抜けて10分ほど歩くと、阿佐海岸鉄道の高架橋にぶつかる。そこを左折して、小学校に沿って歩き、宍喰駅に着いた。28年前の初乗車の際には、当時牟岐-甲浦を直通運転していた阿佐海岸鉄道の列車に、阿波海南から小学生の校外学習らしき38人の団体が乗り込んできて、宍喰で降りて行った。当時のメモには「子供たちが将来、鉄道のよき利用者になってくれればいいのだが。」と残してあるが、残念ながらそうなった気配はない。駅舎内においてあるDMVのパンフレットは、英語・韓国語・中国語の繁体・簡体と取り揃えられ、観光客向けにPRされている。
宍喰駅は路線唯一の有人駅で、高架下の駅舎の窓口には係員が立っている。その窓口の前には、「駅長室」と札の貼られた水槽が置かれており、中で1尾のえびがじっとこちらを見ている。「伊勢えび駅長」だそうである。人間の駅長がいるのかどうかは知らないが、窓口に立っている駅員は、このえびの部下ということになる。
ホームに上がり、あらためて駅構造を観察する。改札からの階段を登った付近が境界線となり、鉄道用の旧ホームから甲浦方向に向かって下りスロープの先がDMVの甲浦行きホームになっている。ホームの先端には踏切があり、反対側に設けられた阿波海南行きホームにつながっている。
ホームには1組の老夫婦がおり、数少ない乗客かと思って声をかけてみると、DMV見物だけだという。もったいないことである。もっとも私も、先ほど、「ドンコドンコ」を外から眺めたいばかりに阿波海南で乗らずに見物していたから、他人のことは言えない。
11時01分発のDMVは、またも緑の車両。ずいぶんよく働くことである。今度は予約をしていないので、前方の空席に座る。中国人と思しき女性団体が10人ほど乗っているが、キンキンと響く声で一斉に喋っているからうるさいことこの上ない。
再び長いトンネルを抜けて甲浦のインターチェンジでドンコドンコをし、スロープを下ってバス停に着いた。私が降りようとすると、団体が我れ先にとドアに突進して私の道を塞ぐ。添乗員らしき女性がここじゃない、とそれを静止すると、またザワザワと席に戻る。その様子を見て,私はうんざりしながらDMVを降りた。
高架脇の可愛らしい旧甲浦駅舎は、駅機能は失ったものの健在で、売店が営業していた。ポスターやパンフレットが賑やかなのはここも同じである。駅の外の階段から旧ホームに上がることができ、阿波海南同様、DMVのモードチェンジを間近で眺められるようになっている。
28年前は駅舎の目の前、今スロープが設けられたあたりにバス停があり、青春時代の私はここで室戸岬方面へ向かうバスを待った。今この駅に入ってくるのは、DMVだけである。
甲浦駅から川沿いに10分ほど歩き、国道55号に出た。右折して室戸岬方面に向かうと、赤いDMVとすれ違った。乗客が乗っている。時刻表にはない便で、団体客対応の特発便らしい。それを見送ると左手に「海の駅東洋町」がある。地元農水産物の直売所と食堂が併設された施設で、私がさきほど乗ったDMVは下車客もなく素通りしたが、駐車場にはたくさんの車が停まっており、盛況の様子である。
食堂では、地元産の刺身類を中心に食事ができる。「数量限定1,000円 当店一番人気 日替お刺身定食」と書かれた置き看板に惹かれて注文。店舗の外のデッキに出て、海岸を正面に見ながら食べる。
日によって異なる刺身の本日のラインナップは、キハダマグロ、モンズマのたたき、ビンチョウマグロ。珍しいのはモンズマで、徳島・高知のこの界隈だけのものらしい。サバ科の魚らしいが、脂のよく乗った刺身はカツオとマグロの間のような食味で非常に美味しかった。ボリュームも看板を裏切っていない。かすかな風は12月が近いというのにほんのりと温かく、旅の終盤にゆったりとした時間が流れた。
DMVに関する感想は別の機会にまとめたい。
続く。
ランキング参加中です。みなさまの「クリック」が明日への糧になります。よろしかったら、ポチッとな。
| 固定リンク | 8
「鉄道の旅人」カテゴリの記事
- 2023 いい日旅立ち・西へ【番外-1】近鉄特急「ひのとり」(2024.09.08)
- 2023 いい日旅立ち・西へ【28】結ばれなかった鉄路~阿佐線の夢(2024.08.25)
- 2023 いい日旅立ち・西へ【27】念願の室戸岬灯台へ(2024.08.18)
- 2023 いい日旅立ち・西へ【26】DMV・行ったり来たり(その3)(2024.08.04)
- 2023 いい日旅立ち・西へ【25】DMV・行ったり来たり(その2)(2024.07.28)
コメント